超音波検査(エコー)は、耳に聞こえない高い音をからだに当て、跳ね返ってきた反射を画像にする検査です。放射線を使わず、痛みもありません。そして何より、動いているものを動いているまま見られることが、他の画像検査にはない強みです。
01
超音波で見えるもの
腹部エコー ― お腹の臓器の「中身」
肝臓・胆嚢・脾臓・腎臓・膀胱・膵臓・副腎・腸などを観察します。大きさや形だけでなく、内部の質感、しこりの有無、壁の厚みまで分かります。
心エコー ― 心臓の構造と動き
弁の動き、心筋の厚み、部屋の大きさ、血液の流れる向きと速さを評価します。心雑音の原因を確かめ、治療を始める時期を判断するために欠かせません。
液体がたまっていないか
お腹や胸に液体(腹水・胸水・心嚢水)がたまっていないかを、少量でも見つけられます。急を要する状態の判断に直結します。
検査の「道しるべ」として
しこりに針を刺して細胞を採るとき、膀胱から直接尿を採るときに、超音波で位置を確認しながら安全に行います。
心エコー ― 心雑音の「その先」を確かめる
聴診で心雑音が聞こえても、それだけでは治療が必要かどうかは決まりません。弁のどこに問題があるのか、心臓が大きくなり始めているのか、心筋が厚くなっていないか——それを確かめるのが心エコーです。
犬の僧帽弁閉鎖不全症では、国際的な分類(ACVIM分類)に沿って、心臓の大きさと弁の状態からステージを判断します。ステージが変われば、薬を始める時期も変わります。「心雑音があるので、そろそろエコーを」とお勧めするのは、この判断のためです。
猫の肥大型心筋症は、症状が出ないまま進行し、突然の後ろ足の麻痺や呼吸困難で見つかることがあります。無症状のうちにエコーでスクリーニングしておく意味は、ここにあります。
腹部エコー ― レントゲンでは分からない「内部」を見る
レントゲンで腎臓が大きいと分かっても、その中で何が起きているかまでは写りません。エコーでは、腎臓の皮質と髄質の境目、結石の位置、腎盂の拡張、腫瘤の有無まで確かめられます。腸であれば、壁が何層に見えるか、厚みが増していないかを評価し、炎症性の病気と腫瘍の区別に役立てます。
02
検査の流れ
ステップ1:できれば絶食でお越しください(お腹の検査)
胃や腸に内容物やガスがあると、その奥の臓器が見えにくくなります。8〜12時間の絶食が理想です。お水は通常どおりで構いません。心臓の検査では絶食は不要です。
ステップ2:お腹の毛を刈らせていただきます
毛と皮膚の間の空気が超音波を跳ね返してしまうため、必要な範囲の毛を刈ります。そのうえで専用のゼリーを塗り、プローブ(探触子)を密着させます。
ステップ3:処置室でお預かりして観察します
仰向けや横向きの姿勢で、スタッフが支えながら行います。15〜30分ほどが目安です。痛みはありませんが、じっとしていられない子では鎮静をご提案することがあります。
ステップ4:画像を見ながらご説明します
静止画や動画を記録しておき、診察室で画面をお見せしながらご説明します。次回以降の検査で比較するための記録にもなります。
03
超音波が苦手なこと
超音波は、空気と骨をほとんど通り抜けられません。当たったところで反射してしまうため、その向こう側は見えなくなります。
- 肺の内部は空気の塊のため、基本的に見えません(肺の評価はレントゲンが中心になります)
- 腸にガスが多いと、その奥にある膵臓や副腎が見えにくくなります
- 脳や脊髄は骨に囲まれているため見えません(MRIの領域になります)
また、超音波検査は術者がその場で見ながら判断する検査です。どこにプローブを当て、何を確かめるかによって得られる情報が変わります。だからこそ、検査の前に「何を確かめたいのか」をはっきりさせておくことが大切だと考えています。
CT・MRIが必要と判断した場合は、提携する画像診断施設「CAMIC城南」へご紹介します。撮影した画像と所見は当院に共有されるため、結果をふまえた方針をご提案できます。
CAMIC城南のご案内(外部サイト)04
結果の見かた ― エコーで気をつけたいこと
腹部エコーは、一度で全身の答えが出る検査ではありません。とくに初期の変化は、時間を置いて比べることではじめて意味が分かることがあります。「今回は大きな異常なし。3か月後にもう一度見ましょう」というご提案をするのは、様子見という意味ではなく、変化の有無を確かめるための計画です。
05
さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)
より深く知りたい方のために、信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。
- 動物の超音波検査/MSD獣医マニュアル・獣医師向け(英語) — 超音波の原理・適応と、空気や骨に妨げられるという限界について専門的に解説。
- 画像診断/MSD獣医マニュアル・飼い主向け(英語) — レントゲン・超音波・CT・MRIの違いを飼い主向けに整理。

