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古谷動物病院古谷動物病院FURUYA ANIMAL CLINICご予約

HIP DYSPLASIA

犬の股関節形成不全(HD)

股関節がゆるく育つ、大型犬に多い発育性の疾患

「腰を振るように歩く」「立ち上がりや階段をいやがる」「走り方が“ウサギ跳び”になる」——それは股関節形成不全のサインかもしれません。成長期に股関節がゆるく育つことで起こり、進むと関節炎(変形性関節症)につながります。当院では年齢・重症度・生活を合わせて、その子に合った選択肢を一緒に考えます。

  • 整形外科
  • 大型犬に多い
  • 成長期

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

01

病気の概要

股関節形成不全(こかんせつけいせいふぜん、Hip Dysplasia:HD)は、太ももの骨(大腿骨)の丸い先端(大腿骨頭)と、骨盤側の受け皿(寛骨臼)とのかみ合わせがゆるく育ってしまう、成長期の発育性の疾患です。

生まれた時点で股関節が悪いわけではなく、成長にともなって関節がゆるみ、少しずつかみ合わせが崩れていくのが特徴です。ゆるみによって関節が不安定になると、軟骨がすり減り、やがて**変形性関節症(関節炎)**へと進行します。

とくに大型犬に多い病気ですが、どの犬種でも起こり得ます。症状は「ほとんど気づかない程度」から「明らかに歩けない」まで幅広く、そのため治療も一律ではありません。大切なのは、年齢・関節のゆるみや変形の程度・その子の生活を合わせて判断することです。

02

股関節のしくみと、何が起きているか

正常な股関節(左)と「はまりが浅い」股関節(右)。ゆるさが続くと軟骨のすり減りや骨の変形(変形性関節症)につながります。

股関節は、大腿骨頭(ボール)が寛骨臼(ソケット)にすっぽりはまり込む「ボール&ソケット」の関節です。深くはまっているほど安定し、体重を支えながらなめらかに動きます。

股関節形成不全では、このはまり込みが浅く、ゆるい状態で成長します。すると次のような悪循環が起こります。

はじまり

関節のゆるみ(弛緩)

寛骨臼が浅い・靭帯がゆるいなどで、大腿骨頭が受け皿の中で少しずつ動いてしまう。

進行

亜脱臼と軟骨の摩耗

歩くたびに関節がこすれ、ずれ(亜脱臼)が繰り返される。軟骨がすり減り、炎症と痛みが起きる。

結果

変形性関節症(関節炎)

関節の変形・骨の増殖(骨棘)が進み、慢性的な痛みと可動域の制限につながる。

03

好発犬種・年齢とリスク因子

好発犬種

大型・超大型犬に多くみられますが、小・中型犬でも起こります。

  • ゴールデン・レトリーバー
  • ラブラドール・レトリーバー
  • バーニーズ・マウンテン・ドッグ
  • ジャーマン・シェパード
  • ロットワイラー
  • セント・バーナード、グレート・ピレニーズ などの超大型犬
  • フレンチ・ブルドッグ、パグ など(小・中型でも注意)

好発年齢とリスク因子

  • 発育性のため、多くは生後4ヶ月〜1歳ごろに関節のゆるみや症状が現れる
  • 成熟後に、若い頃からの股関節形成不全を背景とした関節炎として気づかれることもある
  • 遺伝的素因(最大のリスク因子)
  • 成長期の過剰な栄養・急激な体重増加・肥満
  • 成長期のハードな運動(高いジャンプ・過度な運動)
  • 滑りやすい床での生活

04

症状・サイン

関節のゆるみがあっても、はじめは無症状のことが少なくありません。次のようなサインは、股関節の痛みや不安定さのあらわれかもしれません。

05

診断・検査

診断は、歩き方の評価・整形外科的な触診・レントゲン検査を組み合わせて行います。関節のゆるみを客観的に評価する専用の撮影法もあります。

STEP 1

問診・歩様(歩き方)の評価

いつから・どんな時に・どう変化したかを伺い、歩き方を観察します。

STEP 2

整形外科的な触診(Ortolani徴候など)

関節のゆるみ(亜脱臼と整復)を確かめる触診を行います。若齢では鎮静下で評価することがあります。

STEP 3

レントゲン検査(OFA法・Norberg角)

股関節を伸ばして撮影し、かみ合わせや関節症の変化を評価します。かみ合わせの目安となるNorberg角(正常の目安はおよそ105°以上)などを確認します。

STEP 4

関節のゆるみの定量評価(PennHIPなど)

専用の撮影で関節のゆるみを数値化する方法です。値が小さいほど関節炎のリスクが低いとされ、早期のリスク評価に役立ちます。

STEP 5

必要に応じてCTなどの精密評価

手術を検討する場合や、骨格の詳しい評価が必要な場合に行います。

06

治療の考え方 ― 年齢と重症度で変わる

股関節形成不全の治療は、大きく保存療法(内科的管理)手術に分かれます。どちらを選ぶかは、年齢・関節のゆるみや変形の程度・体格・生活の質によって変わります。とくに、若齢期にしか行えない「予防的な手術」があるため、早く見つかるほど選べる手が増えるのが、この病気の大切なポイントです。

保存療法(内科的管理)

軽度の症例や、痛みがコントロールできている場合、手術の適応でない場合には、まず保存療法を行います。股関節そのものを治すものではなく、痛みと進行を抑えて、できるだけ快適に過ごせる状態を保つことが目的です。

  • 体重管理(減量) ― もっとも効果が確かで、費用もかからない基本の治療。股関節への負担を大きく減らします
  • 滑りにくい床環境の整備、段差・急なジャンプを避ける工夫
  • 適度な運動・リハビリ(水中トレッドミルなど)で関節を支える筋肉を保つ
  • 必要時の消炎鎮痛薬(NSAIDsなど。肝臓・腎臓への影響に配慮しながら使用)
  • オメガ3脂肪酸などの関節ケア

手術による治療

手術には、**若齢期に関節の育ち方を良い方向へ導く「予防的な手術」**と、**関節炎が進んでしまった関節の痛みを取り除く「救済的な手術」**があります。年齢と関節の状態によって適応が異なります。

若齢恥骨結合固定術(JPS)

Juvenile Pubic Symphysiodesis

生後およそ12〜20週の子犬に行う、低侵襲な予防的手術。骨盤の成長を利用して受け皿の被さりを改善します。適応となる時期がごく限られます。

骨盤骨切り術(DPO/TPO)

Double / Triple Pelvic Osteotomy

関節炎が始まる前の若齢犬(目安6〜10ヶ月)に行い、骨盤を切って受け皿を回転させ、かみ合わせを深くする手術です。

3Dプリンターインプラント(3DHIP)

3D-Printed Shelf Implant

CT画像からその子専用に作ったチタン製インプラントを受け皿のふちにかぶせる棚形成術。骨を切らず、自分の関節を残せる低侵襲な手術です(目安8ヶ月〜2歳)。

全人工股関節置換術(THR)

Total Hip Replacement

関節炎が進んだ成熟犬に対する、もっとも機能回復が期待できる手術。傷んだ関節をインプラントに置き換えます。

大腿骨頭切除術(FHO)

Femoral Head Ostectomy

痛みの原因である大腿骨頭を切除し、「偽関節」をつくって骨どうしの当たりをなくす救済手術。小〜中型犬・猫でとくに良い適応です。

若齢恥骨結合固定術(JPS)について 骨盤骨切り術(DPO/TPO)について 3Dプリンターインプラント(3DHIP)について 全人工股関節置換術(THR)について 大腿骨頭切除術(FHO)について

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その他の股関節の病気

股関節に痛みや歩行異常を起こす病気は、股関節形成不全だけではありません。似た症状を示す代表的な疾患もあわせて確認します。

レッグ・カルベ・ペルテス病

Legg-Calvé-Perthes Disease

大腿骨頭への血流が途絶えて骨が壊死・変形する病気。小型犬の成長期(多くは1歳未満)に多く、強い痛みと後ろ足の跛行が出ます。当院では機能回復に優れる人工股関節(THR)を軸に、FHOも含めて検討します。

股関節脱臼(外傷性)

Coxofemoral Luxation

交通事故や落下などで大腿骨頭が受け皿から外れる外傷。まず徒手整復(+固定包帯)を試み、外れを繰り返す場合や骨折を伴う場合は、外科的な整復・FHO・THRなどを検討します。

レッグ・カルベ・ペルテス病について詳しく見る

08

予後・日常でできること

早い段階で見つかり、適切な治療(保存療法や適した手術)とリハビリを行えば、多くの子が快適な生活を取り戻せます。手術はゴールではなくスタートであり、術後・治療後の過ごし方が最終的な結果を大きく左右します

「腰を振って歩く」「立ち上がりがつらそう」という段階でのご相談も歓迎です。とくに大型犬の子犬では、早めの股関節チェックが将来の選択肢を広げます。その子とご家族が幸せに過ごせることを目標に、選択肢を一緒に考えます。

09

さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

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Q&A

よくあるご質問

まだ痛がっていませんが、受診したほうがいいですか?
はい、とくに大型犬の子犬では早めのご相談をおすすめします。股関節形成不全は「関節のゆるさ」が先にあり、痛みや歩き方の異常が出る前から進行していることがあります。生後4〜6ヶ月ごろに股関節のゆるみを見つけられれば、若齢期だけに行える予防的な手術など、選べる選択肢が広がります。気になる歩き方があれば動画を撮っていただくと診察がスムーズです。
手術は必ず必要ですか?
いいえ、すべての股関節形成不全に手術が必要なわけではありません。軽度の症例や、痛みが体重管理・運動療法・鎮痛でコントロールできる場合は、まず保存療法で経過をみることが多くあります。一方で、痛みが続く・関節の変形が進む・生活の質が下がっている場合には、手術がその子のQOLを守る有力な選択肢になります。年齢・重症度・体格をふまえて一緒に判断します。
予防はできますか?
遺伝的な素因が背景にあるため完全な予防は難しいですが、進行を抑える工夫はできます。成長期に太らせすぎないこと、急激な体重増加やハードなジャンプ運動を避けること、適正体重を保つことが股関節への負担を減らします。滑りにくい床環境の整備も有効です。素因のある犬種では、若齢期の股関節スクリーニングもご相談ください。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。