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SPLENIC TUMOR / HSA

犬の脾臓腫瘍・血管肉腫

良性のことも、悪性のこともある。しかも“崩れて出血”すると急変する——だから、正確さと備えが要ります。

脾臓のしこりは、健康診断で偶然見つかることもあれば、突然の内出血で緊急に見つかることもあります。やっかいなのは、良性か悪性かを、見た目や画像だけでは確定できないこと。そして悪性の代表である血管肉腫は、腫瘍が崩れて出血し、急に容体が悪くなることがある病気です。正確に見極めることと、いざというときに備えることの両方を大切にします。

  • 腫瘍科
  • 救急

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

とくに気をつけたい犬種・猫種

好発(かかりやすい傾向)が知られている犬種・猫種です。必ずかかるわけではありません。

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病気の概要

脾臓は、おなかの左側にある、血液をためたり古い血球を処理したりする臓器です。ここにできる「しこり(腫瘤)」は、この病気を理解するうえで、まず良性か悪性かを見た目では確定できないということを知っておく必要があります。

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血管肉腫という病気の“本質”

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好発 ― どんな子に多いか

  • 中〜高齢(およそ8〜10歳)の大型犬に多く発生します。
  • ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ジャーマン・シェパード、プードル、ボクサーなどでの発生が多いと報告されています。

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症状・気づきのサイン

脾臓腫瘍の現れ方には、大きく2つのパターンがあります。

急性 ― 内出血による急変

突然の元気消失・食欲不振・歯ぐきの蒼白・ふらつき・虚脱、おなかの張り。腫瘍が崩れておなかの中に出血して起こります。すぐの対応が必要なサインです。

無症状 ― 偶然の発見

健康診断や、別の理由での触診・画像検査で偶然見つかることも。この場合は、良性の可能性も相応にあります。

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診断・検査

STEP 1

腹部超音波・全身の評価

脾臓の腫瘤やおなかの中の出血(腹水)を確認します。あわせて血液検査で貧血や全身状態をみます。

STEP 2

転移・併発病変の評価

胸部の画像(必要に応じCT・提携施設をご紹介)で肺への転移を、心エコーで心臓(右心耳)の病変を確認します。出血していれば腹水の性状も調べます。

STEP 3

脾臓摘出と病理検査で確定

確定診断は、基本的に脾臓を摘出してから病理検査で行います。細胞診や画像だけでは良性・悪性・種類を確定できないためです。

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治療

脾臓摘出術(第一選択)

脾臓ごと切除する手術です。出血を止めることと、正体を確定することの2つの目的を同時に果たします。だからこそ、生検ではなく全摘が基本になります。

緊急の安定化

内出血で状態が悪いときは、まず輸血・点滴で全身を安定させ、必要に応じて緊急の止血手術を検討します。

補助化学療法(血管肉腫のとき)

血管肉腫と確定した場合、見えない転移を抑えるため、ドキソルビシンを軸とした化学療法を組み合わせるのが標準的です。生存期間の延長が報告されています。

緩和ケア(穏やかに過ごす選択)

全身状態・転移の程度・ご家族の意向により、手術や化学療法を行わず、苦痛をやわらげることを優先する選択も、尊重すべき選択肢です。

化学療法(抗がん剤治療)の総論を読む

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治療計画の考え方と予後

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猫の脾臓腫瘍について

猫の脾臓腫瘍は、犬とは中身が異なります。多いのは血管肉腫ではなく、肥満細胞腫・リンパ腫です。とくに猫の脾臓の肥満細胞腫は、広がりがあっても、脾臓の摘出によって比較的長く良い状態で過ごせることがあり、犬の脾臓血管肉腫ほど見通しが厳しくない場合があります。猫でも確定には病理検査が必要です。猫の脾臓腫瘤の背景として多い病気は、それぞれ専用ページで解説しています(肥満細胞腫についてリンパ腫について)。

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ご家庭でのケアと、当院の考え方

脾臓の病気で、いちばん知っておいていただきたいのは、「突然ぐったりして歯ぐきが白い」は緊急のサインだということです。様子を見ずに、すぐにご連絡ください。一方、健診で偶然見つかった脾臓のしこりは、慌てず全身を評価し、選択肢を整理して考える時間があります。

良性であってほしいと願いながら、悪性の可能性にも備える——この難しい時間を、ご家族と一緒に歩みます。どんな結果であっても、その子とご家族が穏やかに、幸せに過ごせることを目標に、選択肢を一緒に考えます。

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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

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Q&A

よくあるご質問

健康診断で脾臓にしこりが見つかりました。がんと考えたほうがよいですか。
脾臓のしこり(腫瘤)は、必ずしもがんとは限りません。良性の血のかたまり(血腫)や結節性過形成といった、腫瘍ではない病変もかなりの割合を占めます。ただし、見た目や超音波・細胞診だけでは良性・悪性を確定できないのが、この病気の難しいところです。とくに無症状で偶然見つかった場合は良性の可能性も相応にありますが、確定には基本的に脾臓を摘出して病理検査を行う必要があります。まずは全身を評価し、リスクと選択肢を整理して、一緒に方針を考えましょう。
急にぐったりして歯ぐきが白いです。脾臓の腫瘍と関係ありますか。
緊急の可能性があります。脾臓の血管肉腫などでは、腫瘍が崩れておなかの中に出血し、突然の元気消失・歯ぐきの蒼白・ふらつき・虚脱として現れることがあります。いったん持ち直したように見えても、再び出血することがあり油断できません。これは一刻を争う状態のことがあるため、様子を見ずにすぐご連絡・ご来院ください。まず輸血や点滴で全身状態を安定させ、必要に応じて緊急の対応を検討します。
「開けてみないと良性か悪性か分からない」と言われました。先に検査で確定できないのですか。
残念ながら、脾臓腫瘤は事前に良性・悪性を確定するのが難しい病気です。腫瘍は出血や壊死を伴い、針で細胞を採っても診断がつきにくく、また出血のリスクもあるため、針生検は慎重に判断されます。そのため、確定診断は基本的に「脾臓を摘出してから病理検査で行う」という順序になります。つまり手術には、出血を止める目的と、正体を確定する目的の両方があります。事前に予後を断定できないもどかしさも含めて、正直にお伝えし、一緒に判断していきます。
血管肉腫だった場合、手術のあとに抗がん剤は必要ですか。
血管肉腫と確定した場合、脾臓の摘出だけでは、見えない転移を抑えきれないことが多いため、術後にドキソルビシンを軸とした化学療法を組み合わせることが標準的に検討されます。報告では、化学療法を加えることで生存期間がやや延びるとされますが、その延長幅は限られており、根治が難しい厳しい病気であることも事実です。だからこそ、抗がん剤を行う・行わないのどちらの選択も尊重し、その子とご家族にとって納得のいく道を一緒に選びます。お薬の内容・量は担当獣医師が判断します。
猫にも脾臓の腫瘍はありますか。犬の血管肉腫と同じですか。
猫にも脾臓の腫瘍はありますが、犬とは中身が違います。猫で多いのは血管肉腫ではなく、肥満細胞腫やリンパ腫です。とくに猫の脾臓の肥満細胞腫は、たとえ広がりがあっても、脾臓の摘出によって比較的長く良い状態で過ごせることがあり、犬の脾臓血管肉腫ほど見通しが厳しくない場合があります。猫でも確定には病理検査が必要です。脾臓の腫瘤が見つかったら、その子に合った評価と方針をご提案します。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。