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LYMPHOMA

犬・猫のリンパ腫(悪性リンパ腫)

もっとも化学療法が効きやすいがんのひとつ。だからこそ、最初の見極めが将来を左右します。

リンパ腫は、免疫細胞であるリンパ球が腫瘍化する血液のがんで、犬でもっとも多い造血系腫瘍のひとつです。全身に広がるため手術だけでは対応できませんが、その一方で「もっとも化学療法が効きやすいがん」でもあります。何型か、B細胞かT細胞か——最初に正しく見極めることが、その子に合った治療と、これからの時間の質を大きく左右します。

  • 腫瘍科
  • 化学療法

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

とくに気をつけたい犬種・猫種

好発(かかりやすい傾向)が知られている犬種・猫種です。必ずかかるわけではありません。

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病気の概要

リンパ腫(悪性リンパ腫)は、免疫を担う細胞であるリンパ球ががん化する病気です。リンパ球は全身のリンパ節・脾臓・骨髄・消化管などに広く存在するため、リンパ腫は基本的に全身の病気として扱います。犬ではもっとも多い造血系(血液系)の腫瘍のひとつです。

全身に広がるため手術だけでは治せませんが、多くのタイプが化学療法によく反応するのが大きな特徴です。「がん=手の施しようがない」ではありません。まずは何型のリンパ腫かを正しく見極め、その子に合った方針を組み立てます。

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リンパ腫のタイプ ― 「どこにできたか」で分ける

同じリンパ腫でも、発生する場所によって現れ方が違います。犬では多中心型が大半を占めます。

多中心型(もっとも多い)

Multicentric / 犬の約80〜85%

全身の体表リンパ節が痛みなく左右対称に腫れるタイプ。あご下・肩の前・ひざの裏などで気づかれます。犬でもっとも多く、化学療法の主な対象です。

消化器型

Alimentary / 猫で最多

胃や腸に発生し、嘔吐・下痢・体重減少・食欲不振が続きます。猫でもっとも多いタイプで、緩やかに進む低悪性度と、急に進む高悪性度に分かれます。

縦隔型

Mediastinal / 多くがT細胞

胸の前方(縦隔)のリンパ組織が腫れるタイプ。呼吸が苦しそう、胸に水がたまるなどの症状が出ます。高カルシウム血症を伴うことがあります。

皮膚型・そのほかの節外性

Cutaneous / Extranodal

皮膚のしこり・赤み・フケ、口や粘膜の病変として現れるタイプ。ほかに腎臓・眼・神経など、さまざまな臓器に発生することがあります。

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好発・原因

  • :中〜高齢に多く発生します。ボクサー、ロットワイラー、ゴールデン・レトリーバーなどで発生が多いとの報告がありますが、どの犬種でも起こりえます。はっきりした単一の原因は分かっていません。
  • :かつては猫白血病ウイルス(FeLV)に関連する若齢の縦隔型・多中心型が多くみられましたが、ワクチンの普及と感染の減少により、現在は高齢(中央値10歳前後)・FeLV陰性の消化器型が中心になっています。

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症状・気づきのサイン

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診断・検査

診断のゴールは、「リンパ腫であること」の確定と、「型・悪性度・免疫表現型・広がり(ステージ)」の把握です。ここが治療方針の土台になります。

STEP 1

細胞診(針生検)

腫れたリンパ節などに細い針を刺して細胞を採り、顕微鏡で調べます。多くの場合、麻酔なしで当日におおよその見当がつきます。

STEP 2

組織生検・病理検査

確定診断と、高悪性度・低悪性度の見極めに用います。形態のサブタイプを詳しく分類できます。

STEP 3

免疫表現型・クローナリティ検査

B細胞(CD79a)かT細胞(CD3)かを、免疫染色やフローサイトメトリーで判定。PARR(遺伝子検査)で腫瘍性の裏づけをとります。

STEP 4

全身評価・ステージング

血液検査(カルシウム値を含む)、画像検査(X線・超音波)、必要に応じ骨髄検査で、どこまで広がっているか(病期)を調べます。

臨床ステージ(WHO分類)

広がりの程度を、以下のステージとサブステージで整理します。

ステージ広がり
I単一のリンパ節・臓器のみ
II領域(一定範囲)のリンパ節
III全身のリンパ節が腫大
IV上記に加え、肝臓・脾臓に浸潤
V血液・骨髄・その他の臓器にも浸潤
サブステージ a / ba=全身症状なし / b=全身症状あり(発熱・著しい体重減少・高カルシウム血症など。予後はやや不良)

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治療

リンパ腫は全身の病気のため、化学療法(抗がん剤治療)が治療の主役です。手術は診断のための生検や、一部の限局した病変で補助的に用います。抗がん剤の目的・副作用・ご家庭での注意など、治療の全体像は化学療法のページで詳しく解説しています。

化学療法(抗がん剤治療)の総論を読む

CHOP(多剤併用)― 犬の多中心型の標準

UW-Madison プロトコル

作用の異なる複数の薬(シクロホスファミド・ドキソルビシン・ビンクリスチン・プレドニゾロン)を組み合わせ、順番に投与します。報告では高率に寛解が得られ、多くはおよそ19〜25週で一区切りとし、以後は再評価に移ります。

COP / 単剤ドキソルビシン

CHOPからドキソルビシンを除いたCOPや、単剤での治療は、心臓への負担・費用・通院回数を抑えたい場合の選択肢です。奏効はCHOPにやや劣る傾向があります。

ステロイド単独(緩和的)

プレドニゾロン単独でも一時的に症状がやわらぎますが、効果の持続は短め(多くは1〜2か月程度)です。積極的な化学療法を選ばない場合の、QOL維持の選択肢になります。

レスキュー療法・放射線・新しい薬

再発時には別の薬に切り替えるレスキュー療法を用います。局所には放射線が有効なことも。近年は犬のリンパ腫にラブカホサジンなどの新しい薬も承認され、選択肢が広がっています。

CHOP療法(多剤併用化学療法)を詳しく読む

07

治療計画の考え方

  1. ステップ1寛解導入

    まず腫瘍を一気に減らし、症状のない「寛解」状態を目指します。CHOPでは導入期に週1回前後の通院で薬を順番に投与します。

  2. ステップ2投与ごとの安全確認(モニタリング)

    各投与の前に血液検査(CBC)で白血球(好中球)の数を確認し、下がっていれば投与を延期・減量します。副作用の有無もそのつど確認します。

  3. ステップ3維持・経過観察へ

    一連のプロトコルを終えたら、投薬を止めて定期的な再評価に移ります。再発がないかを診察・血液検査で見守ります。

  4. ステップ4再発時のレスキュー

    再発した場合は、別の薬の組み合わせ(レスキュー療法)で再び寛解を目指します。その子の状態とご家族の希望に合わせて選びます。

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予後 ― 見通しを左右するもの

リンパ腫の見通しは、いくつかの要素で変わります。数値は集団での傾向であり、その子ごとに幅があります。

  • 免疫表現型:一般にB細胞型のほうがT細胞型より治療によく反応し、寛解も長い傾向。
  • サブステージ:全身症状のある b は、ない a より予後がやや不良。
  • 高カルシウム血症:しばしばT細胞型に伴い、予後不良の一因になります。
  • タイプ:緩徐進行型(indolent)は、飲み薬中心で長く管理できることがあります。

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猫のリンパ腫について

猫では消化器型が中心で、悪性度によって治療と見通しが分かれます。

  • 低悪性度(小細胞性)の消化器型:飲み薬(クロラムブシル+プレドニゾロン)を自宅で続ける治療が中心。緩やかに進み、報告では8〜9割が反応し、1.5〜2年、ときに数年の良好な経過が得られます。
  • 高悪性度(リンパ芽球性):急に進むため、多剤併用の化学療法で対応します。反応すれば生活の質を保てますが、低悪性度より見通しは厳しめです。
  • FeLV陽性は予後を悪くする要因のひとつです。猫では感染の有無の確認も大切にします。

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ご家庭でのケアと、当院の考え方

リンパ腫の治療は、長い付き合いになります。ご家庭でいちばんの観察者はご家族です。リンパ節の腫れ(触れる場所は触って確認)・食欲・元気・便の様子を記録していただけると、再発や副作用の早期発見にとても役立ちます。抗がん剤治療中は、投与後しばらく感染に弱くなる時期があるため、元気消失・食欲不振・発熱・下痢がみられたら早めにご連絡ください。

「がん」と聞くと、その日にすべてをあきらめたくなるかもしれません。でもリンパ腫は、正しく見極めれば、その子との時間を大切に重ねていける病気です。積極的に治療する道も、穏やかに過ごすことを選ぶ道も、どちらも尊重します。年齢・費用・全身状態——どんな壁があっても、その子に何ができるかを、ご家族と一緒にもう一度考えます。その子とご家族が幸せに過ごせることを目標に、選択肢を一緒に探します。

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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

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Q&A

よくあるご質問

リンパ節が腫れているだけで、元気も食欲もあります。急いで受診すべきですか。
はい、早めのご相談をおすすめします。リンパ腫は、痛みもなく元気なまま、体表のリンパ節(あご・肩の前・ひざの裏など)が左右対称に腫れてくるのが典型的な現れ方です。「元気だから大丈夫」と様子を見ているうちに進行することがあります。腫れが良性の反応性のものか、リンパ腫かは、針を刺して細胞を調べる細胞診で多くの場合その日のうちにおおよその見当がつきます。気づいたら、まずお早めにご相談ください。
診断の前に、ステロイドを飲ませてはいけないと聞きました。本当ですか。
診断がつく前の自己判断でのステロイド投与は避けてください。ステロイドはリンパ腫の細胞を一時的に減らすため、その後の細胞診や病理検査で正しい診断がつきにくくなります。加えて、化学療法を始める前にステロイドを先に使うと、腫瘍が薬に対する抵抗性を身につけ、その後の治療の効きや寛解の持続が悪くなる可能性が指摘されています。他院で処方を受けている場合も含め、リンパ腫が疑われる段階では必ず担当獣医師にご相談ください。
抗がん剤治療は、副作用でつらい思いをさせてしまいませんか。
動物の化学療法は「生活の質を保つこと」を最優先に設計されており、人の治療ほど強い副作用は出にくいとされています。脱毛もほとんどなく、副作用が出ても多くは食欲低下・軽い嘔吐や下痢などで、支持療法で管理できる範囲におさまることが多いです。ただし白血球(好中球)が下がる時期に感染しやすくなるなど、注意すべき点はあります。副作用が出たときの対処もあらかじめお伝えし、つらさが強いときは治療の量や間隔を調整します。詳しくは化学療法のページもご覧ください。
治療をすると、どのくらい生きられますか。完治はしますか。
型やB細胞・T細胞の別、全身状態によって大きく異なるため、一概には言えません。犬の多中心型リンパ腫では、CHOPと呼ばれる多剤併用化学療法で報告では7〜9割が寛解(症状が消えた状態)に入り、生存期間はB細胞型で1年前後、T細胞型ではそれより短い傾向と報告されています。多くは「完治」ではなく「良い状態を長く保つ」ことが目標になりますが、緩徐に進むタイプでは飲み薬で数年単位の管理ができることもあります。数字はあくまで集団の目安で、その子ごとに幅があります。
抗がん剤を使わず、緩和的な治療だけを選ぶことはできますか。
できます。積極的な化学療法を行わず、ステロイドなどで症状をやわらげながら穏やかに過ごすことを選ばれるご家族もいらっしゃいます。その選択も尊重し、最後までサポートします。大切なのは、それぞれの選択肢でどんな経過が予想されるかを正直にお伝えしたうえで、そのご家族とその子にとって納得のいく方針を一緒に決めることです。費用や通院の負担も含め、遠慮なくご相談ください。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。