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MAMMARY TUMOR

犬・猫の乳腺腫瘍

犬と猫で、まるで性格が違うがん。そして、避妊のタイミングで“なりやすさ”が変えられるがんです。

乳腺のしこりは、未避妊の女の子でとても多く見つかる腫瘍です。特徴的なのは、犬ではおよそ半分が良性である一方、猫では大半が悪性という、種による大きな違い。そしてもうひとつ——早い時期の避妊で、発生リスクそのものを大きく下げられることが知られています。だからこそ、見つけたら早めに調べること、そして予防の視点を持つことが大切です。

  • 腫瘍科
  • 予防

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

とくに気をつけたい犬種・猫種

好発(かかりやすい傾向)が知られている犬種・猫種です。必ずかかるわけではありません。

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病気の概要

乳腺腫瘍は、乳腺(おっぱいの組織)にできるしこりで、避妊していない女の子(雌)でとても多くみられます。この病気を理解するうえで大切なのは、犬と猫で“性格”がまるで違うということです。

犬の乳腺腫瘍

およそ半分が良性

報告では、犬の乳腺腫瘍のおよそ半数が良性、半数が悪性とされます。悪性でも、早く見つけて適切に切除できれば、良い経過をたどることが少なくありません。複数同時にできることが多いのも特徴です。

猫の乳腺腫瘍

大半が悪性・進行が早い

報告では、猫の乳腺腫瘍の8〜9割が悪性で、進行も早い傾向があります。だからこそ、犬よりも早期発見と積極的な手術が重要になります。小さくても油断できません。

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避妊の時期と、発生リスク

乳腺腫瘍は、卵巣から出る女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の影響を受けて育ちます。そのため、早い時期に避妊してホルモンの影響を減らすと、発生リスクそのものを下げられることが知られています。

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好発 ― どんな子に多いか

  • 中心は高齢の未避妊の雌です。犬では平均7〜11歳ごろに多く、5歳未満ではまれとされます。
  • 未避妊の雌では、全身にできる腫瘍のうち乳腺由来のものがかなりの割合を占めるとの報告があります。肥満や高脂肪の食事との関連も指摘されています。
  • 猫でも未避妊の雌が最もリスクが高く、高齢・一部の品種(シャム系など)で多いとされます。

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症状・気づきのサイン

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診断・検査

診断と並行して、どこまで広がっているか(ステージ)を評価します。乳腺腫瘍は肺・所属リンパ節・肝臓などに転移することがあるため、手術の前に全身をみておくことが大切です。

STEP 1

視診・触診

しこりの数・大きさ・位置・皮膚の状態、所属リンパ節の腫れを確認します。

STEP 2

全身状態・転移の評価

血液検査に加え、胸部X線(3方向)で肺転移の有無を確認します。必要に応じて腹部超音波やリンパ節の評価も行います。

STEP 3

切除と病理検査

切除した腫瘍を病理検査に出し、良性・悪性、組織型、悪性度(グレード)、脈管への浸潤、切除の完全性を確認します。

ステージの目安(修正TNM)

ステージ目安(犬)
I腫瘍径3cm未満
II3〜5cm
III5cm超
IV所属リンパ節に転移あり
V遠隔転移(肺など)あり

(猫では、2cm未満/2〜3cm/3cm超という大きさの区切りが、予後の目安として重視されます。)

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治療

乳腺腫瘍の治療は、外科切除が中心です。切除の範囲は、しこりの数・位置・大きさ・悪性度、そして犬か猫かによって考え方が変わります。

犬 ― 腫瘍に応じた切除

腫瘍だけを摘出する方法から、その乳腺のかたまり・領域・片側の乳腺をまとめて切除する方法まで、状況に応じて選びます。予防目的で健常な乳腺まで広く取る利益ははっきり示されていないため、その子に必要な範囲を見極めます。

猫 ― 積極的な広範切除

悪性が大半で再発しやすいため、片側または両側の乳腺をまとめて切除する方法がすすめられます。両側を、日をあけて2回に分けて行うこともあります。犬より積極的な切除が、再発を抑えるうえで重要です。

避妊の同時実施(選択肢)

腫瘍の摘出と同時に避妊を行うと、その後の新しい乳腺腫瘍の発生が減ったとの報告があります。とくにホルモンに反応するタイプで意義があると考えられます。麻酔・手術の負担とのバランスをみて判断します。

化学療法(補助的)

高悪性度・転移がある場合などに検討します。ただし乳腺腫瘍での有効性のエビデンスは限られており、その子の状況をふまえて適応を慎重に判断します。お薬の選択・量は担当獣医師が決めます。

化学療法(抗がん剤治療)の総論を読む

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治療計画の考え方と予後

見通しは、切除した腫瘍の病理結果で大きく変わります。主な予後因子は次のとおりです(数値は集団の傾向で、個体差があります)。

  • 腫瘍の大きさ(小さいほど良好)・組織型・悪性度(グレード)
  • 脈管(リンパ管)への浸潤・所属リンパ節への転移
  • ステージ(広がり)
  • 炎症性乳癌(極めて予後不良)・猫であること

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予防・早期発見

  • 早い時期の避妊は、乳腺腫瘍のもっとも確実な予防策のひとつです(その子に合ったタイミングはご相談ください)。
  • ふだんのスキンシップで、乳腺の並びを指の腹でそっと触る習慣を。左右を比べて、しこり・腫れ・左右差に気づけます。
  • しこりを見つけたら、大きさをメモや写真で記録して受診を。

見つけたときの「これは何だろう」という不安に、まずは検査で答えを出すことから始めましょう。犬でも猫でも、早く見つけられるほど、その子とご家族が選べる選択肢は広がります。その子とご家族が幸せに過ごせることを目標に、方針を一緒に考えます。

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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

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Q&A

よくあるご質問

乳腺にしこりを見つけました。良性か悪性か、触っただけで分かりますか。
触っただけでは分かりません。乳腺腫瘍は、大きさや硬さ・動きやすさだけでは良性・悪性を区別できません。また、乳腺の腫瘍は組織のなかで性質にばらつきがあるため、針を刺す細胞診でも確定が難しいことが多く、最終的には切除して病理検査で調べるのが基本です。犬ではおよそ半分が良性ですが、猫では大半が悪性とされます。いずれにしても、見つけたら早めにご相談ください。小さいうちに対応できるほど、選べる手が広がります。
避妊をすると乳腺腫瘍になりにくいというのは本当ですか。もう発情がきていても意味はありますか。
本当です。とくに早い時期の避妊ほど予防効果が高いと報告されています。犬では初回発情前の避妊で生涯リスクが大きく下がるとされ、猫でも生後半年〜1歳までの避妊で発生率が大きく下がったという報告があります。一方で、発情を重ねた後や高齢になってからの避妊では、乳腺腫瘍そのものの予防効果は小さくなります。ただし避妊には子宮の病気の予防など別の意義もあります。すでに発情がきている場合の避妊の意味は、その子の年齢や状況によって変わりますので、ご相談ください。
しこりが複数あります。全部悪いものなのでしょうか。
複数同時にできること自体は犬ではよくあることで、それぞれ性質が異なる場合があります。良性と悪性が混在していることもあります。だからこそ、どのしこりがどういう性質かを見極め、切除する範囲を計画することが大切です。数や位置によっては、乳腺をまとめて切除したほうが手術の回数を減らせることもあります。その子に合った切除の範囲を、検査結果をふまえて一緒に決めていきます。
手術のときに、一緒に避妊もしたほうがよいですか。
状況によっては、同時の避妊が選択肢になります。腫瘍の摘出と同時に避妊を行うと、その後の新しい乳腺腫瘍の発生が減ったという報告があり、とくにホルモンに反応するタイプの腫瘍で意義があると考えられています。一方で、すでにある腫瘍そのものへの効果や、麻酔・手術の負担とのバランスも考える必要があります。その子の年齢・全身状態・腫瘍の性質をふまえて、同時に行うかどうかを一緒に判断します。
猫の乳腺腫瘍は、犬より怖いと聞きました。どう違うのですか。
猫では、乳腺腫瘍の大半(報告では8〜9割)が悪性で、進行も早い傾向があるため、犬より慎重で積極的な対応が必要です。とくに腫瘍の大きさが予後を強く左右し、小さいうちに見つけて広めに切除(多くは片側または両側の乳腺をまとめて切除)することがすすめられます。見た目のしこりが小さくても、すでに転移していることがあるのも猫の特徴です。猫でしこりに気づいたら、「小さいから様子見」ではなく、できるだけ早くご相談ください。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。