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古谷動物病院古谷動物病院FURUYA ANIMAL CLINICご予約

PERICARDIAL EFFUSION

心膜液貯留(心タンポナーデ)

心臓を包む袋に液体がたまり、心臓が広がれなくなる。急変しうる緊急の心臓病です

「昨日まで元気だったのに、急にぐったりして倒れた」——心膜液貯留(心タンポナーデ)は、そんな急な形で現れることがある病気です。心臓を包む袋に液体がたまって心臓を圧迫し、全身に血液を送り出せなくなります。一刻を争う状態になることもあり、心エコーによる迅速な診断と、袋にたまった液体を抜く処置が命綱になります。当院は、緊急対応から原因の見極め、その後の選択肢のご提案までを一続きで支えます。

  • 循環器科
  • 緊急

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

とくに気をつけたい犬種・猫種

好発(かかりやすい傾向)が知られている犬種・猫種です。必ずかかるわけではありません。

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病気の概要

心膜液貯留(しんまくえきちょりゅう、Pericardial Effusion)は、心臓を包んでいる薄い袋(心膜=しんまく、心嚢=しんのう)の内側に、通常はごくわずかしかない液体が異常にたまってしまう状態です。液体がふえて袋の中の圧が高まると、外側から心臓が締めつけられ、心臓が十分に広がって血液をためられなくなります。この、心臓が圧迫されて全身に血液を送り出せなくなった危機的な状態を、心タンポナーデ(Cardiac Tamponade)と呼びます。

犬では比較的みられる心臓病で、中〜高齢の大型犬にやや多いとされます。猫ではまれです。ゆっくりたまる場合もありますが、急にたまると少量でも一気に危険な状態になり、それまで元気だった子が突然ぐったりする・倒れるといった急変の形で現れることがあります。

この病気で大切なのは、まず液体を抜いて心臓の圧迫をとり、命の危機を脱すること、そして落ち着いてから「なぜたまったのか」という原因を見極めることの二段構えです。当院は、緊急の場面での初期対応から、その後の原因検索・選択肢のご提案までを一続きで支えます。

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何が起きているのか

心膜は、心臓をやさしく包んで位置を保つ袋です。この袋と心臓のあいだ(心膜腔)に液体がたまると、次のような悪循環が一気に進みます。液体の「量」だけでなく、「たまる速さ」が状態の重さを左右するのが、この病気の特徴です。

STEP 1

心膜腔に液体がたまる

心臓を包む袋の内側に、血液や滲出液などの液体が異常にたまる。急にたまると、少量でも袋の中の圧が急激に上がる。

STEP 2

心臓が外から圧迫される

高まった圧が、外側から心臓を締めつける。とくに壁のうすい右心房・右心室が広がれなくなり、心臓に血液を「ためる」ことができなくなる。

STEP 3

送り出す血液が減る(拍出低下)

心臓にためられる血液が減るため、一回ごとに全身へ送り出せる血液の量も減る。血圧が下がり、体には血液のうっ滞(腹水など)が起こる。

STEP 4

ショック・急変

全身への血流がまかなえなくなると、ぐったり・失神・血の気の引いた歯ぐきなどのショック状態に。放置すれば命にかかわる、一刻を争う状態になる。

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主な原因

原因は年齢や動物種によって傾向が異なります。犬では心臓やその周囲にできた腫瘍が最も多く、次いで、明らかな原因が見つからない特発性が知られています。猫では心不全やFIPなど、全身的な背景をともなうことが多いとされます。

原因特徴
心臓の血管肉腫(けっかんにくしゅ)犬の心臓原発腫瘍で最も多い。右心房・右心耳にできやすく、そこから出血して心膜腔に血がたまる。進行が速く、注意が必要
心基底部腫瘍(大動脈小体腫瘍/ケモデクトーマ)心臓の付け根(大動脈のつけね)にできる腫瘍。短頭種にやや多い。増大はゆっくりだが、周囲へ広がりやすく、心膜液の原因になる
特発性心膜炎(とくはつせい)検査をしても明らかな原因が見つからないタイプ。ほかの原因を一つずつ除外して診断する(除外診断)
心膜中皮腫(ちゅうひしゅ)心膜そのものから発生する腫瘍。診断が難しいことがある
その他左心房破裂(僧帽弁閉鎖不全症などに続いて起こる)、感染、外傷など
猫の場合心筋症などによる心不全にともなうもの、猫伝染性腹膜炎(FIP)、リンパ腫などの腫瘍が背景にあることが多い

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症状・サイン

ゆっくりたまる場合は、元気消失・食欲低下・お腹のふくらみ(腹水)など、じわじわとした変化から気づかれます。一方で、急にたまった場合は、前ぶれなく突然ぐったりする・倒れることがあります。

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診断・検査

診断の目的は二つです。「心膜に液体がたまっているか(=タンポナーデかどうか)」をすばやく確かめることと、「なぜたまったのか(=原因)」を見極めることです。緊急時は、まず前者を最優先します。

心臓超音波検査(心エコー)

診断の中心です。迅速・低侵襲で、少量の液体でも検出でき、心臓を圧迫している様子(タンポナーデ)や、原因となる腫瘤の有無まで一度に評価できます。緊急の場面で最も頼りになる検査です。

胸部レントゲン検査

液体がたまると、心臓の影が丸く大きく(球状の心陰影)写るのが特徴です。肺やお腹の状態、ほかの病気の有無をあわせて評価します。

心電図検査(ECG)

液体の中で心臓が揺れることで波形の高さが一拍ごとに変わる電気的交互脈や、波形全体が小さくなる低電位がみられることがあり、診断の手がかりになります。

血液検査・全身の評価

全身状態の把握や、原因検索・他疾患との鑑別に用います。必要に応じて、抜いた液体の性状を調べたり、追加の画像検査を検討したりします。

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治療 ― まず抜いて、それから原因に向き合う

治療は、①緊急の圧迫をとる → ②原因に応じた対応を考える、という順で進めます。命の危機を脱することが最優先で、原因の見極めと本格的な治療はそのあとに続きます。

① 心膜穿刺(心嚢穿刺)― 緊急のドレナージ

心タンポナーデに対する第一の処置です。超音波で確認しながら細い管を入れ、袋にたまった液体を抜きます。心臓への圧迫がとれることで、全身の状態が短時間で大きく改善することが期待できます。

② 心膜切除術 ― 再発をくり返す場合

特発性でくり返したまる場合や、腫瘍で完全な切除が難しい場合に、心膜の一部を切り取って液体が胸の中へ抜けるようにする手術です。再貯留による急変をふせぐ、緩和的な意味あいの治療です。

③ 原因(腫瘍など)への治療

背景に腫瘍がある場合は、その種類に応じて抗がん剤治療などを検討します。心臓の血管肉腫のように進行が速いものでは、症状をやわらげ、穏やかな時間を守る緩和的な視点も大切にします。

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予後

予後は、背景にある原因によって大きく異なります。特発性の場合は、液体を抜く処置や心膜切除術で良好に経過することも少なくありません。一方で、心臓の血管肉腫のように進行が速い腫瘍が原因の場合は、残念ながら予後が厳しいことが多く、その子が穏やかに過ごせる時間をできるだけ守る、緩和的な視点が大切になります。

いずれの場合も、急変しうる病気だからこそ、早く気づき、早く手を打てるかどうかが分かれ目になります。「急にぐったりした」「お腹がふくらんできた」といったサインを見逃さず、早めにご相談ください。その子とご家族が幸せに過ごせることを目標に、いまできる最善の選択肢を一緒に考えます。

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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

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Q&A

よくあるご質問

さっきまで元気だったのに、急に倒れました。心臓の病気でしょうか?
その可能性があります。心膜液貯留(心タンポナーデ)は、心臓を包む袋に液体が急にたまることで、それまで元気だった子が突然ぐったりしたり、失神して倒れたりする形で現れることがあります。ぐったりして立てない・歯ぐきが白い・呼吸が速く苦しそう、といったサインは一刻を争う状態です。夜間であってもためらわずにご連絡ください。心臓が原因かどうかは、心エコー検査を行えば短時間で見極められます。
袋にたまった液体を抜けば、それで治りますか?
心膜穿刺(心嚢穿刺)で液体を抜くと、心臓への圧迫がとれて全身の状態は大きく改善します。ただし、これは症状を和らげる緊急処置であって、たまる原因そのものを取り除くものではありません。原因によっては再びたまることがあり、そのときは心膜の一部を切除する手術や、原因(腫瘍など)に対する治療を検討します。まずは液体を抜いて落ち着かせ、そのうえで「なぜたまったのか」を調べていきます。
猫でも起こりますか?
猫では犬に比べてまれですが、起こることはあります。猫の場合は、心筋症などによる心不全にともなうもの、猫伝染性腹膜炎(FIP)、腫瘍(リンパ腫など)が背景にあることが多いとされます。犬とは原因の傾向が異なるため、猫で心膜液がみられたときは、心臓そのものの評価に加えて全身的な原因の検索もあわせて行います。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。