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当院の循環器科・呼吸器科について
心臓と肺・気道は、どちらも「息をして全身に酸素を届ける」ための臓器です。咳や呼吸の変化という同じサインが、心臓の病気からも気道の病気からも起こります。そのため当院では、循環器と呼吸器をひとつの診療科として診ています。
見えない変化を見逃さない
咳・息切れ・元気のなさ。日常の小さな変化が、重大なサインであることがあります。定期的な心臓エコーと血圧のモニタリングで、症状が出る前に変化をとらえます。
慢性疾患を、一生支える
心臓病や気管支の病気は、治し切るというより上手に付き合っていくものです。治療方針を定期的に見直し、ご家族への在宅ケア指導を通じて、その子の「普通の毎日」を守り続けます。
ご家族が主役の管理を
自宅での呼吸回数モニタリングや吸入療法など、ご家族ができるケアを積極的にお伝えします。病院だけで完結しない、日常に根ざした医療が長期管理の質を決めます。
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こんなサインはご相談ください
以下のような症状は、病気が隠れているサインのことがあります。早期発見・早期対応が予後を大きく左右します。
循環器系のサイン
- 咳が続く(特に夜間や運動後)
- すぐ疲れる、運動を嫌がる
- 失神する、ふらつくことがある
- お腹がふくらんできた(腹水)
- 心雑音を指摘されたことがある
- 舌や歯ぐきが青白い、紫色
呼吸器系のサイン
- 慢性的な咳・くしゃみが続く
- 呼吸が速い、荒い
- 口を開けて呼吸している
- ゼーゼー・ヒューヒューという音がする
- 鼻水・鼻血が続く
- 急に呼吸が苦しそうになった
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主な対応疾患
循環器疾患
Myxomatous Mitral Valve Disease
小型犬に最も多い心臓病です。左心房と左心室の間にある僧帽弁がうまく閉じなくなり、血液が逆流します。チワワ・キャバリア・マルチーズ・シーズーなどに好発します。無症状の時期から進行すると肺水腫に至るため、ACVIM分類によるステージ管理と、早めの薬物療法の開始が重要になります。
Hypertrophic Cardiomyopathy
猫に最も多い心臓病で、心筋が異常に厚くなることで心臓の拡張が妨げられます。メインクーン・ラグドール・ペルシャなどに遺伝的な素因があります。突然死や動脈血栓塞栓症(後肢の麻痺)のリスクがあるため、無症状でも定期的な心臓エコーによるスクリーニングをおすすめします。
Pericardial Effusion
心臓を包む袋(心膜)に液体が溜まり、心臓が圧迫される状態です。腫瘍・炎症・特発性などが原因となります。急速に進行するとショック状態になることもあり、心臓エコーによる迅速な診断と、心膜穿刺による処置が必要です。
Congenital Heart Disease
動脈管開存症(PDA)・肺動脈狭窄症・心室中隔欠損症など、生まれつきの構造の異常です。若齢での心雑音の聴取をきっかけに見つかることが多く、早期の診断と、手術適応かどうかの判断が重要になります。
呼吸器疾患
Feline Asthma
アレルギーや刺激に対して気管支が過敏に反応し、慢性的な炎症と発作的な気管支の収縮を起こす疾患です。突然の激しい咳き込みやゼーゼーという呼吸、ときに呼吸困難を招きます。ステロイドや気管支拡張薬、吸入療法(MDI)で炎症を抑えながら管理します。
Pulmonary Edema / Pneumonia
肺水腫は肺胞に液体が溜まる状態で、心臓病の進行(心原性)や誤嚥・中毒(非心原性)が原因となります。急性の呼吸困難を引き起こす緊急性の高い疾患です。肺炎に対しては、ネブライザー治療が有効な選択肢となります。
Pneumothorax / Pleural Effusion
気胸は胸腔内に空気が入り込んで肺が虚脱する状態、胸水は胸腔内に液体が溜まる状態です。いずれも呼吸困難の直接的な原因となります。超音波ガイド下での胸腔穿刺・ドレナージにより、急性症状を緩和します。
Nasal & Tracheal Disorders
慢性鼻炎・副鼻腔炎(鼻汁・くしゃみ)、気管虚脱(小型犬に多いガーガーという音・咳)、気管支炎などです。気管虚脱ではグレード分類に応じて、内科的な管理か外科的な対応かの適応を判断します。
Feline Heartworm Disease
蚊が媒介する犬糸状虫が肺の血管に寄生する病気で、「犬の病気」と思われがちですが猫も感染します。猫では寄生数がごく少ない一方、たった1匹でも突然死を招くことがあり、犬のような安全な駆虫薬が使えません。喘息に似た呼吸器症状(HARD)を示すこともあります。治す薬がないため、室内飼いの子も含めた毎月の予防が最大の防御です。
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心臓病のステージ分類(ACVIM分類)
当院では国際的なガイドライン「ACVIM(米国獣医内科学会)コンセンサスガイドライン」に基づいてステージを分類し、各ステージに応じた治療方針を決定します。
| Stage | 状態 | 特徴 | 主な治療方針 |
|---|---|---|---|
| A | リスクあり 心疾患なし | 心雑音・エコー異常なし。キャバリアなど好発犬種が該当 | 定期スクリーニング検診(年1回以上) |
| B1 | 心疾患あり 症状・心拡大なし | 心雑音あり。エコーで弁の疾患を確認。心臓の大きさは正常範囲 | 定期検診(6か月ごと)。投薬はまだ不要 |
| B2 | 心疾患あり 症状なし・心拡大あり | 左心房・左心室の拡大を確認。症状はまだ出ていない | ピモベンダンの投与開始。発症予防が目的 |
| C | 心不全の兆候あり(管理中) | 肺水腫・咳・呼吸困難などの症状あり。治療で管理可能 | 利尿薬・ACE阻害薬・ピモベンダン。在宅モニタリング強化 |
| D | 難治性心不全 | 標準治療に反応しにくい。症状が持続・増悪する | 治療の強化と緩和ケアの組み合わせ。QOLを最優先 |
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診断の流れ
「何の疾患か」「どのくらい進行しているか」を正確に把握することが、適切な治療方針につながります。すべてを一度に行うとは限らず、その子の負担が少ない順に進めます。
ステップ1:問診・視診・触診
咳の性質・発症時期・生活環境をくわしく確認し、心雑音の有無やグレードを聴診で評価します。他院のデータ(レントゲン・エコー画像)があればお持ちください。
ステップ2:胸部レントゲン検査
心臓の大きさ・形、肺や気管の状態を確認します。肺水腫の有無や気管虚脱の評価にも有用です。
ステップ3:心臓エコー検査(心臓超音波図)
心臓の構造・弁の動き・血流・心機能をリアルタイムで評価します。ステージ分類に最も重要な検査で、無麻酔・低侵襲で実施します。
ステップ4:血圧測定
高血圧は心臓・腎臓・眼に影響します。定期的な血圧モニタリングで全身の管理を行います。
ステップ5:血液検査・尿検査
心臓バイオマーカー(NT-proBNP)・腎機能・電解質などを確認します。薬物療法の安全性評価にも用います。
ステップ6:追加検査(必要に応じて)
気管支鏡・BAL(気管支肺胞洗浄)・ホルター心電図(長時間心電図)など。必要に応じて提携施設との連携もご案内します。
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治療の考え方
「完治」ではなく「その子らしい日常を守り続ける」ことを目標に、薬物療法・在宅ケア・定期モニタリングを組み合わせた個別のプランを立てます。
薬物療法(心臓病)
ステージに応じて段階的に進めます。B2以降はピモベンダン(心筋の収縮力を高める薬)、C〜Dでは利尿薬やACE阻害薬などを加えます。猫のHCMではアテノロールやクロピドグレル(血栓予防)を用いることがあります。薬の種類・量は定期検査をもとに随時調整します。
ネブライザー治療
薬剤を霧状にして気道・肺に直接届ける治療です。気管支炎・肺炎・気道感染・粘液の排出促進に有効です。生理食塩水・気管支拡張薬・去痰薬などを用い、院内処置のほか在宅療法もご提案します。
定量噴霧式吸入器(MDI)
吸入ステロイドや気管支拡張薬を、専用のマスクとスペーサーを介して気道へ直接届ける方法です。全身への影響を抑えながら気道の炎症を抑えられ、猫の喘息や慢性気管支炎の長期管理に有効です。ご自宅での継続もご指導します。
心臓外科手術・提携施設のご紹介
先天性心疾患(PDA・肺動脈狭窄症など)や一部の弁膜疾患では、外科的手術が根治や症状改善に有効な場合があります。当院では手術が必要かどうかの判断まで責任を持って行い、適応があれば適切な提携施設をご紹介します。紹介後も当院でフォローアップを継続します。
外科適応となる主な疾患の例
- 動脈管開存症(PDA)……コイル塞栓術・結紮術
- 肺動脈狭窄症……バルーン拡張術
- 心室中隔欠損症(VSD)……外科的閉鎖術
- 重度の弁膜疾患(適応症例)……弁形成術・弁置換術
- 心膜疾患……心膜切除術
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ご自宅での管理
通院と通院のあいだのご家族による記録が、治療方針を決める大切な材料になります。病院だけでは把握できない「日常の変化」を早く見つけることが、悪化を防ぐ鍵です。
安静時呼吸数(RRR)の測り方
心臓病・呼吸器疾患では、安静時の呼吸数の増加が、肺水腫や病状悪化の最初のサインとして現れます。毎日同じ時間に測って記録することで、受診すべきタイミングを逃さずに済みます。
ステップ1:完全に眠っているときに測る
横になって目を閉じ、体の動きが落ち着いた深い眠りのときに測ります。起きているときや興奮時は正確な値が出ません。
ステップ2:胸またはお腹の動きを数える
胸やお腹が「ふくらむ→しぼむ」を1回と数えます。口元ではなく、体全体の動きを目で追います。
ステップ3:30秒数えて2倍にする
1分間数えるのが理想ですが、途中で起きてしまう場合は30秒カウント×2でも構いません。スマホのタイマーが便利です。
ステップ4:毎日同じ時間に記録する
就寝前や夜中など、毎日同じタイミングで記録すると変化を比べやすくなります。来院時にお見せいただくと診察がスムーズです。
正常値と受診の目安
| 動物 | 正常値(安静・睡眠時) | 受診の目安 |
|---|---|---|
| 犬 | 30回/分 以下 | 40回/分 以上が続く場合はご連絡ください |
| 猫 | 40回/分 以下 | 50回/分 以上が続く場合はご連絡ください |
記録に役立つアプリ
My Pet's Heart2Heart(ベーリンガーインゲルハイム/無料・iOS・Android)は、犬・猫の安静時呼吸数をカウント・記録し、推移をグラフで確認できるアプリです。記録したデータを獣医師に共有する機能があり、多頭飼いにも対応しています。表示は英語ですが操作はシンプルです。使い方でご不明な点は、受診時にお気軽にご相談ください。
その他の在宅チェックポイント
- 食欲・飲水量の変化(急な増減は要注意)
- 1日の活動量・散歩での疲れやすさ(以前より早く疲れる、途中で止まるなど)
- 咳の回数・タイミング・音の変化(夜間に増える、寝起きに出るなど)
- お腹のふくらみ・体重の急な増加(腹水のサインの可能性)
- 薬を飲み忘れた日・吐いてしまった日のメモ(来院時にお伝えください)
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当院の麻酔へのこだわり
心臓病を抱える子にとって、麻酔は健康な動物より慎重な管理を要します。だからといって「心臓が悪いから手術できない」と諦める必要はありません。当院では循環器科と麻酔科が連携し、術前に心機能を精密に評価したうえで、心臓への負担が少ない薬剤を選択し、術中も血圧・心拍数・心電図を厳密に管理します。リスクを正しく評価して備えることで、他院で手術を断られたケースにも対応できることがあります。
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