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古谷動物病院古谷動物病院FURUYA ANIMAL CLINICご予約

NONCARDIOGENIC PULMONARY EDEMA

犬・猫の非心原性肺水腫(心臓以外が原因の肺水腫)

心臓は元気なのに、肺だけが水浸しになる。診断も治療も、心原性とは別物です。

非心原性肺水腫は、心臓に問題がないのに肺の血管から水がしみ出す状態です。首が絞まった直後、けいれん発作のあと、電気コードをかじった事故、重い全身の炎症——引き金はさまざまで、多くは数分から数時間のうちに急激に呼吸が苦しくなります。心原性肺水腫と見た目はよく似ていますが、利尿薬が主役にならないという点で治療がまったく異なります。当院は原因の見極めと酸素管理を軸に、必要と判断すれば24時間の看護体制がある施設へ迷わずお預けします。

  • 救急・集中治療科
  • 緊急

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

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病気の概要

非心原性肺水腫(ひしんげんせいはいすいしゅ)は、心臓に問題がないのに、肺の中に水がしみ出してたまる状態です。心臓病による肺水腫(心原性肺水腫)と見た目のサインはよく似ていますが、体の中で起きていることは別物で、治療の考え方も変わります。

多くは、はっきりした引き金のあとに急激に始まります。首が絞まった直後、のどに物が詰まったあと、けいれん発作のあと、電気コードをかじった事故、重い全身の炎症——こうした出来事から数分から数時間で、呼吸が速くなり、苦しそうになります。

02

心原性肺水腫との違い

心原性肺水腫非心原性肺水腫
仕組み心臓の渋滞で血管内の圧が上がり、水が押し出される血管の壁が傷んで水がもれる/胸の強い陰圧で水が引き出される
背景僧帽弁閉鎖不全症・心筋症などの心臓病上気道の閉塞・けいれん・感電・敗血症・溺水など
経過心臓病の進行の果てに、多くは夜間〜明け方にはっきりした引き金の数分〜数時間後に
心エコー左心房の拡大など、心臓の異常が見つかる心臓は正常に見える
治療の柱利尿薬・強心薬・酸素酸素と原因の除去。利尿薬は主役にならない
見通し管理しながら年単位で過ごせることが多い原因による差が大きい。軽症は数日で回復、重症は厳しい

心臓病の子の肺水腫については心原性肺水腫のページをご覧ください。

03

何が起きているのか

肺胞と毛細血管を隔てる膜は、ごく薄い一枚です。ここが壊れる道筋は、大きく2つあります。

経路A

膜が傷んで、もれる(透過性の亢進)

敗血症・重い炎症・誤嚥・煙の吸入・毒物などによって、血管の壁そのものが傷みます。圧は正常でも、水だけでなくタンパク質まで肺胞へもれ出します。もっとも重い形が急性呼吸窮迫症候群(ARDS)です。

経路B

強い陰圧と血流の集中で、引き出される

気道がふさがった状態で必死に息を吸うと、胸の中に強い陰圧が生まれ、血管から水が引き出されます。同時に、けいれんや頭のけが、感電では大量のアドレナリンが放出され、血液が肺の血管へ一気に押し込まれます。

共通

肺胞が水で満たされる

どちらの経路でも、行き着く先は同じです。肺胞に水がたまり、酸素が血液に入らなくなります。

結果

低酸素・呼吸不全

呼吸が速く努力性になり、チアノーゼが現れます。膜からタンパク質までもれている場合、水は抜けにくく、回復に日数がかかります。

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原因 ― 引き金になる出来事

犬と猫の非心原性肺水腫31例を集めた研究では、もっとも多い原因は上気道の閉塞で、全体の45%を占めていました。日常のなかで十分に起こりうる出来事が並びます。

上気道の閉塞(もっとも多い)

首輪やリードで首が絞まった、のどに物が詰まった、喉頭の麻痺や腫れ、短頭種の気道が一時的にふさがった、麻酔から覚める際に気道がふさがった——こうした場面のあとに起こります。閉塞が解除された直後に発症することが多く、「詰まりが取れて安心した数十分後」が危ない時間帯です。

けいれん発作・頭のけが(神経原性)

てんかん発作のあと、頭部外傷のあとに、脳からの強い指令で血圧と肺の血流が急上昇して起こります。発作そのものが治まっても、呼吸が速いままなら要注意です。てんかんの子では、発作後の呼吸の様子まで見てあげてください。

感電

電気コードをかじる事故は、子犬・子猫で今も珍しくありません。口の中のやけどが軽く見えても、数時間後に肺水腫が現れることがあります。

重い全身の炎症・敗血症(ARDS)

膵炎・腹膜炎・重症の感染症・広範囲の外傷など、全身の激しい炎症に続いて肺が傷む状態です。獣医療では2025年に国際的な診断の枠組み(ARDSVet)が改訂され、リスク因子の存在・1週間以内の発症・心原性肺水腫の除外・胸部画像の所見・酸素化の低下という基準で診断します。非心原性肺水腫のなかで、もっとも救命が難しい形です。

そのほか

  • 溺水・煙の吸入:水や熱・煙の刺激で肺が直接傷つきます
  • 誤嚥:胃の内容物が気道に入ると、肺炎と肺水腫の両方を同時に起こしえます
  • 再膨張性:長くつぶれていた肺を一気にふくらませたあとに起こります
  • 輸血にともなうもの:輸血後の急性の肺障害として起こることがあります
  • 低アルブミン血症:単独で肺水腫を起こすことはまれですが、ほかの要因があるときに悪化させます

05

症状・サイン

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診断・検査

診断は「肺に水がある」ことを確かめるだけでは終わりません。心臓が原因ではないと確かめてはじめて、非心原性と呼べます。

問診 ― 何があったか

この病気では、問診が検査と同じ重みを持ちます。直前の出来事(首輪・誤飲・発作・事故・麻酔・輸液)が分かれば、診断は一気に近づきます。思い当たることは、些細に思えても必ずお話しください。

胸部レントゲン検査

水のたまり方の分布を見ます。非心原性では背中側・後方に強く出ることが多く、心臓の大きさが正常であることも重要な手がかりになります。

心臓超音波検査(心エコー)

心原性を除外するために行います。左心房が大きくなっていない、弁や心筋に異常がないと確認できることが、治療方針の分かれ道になります。

酸素化・全身状態の評価

パルスオキシメーターや血液ガス検査で、どれだけ酸素が取り込めていないかを数字にします。重症度の判断と、人工呼吸が必要かどうかの判断材料になります。

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治療

治療の柱は2つだけです。酸素を届けて時間を稼ぐことと、引き金になった原因を取り除くこと。傷んだ肺そのものを直接治す薬は、残念ながらありません。

酸素の投与

酸素室やフローバイから始め、必要に応じて濃度と流量を上げていきます。それでも酸素が保てない場合は、麻酔をかけて人工呼吸器で管理する選択肢を検討します。

原因の除去

気道の確保、けいれんを止める、感染や炎症の治療など、引き金そのものへの対応です。ここが進まない限り、肺の状態も改善しません。

点滴の匙加減

脱水も過剰も悪化につながるため、量を細かく調整します。「水を絞れば肺の水が減る」という単純な話にはなりません。

安静と鎮静

興奮は酸素の消費を増やします。不安が強い子では、鎮静で呼吸の負担そのものを減らすことが治療になります。

08

集中管理が必要なとき ― 夜間救急へお預けする判断

非心原性肺水腫の重い症例では、数時間おきの見回りでは足りません。酸素濃度を保ちながら、呼吸の様子・酸素化・循環を連続して見張り、悪化すればその場で人工呼吸へ切り替える——そうした体制が救命を左右します。

当院は診療時間内の酸素管理・集中治療を行いますが、夜間に人が常駐する体制ではありません。その子に24時間の看護が必要だと判断したときは、体制の整った救急施設へお預けし、翌日以降の管理を当院で引き継ぎます。抱え込まずに渡すことが、その子にとって最善だと考えています。転院をご提案したときは、当院で診られないという意味ではなく、その時間帯に必要な看護量が当院を超えているという意味です。

当院の診療時間終了後(夜間)に急変した場合は、下記の提携夜間救急病院へ直接ご連絡ください。 昼の休診時間や休診日の日中は、当院で対応できる場合がございますので、まずは当院まで一度ご連絡ください。

当院への電話 03-3788-4688

当院提携の夜間救急病院

※ 記載の対応時間・連絡先は変更される場合があります。受診前に各院の公式サイトで最新情報をご確認ください。

09

予後

見通しは、引き金になった原因によって大きく分かれます。

原因見通しの目安
上気道の閉塞のあと酸素を中心とした管理で、多くは1〜3日で改善する。後遺症を残さないことが多い
けいれん発作・頭のけがのあと支持療法で回復することが多い。ただし、もとの病気の管理が欠かせない
感電やけどの程度と発症の早さによる。数日の経過観察が要る
重い炎症・敗血症(ARDS)集中的な管理を行っても救命が難しいことが多い。数日以内に生死が分かれる

大学病院で診療された犬30頭・猫1頭を集めた報告では、74%が退院に至った一方、人工呼吸器による管理を要した6頭では退院できたのは2頭でした。入院期間の中央値は48時間で、死亡と結びついた唯一の要素が「人工呼吸を要したこと」でした。つまり、人工呼吸に至らずに済むかどうかが、この病気の分かれ目になります。回復したあとは、引き金になった原因(喉頭の異常、けいれんを起こす病気、誤嚥しやすい背景など)を突き止めて手を打つことが、再発を防ぐ唯一の方法です。

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ご家庭でできる予防

この病気の引き金の多くは、日常の工夫で減らせます。

  • 首輪よりハーネスを:引っぱるくせのある子、気管が弱い子ではとくに。首が絞まる状況をつくらないことが、いちばん確実な予防です
  • 電気コードの対策:子犬・子猫のいるご家庭では、カバーをかける・届かない場所へまとめる
  • のどに詰まらせない:丸のみしやすいおやつ・おもちゃのサイズを見直す
  • けいれんを起こす子の管理:発作の回数を減らす治療を続け、発作後の呼吸まで観察する
  • 短頭種の気道:いびき・ゼーゼーが強い子は、暑さと興奮を避け、短頭種気道症候群の評価を受けておく
  • 誤嚥のリスクがある子:食事の姿勢や与え方を担当獣医師と相談する

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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

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Q&A

よくあるご質問

心臓が悪くないのに、どうして肺に水がたまるのですか?
肺の血管と肺胞のあいだには、ごく薄い膜があります。心原性肺水腫では、心臓の渋滞で血管内の圧が高くなり、水が押し出されます。一方、非心原性肺水腫では圧はふつうなのに、膜そのものが傷んで水がもれやすくなったり、胸の中に強い陰圧がかかって水が引き出されたりします。首が絞まって必死に息を吸ったとき、けいれん発作や頭のけがで大量のアドレナリンが出たとき、敗血症など全身の激しい炎症が起きたとき——こうした場面で起こります。原因が違うため、心臓の薬や利尿薬では解決しません。
首輪が絞まったあと、少し咳をしただけで元気そうです。様子を見てよいですか?
様子を見ずにご連絡ください。上気道がふさがった直後の肺水腫は、その場では軽く見えても数時間かけて悪化することがあります。実際、非心原性肺水腫の原因としてもっとも多いのが上気道の閉塞だという報告があります。とくに、首が絞まった・のどに物が詰まった・麻酔から覚める際に気道がふさがったといった出来事のあとで、呼吸が速い、咳が出る、落ち着きがないといった変化があれば、その日のうちの受診をおすすめします。何もなければそれが確認できるだけで十分な価値があります。
利尿薬を打てば水は抜けないのですか?
期待されるほどには抜けません。利尿薬は「血管の中の圧が高すぎて水が押し出されている」状態に効く薬です。非心原性肺水腫のように、血管の壁が傷んで水がもれている場合、利尿薬で体の水分を減らしても漏れは止まらず、かえって脱水や血圧の低下、腎臓への負担を招くことがあります。使う場合も限定的で、治療の中心はあくまで酸素を届けることと、引き金になった原因を取り除くことです。「肺水腫だから利尿薬」という思い込みが、この病気ではもっとも危険な近道になります。
夜間の病院に移ることを勧められました。当院では診られないということですか?
そうではありません。非心原性肺水腫の重い症例では、酸素濃度や呼吸の状態を数時間おきではなく連続して見張る必要があり、夜通しの看護と、場合によっては人工呼吸器による管理が救命を左右します。当院は診療時間内の集中管理は行いますが、夜間に人が常駐する体制ではありません。その子にとって24時間の看護が必要だと判断したときは、体制の整った救急施設へお預けし、翌日以降の管理を当院で引き継ぎます。抱え込まずに渡すことが、その子にとって最善だと考えています。
治ったあと、後遺症は残りますか?
原因によります。上気道の閉塞やけいれん発作のあとに起きた肺水腫は、酸素を中心とした管理で1日から数日のうちに改善し、後遺症を残さず回復することが多くあります。一方、重い全身の炎症にともなう急性呼吸窮迫症候群(ARDS)まで進んだ場合は、集中的な管理を行っても救命が難しいことが少なくありません。また、根本の原因(喉頭の異常、けいれんを起こす病気など)が残っていれば、そちらの治療をしない限り再発します。回復後に「何が引き金だったのか」を突き止めることが、次を防ぐ唯一の方法です。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。