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病気の概要
子宮蓄膿症は、子宮の中に膿がたまり、細菌に感染する病気です。避妊手術をしていない中高齢のメス犬・メス猫に多く、発情(生理)が終わってから数週間〜2か月ほどの時期に起こりやすいのが特徴です。
たまった膿から細菌の毒素が全身に回ると、敗血症・急性腎障害・子宮破裂による腹膜炎へと急速に進むことがあり、命に関わる緊急疾患です。
4頭に1頭
避妊していない犬が生涯で経験しうる割合(報告により約15〜25%)
発情後数週〜2か月
発症しやすい時期。プロゲステロンが高まる黄体期に起こる
緊急
とくに閉鎖性では全身状態が急に悪化。多くは手術が必要
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なぜ起こるのか ― 発情後のホルモンと細菌
子宮蓄膿症は、発情のあとに高まるホルモン「プロゲステロン(黄体ホルモン)」が深く関わって起こります。
ステップ1:発情後、プロゲステロンが高まる
発情のあとの「黄体期」には、妊娠に備えてプロゲステロンが分泌されます。これが子宮の内側の腺を発達・分泌させ、子宮頸管(子宮の出口)を閉じる方向に働きます。
ステップ2:子宮の内膜が変化する(子宮内膜嚢胞性過形成)
発情を繰り返すうちに、子宮の内膜が厚く変化し、分泌物がたまりやすい状態になります。これは細菌にとって居心地のよい環境になります。
ステップ3:細菌が入り込み、膿がたまる
発情期に開いた子宮頸管から、腟の常在菌(多くは大腸菌=E. coli)が子宮へ侵入して増殖し、膿がたまります。こうして子宮蓄膿症になります。
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「開放性」と「閉鎖性」― この違いが重要です
子宮蓄膿症は、子宮の出口(子宮頸管)が開いているかどうかで、2つのタイプに分かれます。この違いは、気づきやすさと危険度に直結します。
| タイプ | 子宮頸管 | 気づきやすさ | 危険度 |
|---|---|---|---|
| 開放性 | 開いている | 陰部から膿・血のような分泌物が出るため気づきやすい | 膿が外に排出される。比較的早く気づける |
| 閉鎖性 | 閉じている | 分泌物が出ないため気づきにくい。「なんとなく元気がない」だけのことも | 膿が子宮内にたまり続け、全身状態が急に悪化しやすく危険。子宮破裂のおそれも |
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好発 ― どんな子に多いか
- 避妊手術をしていない中〜高齢のメス(年齢を重ねるほどリスクが上がる)
- 出産経験のない子でも起こります(むしろ多いとされます)
- 発情を止める・偽妊娠などにホルモン剤を使った経験のある子
- 犬種では、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、グレート・デーン、ロットワイラー、ゴールデン・レトリーバー、コリーなどで発症率が高いと報告されています(10歳までの発症率は犬種により大きく異なります)
- 猫では犬よりまれですが、シャム、ラグドール、メインクーン、ベンガル、スフィンクスなど東洋系・特定の品種で多いとされます
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診断
避妊歴・発情歴を含む問診と、いくつかの検査を組み合わせて診断します。全身状態が悪いことも多いため、診断と並行して体を立て直す治療を始めます。
ステップ1:問診・身体検査
最後の発情がいつだったか、避妊手術の有無、症状の経過を確認します。お腹の触診で、張った子宮を触れることもあります。
ステップ2:血液検査
炎症の程度(白血球の増加など)、脱水や腎臓・肝臓への影響、全身への波及(敗血症の兆候)を評価します。手術の可否を判断する材料にもなります。
ステップ3:画像検査(レントゲン・超音波)
レントゲンで大きく膨らんだ子宮の陰影を、超音波検査で子宮内に液体(膿)がたまっている様子を確認します。妊娠との区別にも役立ちます。
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治療 ― 第一選択は「手術」
内科的な治療(プロゲステロンの働きを止める薬=アグレプリストンと、抗菌薬などの組み合わせ)という選択肢もありますが、適応は限られます。
- 適応の目安:子宮頸管が開いた開放性で全身状態が安定している/どうしても繁殖に使いたい/麻酔リスクが非常に高い、といった場合
- 注意点:効果は確実ではなく、いったん治っても再発率が高い(およそ半数)と報告されています。閉鎖性や全身状態が悪い場合には向きません
繁殖の予定がなければ、手術による根治がもっともすすめられます。どの方針を選ぶかは、その子の状態・年齢・ご家族のご希望を正直に照らし合わせて、一緒に決めていきます。麻酔に不安がある場合も、まずはリスクを具体的に評価させてください。
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予防 ― 避妊手術で「確実に」防げる病気です
子宮蓄膿症は、卵巣と子宮を摘出する避妊手術を受けていれば、基本的に起こりません。命に関わる病気でありながら、確実に予防できる数少ない病気のひとつです。
繁殖の予定がない場合、若く健康なうちの避妊手術は、子宮蓄膿症に加えて乳腺腫瘍などの予防にもつながります。時期やメリット・デメリットについては、下記のページで詳しくご案内しています。
犬の避妊手術について
犬の避妊手術の時期・方法・メリットと、子宮蓄膿症や乳腺腫瘍の予防効果について解説しています。
猫の避妊手術について
猫の避妊手術の時期・方法と、発情に伴うストレスや病気の予防について解説しています。
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猫の子宮蓄膿症について
猫にも子宮蓄膿症は起こります。犬に比べると頻度は低く(13歳までにおよそ2.2%との報告)、猫は交尾によって排卵が起こる「交尾排卵動物」であるため発生のしかたに違いはありますが、発情後にプロゲステロンが高まって子宮に膿がたまるという基本は同じです。避妊していない中高齢のメス猫が「元気・食欲をなくす」「お腹が張る」「陰部が汚れている」といったときは、犬と同じく子宮蓄膿症を疑い、早めにご相談ください。治療も犬と同様、避妊手術による摘出が第一選択です。
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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)
より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。
- 犬・猫の子宮内膜嚢胞性過形成-子宮蓄膿症/MSD(Merck)獣医マニュアル(英語) — 病態(黄体期プロゲステロンとE. coli)・開放性/閉鎖性・治療の要点を整理。
- 小動物の子宮蓄膿症レビュー(Society for Theriogenology・英語) — 発生率・生涯リスク・犬種差など疫学を含む総説。
- ゴールデン・レトリーバーの子宮蓄膿症と遺伝子(Nature Scientific Reports・英語) — 特定犬種で発症率が高い背景に遺伝的素因があることを示した研究。

