しこりを見つけたとき、ご家族がいちばん知りたいのは「これは何なのか」だと思います。触った感触、大きさ、動くかどうか——診察でも確認しますが、見た目や手触りで良性・悪性を見分けることはできません。確かめる方法が、細胞を採って顕微鏡で見ることです。
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細胞診とは ― 細い針で、細胞を採る
細胞診(穿刺吸引細胞診)は、採血に使うのと同じくらいの細い針をしこりに刺し、中の細胞を採って顕微鏡で観察する検査です。皮膚のしこり、腫れたリンパ節、お腹の中の臓器、たまった液体などが対象になります。
数分
針を刺す処置にかかる時間
当日
院内での確認(細胞が採れているか)
1週間程度
外部機関による判定の目安
当院での進め方
ステップ1:診察でしこりを評価します
場所・大きさ・硬さ・動きやすさ・皮膚との関係を確認します。深いところにある場合は、超音波で位置と周りの血管を確認し、安全に採取できるかを判断します。出血しやすい状態が疑われる場合は、先に凝固検査を行います。
ステップ2:細胞を採ります
細い針を刺して細胞を吸い上げ、スライドガラスに吹き付けます。皮膚のしこりであれば、多くの場合は麻酔なしで数分で終わります。おなかの中の臓器は超音波で画面に映しながら針を進め、必要に応じて鎮静を用います。
ステップ3:院内で染色し、その場で確認します
染色して顕微鏡で見て、まず「診断に足りるだけの細胞が採れているか」を確かめます。この時点で見当がつく場合もあり、当日中に次の一手(追加の検査、切除の計画、緊急性の判断)を決められます。
ステップ4:標本を外部の検査機関へ送ります
最終的な判定は、外部の検査機関に依頼します。細胞の判定を専門に行う担当者の目を通すことで、より確かな診断に近づけるためです。結果はおおむね1週間程度でお伝えします。
おなかの中のしこりを調べるとき ― 超音波ガイド下の穿刺
皮膚のしこりは目で見て触れて刺せますが、肝臓・脾臓・腎臓・リンパ節などおなかの中の臓器は、外からは位置が分かりません。そこで、超音波で画面に映しながら針を進める方法(超音波ガイド下穿刺)で行います。目標の場所に確実に届かせると同時に、血管や周りの臓器を避けるためです。
体の深い場所や、動くと危ない部位では、安全のために鎮静を用いることがあります。「刺せるかどうか」ではなく「安全に刺せるかどうか」から判断しています。
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細胞診で分かること・分からないこと
分かること
炎症なのか腫瘍なのか。腫瘍であれば、どの系統の細胞か(リンパ球・肥満細胞・上皮細胞など)。リンパ腫や肥満細胞腫のように、細胞診で診断がつきやすい腫瘍もあります。膿瘍や脂肪腫といった「切らなくてよいもの」を見分けられるのも大きな利点です。
分からないこと
細胞の配列や周囲との関係は見えないため、悪性度の詳しい分類や、周りの組織にどこまで入り込んでいるかは判断できません。細胞が採れにくい腫瘍(線維系の腫瘍など)では、結論が出ないこともあります。
03
病理組織検査 ― 「組織」として調べる
細胞診で結論が出ないとき、あるいは治療方針を決めるためにより詳しい情報が必要なときは、組織そのものを採って調べる病理組織検査を行います。細胞をばらばらに見るのではなく、組織としての構造を保ったまま観察するため、得られる情報が格段に増えます。
| 細胞診 | 病理組織検査 | |
|---|---|---|
| 採るもの | 細胞(針で吸引) | 組織のかたまり(一部または全部) |
| 体への負担 | 小さい。多くは麻酔不要 | 麻酔が必要なことが多い |
| 分かること | 炎症か腫瘍か、細胞の系統 | 腫瘍の種類・悪性度(グレード)・切除断端 |
| 結果まで | 1週間程度 | 1〜2週間程度 |
手術で切除した組織も、必ず病理組織検査に出します。確認するのは、腫瘍の最終的な種類と悪性度、そして切除断端——取り切れているかどうかです。ここで「断端に腫瘍細胞が残っている」と分かれば、追加の切除や別の治療を検討します。手術は切って終わりではなく、この結果を受け取るところまでが一続きの流れです。
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結果の見かた ― 細胞診で気をつけたいこと
細胞診の結果は、「良性」「悪性」という二択で返ってくるとは限りません。「炎症性の変化が主体」「腫瘍性を否定できないが判定困難」といった、幅のある表現になることもあります。これは検査があいまいなのではなく、採れた細胞から言えることの限界を正直に示しているためです。
そのようなときは、時間を置いて再検査する、部位を変えて採り直す、病理組織検査へ進む——といった次の手を、ご家族と相談しながら決めていきます。分からないことを分からないままお伝えし、その先の選択肢を一緒に考えることが、当院の考える誠実さです。
腫瘍の診断と治療の全体像については、腫瘍科のページもあわせてご覧ください。
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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)
より深く知りたい方のために、信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。
- 皮膚・軟部組織の腫瘍の概要/MSD獣医マニュアル・獣医師向け(英語) — 皮膚のしこりでは切除の前に細胞診を行うべきとされる理由を含め、診断の考え方を解説。

