本文へスキップ
古谷動物病院古谷動物病院FURUYA ANIMAL CLINICご予約

ORAL & NASAL TUMOR

犬・猫の口腔・鼻腔の腫瘍

口臭・よだれ・鼻血——「よくあること」に見えるサインの奥に、隠れていることがあります。

口のなかや鼻のなかにできる腫瘍は、口臭・よだれ・食べにくさ・鼻血・くしゃみといった、つい見過ごしがちなサインから始まります。多くは局所での広がりが強く、早く見つけて範囲を正確に把握できるかどうかが、治療の選択肢を大きく左右します。顔まわりの気になる変化は、どうか様子見にせず、一度お口と鼻を見せにいらしてください。

  • 腫瘍科
  • 口腔・鼻腔

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

01

病気の概要

口のなか(口腔)と鼻のなか(鼻腔)にできる腫瘍は、どちらも顔まわりの、外から見えにくい場所にできるため気づかれにくく、しかも局所での広がりが強いという共通点があります。だからこそ、口臭・よだれ・鼻血といった「よくあるサイン」を見過ごさず、早く見つけて広がりを正確に把握することが、治療の選択肢を広げる鍵になります。

このページでは、口腔の腫瘍と鼻腔の腫瘍を分けて解説します。

02

口腔の腫瘍

主な種類

見た目だけでは種類も良性・悪性も分かりません。生検(組織を採る検査)で正確に見極めます。

種類特徴
悪性黒色腫(メラノーマ)犬の口腔でもっとも多い悪性腫瘍。局所での広がりが強く、リンパ節・肺へ転移しやすい。腫瘍が大きいほど注意
扁平上皮癌(SCC)猫の口腔でもっとも多い悪性腫瘍。犬では局所再発が多い。発生部位で予後が変わる
線維肉腫転移は比較的少ないが、局所での広がりが強く、広めの切除が必要
エプリス(末梢性歯原性線維腫)もっとも多い良性の口腔腫瘍
棘細胞性エナメル上皮腫転移はしないが、局所で骨を壊す性質。放射線がよく効く

症状・気づきのサイン

診断

  • 生検・病理検査が確定診断のもっとも確実な方法です。細胞診は補助的に使います。
  • CT(提携施設をご紹介)で、骨への広がりや手術の計画を評価します。
  • 所属リンパ節の評価(腫れていなくても転移することがあります)と、胸部の画像で肺転移(とくにメラノーマで重要)を確認します。

治療

  • 外科切除が主体です。断端に健常な組織を含めて広めに切除するため、下顎・上顎の部分切除などを行うことがあります。
  • 放射線療法は、棘細胞性エナメル上皮腫や扁平上皮癌などでよく用いられ、手術が難しい場合や補助として選択します(提携施設をご紹介)。

予後の目安(報告値の幅)

  • 扁平上皮癌(犬)は発生部位で差が大きく、口の前のほう(吻側)で完全に切除できると予後が良好で、報告では1年生存が9割前後という報告もあります。
  • メラノーマは転移により、口腔腫瘍のなかでも予後が厳しめです。
  • 猫の口腔扁平上皮癌は予後が厳しく、小さく前のほうに限局し切除できた例で改善の可能性があります。

03

鼻腔の腫瘍

主な種類

  • :そのほとんどが悪性で、腺癌がもっとも多く、ほかに扁平上皮癌、軟骨肉腫・骨肉腫などがあります。
  • 9割以上が悪性で、リンパ腫がもっとも多く、次いで癌腫です。

いずれも局所での広がりが強く、遠くへの転移は比較的遅いのが特徴です。

症状・気づきのサイン

診断・治療

STEP 1

CT(提携施設をご紹介)

鼻腔は複雑な構造のため、平面のX線では評価が難しく、CTが第一選択です。広がりの把握と放射線の計画に欠かせません。

STEP 2

鼻腔の生検・病理検査

腫瘍の種類を確定します。CTで得た情報をもとに、適切な部位から組織を採ります。

STEP 3

種類に応じた治療

犬の鼻腔腫瘍は放射線療法が第一選択(提携施設をご紹介)。猫で多いリンパ腫は化学療法(必要に応じて放射線)によく反応することがあります。外科の役割は限定的です。

化学療法(抗がん剤治療)の総論を読む

04

ご家庭でのケアと、当院の考え方

口腔・鼻腔の腫瘍は、「口臭くらい」「ただの鼻炎」と思われているうちに進むことがあります。ふだんのスキンシップやお口のケアのときに、しこり・出血・左右差・食べにくさ・長引く鼻症状に気づいてあげられるのはご家族です。顔まわりの手術や放射線と聞くと不安になりますが、正確な診断と範囲の把握があってこそ、負担の少ない・意味のある治療が選べます。

顔は、その子の表情と食べる喜びが宿る場所です。だからこそ、機能とQOLを大切にしながら、その子とご家族が幸せに過ごせることを目標に、選択肢を一緒に考えます。気になる変化があれば、まずはご相談ください。

05

さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

腫瘍科の詳しいご案内を見る

はじめてご来院される方へ

ご予約から診察・治療方針のご提案までの流れを、わかりやすくまとめています。

はじめての方はこちら

Q&A

よくあるご質問

口が臭う・よだれが増えた・口から少し出血します。歯周病だと思っていましたが、腫瘍のこともありますか。
あります。口臭・よだれ・口からの出血・食べにくさは、歯周病でもよくみられますが、口腔腫瘍の初期サインでもあります。とくに、歯ぐきや口のなかにしこりがある、歯が急にぐらつく、顔が腫れて左右差がある、といった場合は注意が必要です。見た目だけでは良性・悪性や種類を判断できないため、確定には組織を採って調べる生検が必要です。お口のケアで来院されたときに気づくことも多いので、気になる変化があれば遠慮なくお知らせください。
片方の鼻から鼻水や鼻血が続いています。何度も鼻炎の薬をもらいましたが治りません。
片側から始まる慢性の鼻水・鼻血で、治療を繰り返しても良くならない場合は、鼻腔の腫瘍を含めて詳しく調べる意味があります。鼻腔腫瘍は、はじめ片側性で、進行すると両側性になったり、顔の変形・涙・くしゃみを伴ったりします。犬の鼻腔腫瘍はそのほとんどが悪性で、局所での広がりが強いのが特徴です。診断にはCT(提携施設をご紹介)と鼻腔の生検が有力です。長引く片側の鼻症状は、一度きちんと評価することをおすすめします。
口の腫瘍で「顎の一部を切除する」と言われました。食べられなくなりませんか。
ご心配はもっともですが、多くの犬は顎の部分切除後も、早い時期に自分でごはんを食べられるようになることが多いと報告されています。犬は思いのほかよく順応します。一方で猫は術後に食欲が落ちやすく、一時的に食事を助けるためのチューブ(経管栄養)が必要になることが多いです。切除の範囲は、腫瘍の種類・位置・広がりをCTなどで見極めたうえで、必要最小限になるよう計画します。術後の食事のサポートも含めて、事前に十分ご説明します。
口のメラノーマにワクチンがあると聞きました。使えば治りますか。
犬の口腔メラノーマに対するDNAワクチンは、補助的な治療の選択肢のひとつですが、「使えば治る」というものではありません。初期の研究では生存の延長を示唆する結果があった一方、その後の複数の研究では上乗せの効果を確認できなかったものもあり、有効性の評価はまだ定まっていません。安全性は比較的良好とされます。過度な期待も過度な否定もせず、外科・放射線などほかの治療とあわせて、その子にとって意味があるかを一緒に考えます。
鼻腔の腫瘍は手術で取れないのですか。
鼻腔は複雑な構造で、周囲に目・脳などの重要な組織が近いため、外科手術の役割は限定的で、犬の鼻腔腫瘍では放射線療法が治療の中心になります(提携施設をご紹介します)。一方、猫の鼻腔腫瘍で多いリンパ腫は、化学療法(必要に応じて放射線)によく反応することがあります。つまり「取る」よりも「照射する・効く薬で抑える」が主な方針になります。まずはCTと生検で腫瘍の種類と広がりを見極め、その子に合った方針を組み立てます。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。