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LUNG & THORACIC TUMOR

犬・猫の肺・胸腔の腫瘍

咳の陰に隠れることも、健診で偶然見つかることも。だから「単発か・原発か」を見極めます。

肺や胸のなかにできる腫瘍は、慢性の咳や息苦しさで気づかれることもあれば、まったく症状がなく健康診断で偶然見つかることもあります。大切なのは、それが「もともと肺から出たもの(原発性)」か「ほかのがんが転移したもの(転移性)」か、そして「ひとつだけか」を見極めること。それによって、手術で大きく予後を変えられる場合と、全身をみる必要がある場合に分かれます。

  • 腫瘍科
  • 呼吸器

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

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病気の概要

肺や胸のなか(胸腔)にできる腫瘍を理解するうえで、まず大切な区別があります。それは、「もともと肺から出た腫瘍(原発性)」なのか、「ほかの臓器のがんが肺に転移したもの(転移性)」なのかということです。

転移性肺腫瘍(こちらが多い)

肺は血液が豊富に流れるため、ほかの臓器のがん細胞が届きやすい臓器です。犬猫では原発性より転移性のほうが多く、乳腺腫瘍・骨肉腫・血管肉腫・口腔メラノーマなどが元になります。全身をみた治療が中心になります。

原発性肺腫瘍(まれ・多くは腺癌)

肺そのものから発生する腫瘍で、比較的まれです。多くは腺癌で、悪性のことがほとんど。ただしひとつだけ(孤立性)なら手術で切除でき、予後を大きく変えられることがあります。

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好発 ― どんな子に多いか

  • 高齢が中心です(犬は10〜12歳、猫は12歳前後で見つかることが多いとされます)。
  • 家庭内の煙(受動喫煙)や環境中の汚染物質との関連が指摘されることがあります。

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症状・気づきのサイン

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胸腔の、そのほかの腫瘍

肺以外にも、胸のなかにはさまざまな腫瘍ができます。

腫瘍特徴
胸腺腫胸の前方(前縦隔)に発生。重症筋無力症(筋力低下・巨大食道・飲み込み障害)や高カルシウム血症を合併することがある。状態により外科±放射線
中皮腫胸膜・心膜から発生するまれな腫瘍。胸水がくり返したまり、呼吸困難で気づかれる
心臓基部腫瘍大血管の付け根の腫瘍。心臓のまわりに水(心嚢液)がたまり、循環に影響することがある

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診断・検査

STEP 1

胸部X線(3方向)

左右の向きを変えて撮影します(片側だけだと小さな病変を見逃すため)。腫瘍の数・位置・胸水の有無をみます。

STEP 2

CT(提携施設をご紹介)

X線より小さな病変や多発、リンパ節、切除の計画評価に役立ちます。転移では小さな結節がX線に写らないことがあり、CTが有効です。

STEP 3

細胞診・生検、胸水の検査

超音波を使って針で細胞を採る、胸水があればその細胞を調べる、といった方法で腫瘍の種類を見極めます。必要に応じて胸腔鏡・開胸での生検も検討します。

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治療

孤立性の原発性肺腫瘍 ― 外科切除(肺葉切除)

ひとつだけの原発性肺腫瘍では、その肺葉ごと切除する手術が第一選択で、予後を大きく左右します。多くは開胸で行い、術後は胸のなかの空気や水を管理します。

化学療法(補助的)

リンパ節転移がある場合、多発している場合、転移性の場合などに、全身への治療として組み合わせます。

胸腺腫 ― 外科±放射線

状態によっては手術で切除でき、放射線が選択肢になることもあります。合併する重症筋無力症などの管理も並行して行います。

緩和ケア(呼吸を楽にする)

たまった胸水・心嚢液を抜いて呼吸を助ける、酸素を使うなど、その場の苦しさをやわらげるケアを大切にします。

化学療法(抗がん剤治療)の総論を読む

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治療計画の考え方と予後

見通しは、原発か転移か・リンパ節転移の有無・腫瘍の大きさ・分化度・単発か多発かによって変わります(数値は報告による傾向で、個体差があります)。

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ご家庭でのケアと、当院の考え方

肺・胸腔の腫瘍は、「咳が続く」「なんとなく元気がない」といった、見過ごされやすいサインから始まることがあります。だからこそ、シニア期の健康診断での胸部評価には意味があります。息づかいが荒い・落ち着かないといった様子は、呼吸が苦しいサインのことがあり、早めの対応が必要です。

無症状で見つかった原発性肺腫瘍は、むしろ手術で大きく予後を変えられるチャンスになり得ます。慌てず、しかし先延ばしにせず、その影の正体を一歩ずつ確かめていきましょう。その子とご家族が幸せに過ごせることを目標に、選択肢を一緒に考えます。

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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

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Q&A

よくあるご質問

健康診断のレントゲンで、肺に影があると言われました。がんでしょうか。
肺の影には、腫瘍以外にも炎症や古い傷あとなど、さまざまな原因があります。腫瘍だとしても、もともと肺から出たもの(原発性)か、ほかの臓器のがんが転移したもの(転移性)かで、意味も対応も大きく変わります。犬猫では転移性のほうが多いとされます。まずは、複数方向からのレントゲンや、より詳しいCT検査(提携施設をご紹介)、必要に応じて針を刺して細胞を調べる検査で、その影の正体を見極めます。慌てず、しかし先延ばしにせず、一歩ずつ確かめていきましょう。
咳もなく元気なのに、肺に腫瘍が見つかりました。様子を見てはいけませんか。
症状がないこと自体は珍しくありません。犬の原発性肺腫瘍では、報告で4分の1から3分の1ほどが無症状で偶然見つかるとされています。ただし「症状がない=進行していない」ではありません。とくに、ひとつだけの原発性肺腫瘍は、症状が出る前の小さいうちに手術で切除できると予後が良い傾向があります。つまり、無症状で見つかったことはむしろチャンスになり得ます。様子見と精密検査のどちらがよいかは、影の大きさや位置によりますので、ご相談ください。
猫が足を痛がっていたのに、検査で肺の腫瘍が見つかったのはなぜですか。
猫に特徴的な「肺-指症候群」の可能性があります。これは、肺にできた腫瘍が指先(趾)に転移し、指の腫れや爪の異常、跛行として先に気づかれるという、猫特有の現れ方です。足の症状で来院して、胸の検査ではじめて肺腫瘍が見つかることがあります。残念ながらこの状態は進行していることが多く予後は厳しいのですが、複数の指に異常がある猫では、肺も含めて調べる意味があります。気になる指の症状があれば、あわせてご相談ください。
胸腺腫という腫瘍で、飲み込みや力の入り方がおかしいと言われました。関係ありますか。
関係していることがあります。胸腺腫は胸の前方(前縦隔)にできる腫瘍で、体の免疫の異常を介して「重症筋無力症」という筋力が落ちる病気を合併することがあります。これにより、食道が広がって飲み込みにくくなったり(巨大食道)、疲れやすくなったりします。飲み込みの障害を伴う場合は慎重な管理が必要です。胸腺腫は、状態によっては手術で切除でき、放射線が選択肢になることもあります。まずは正確な診断と全身評価から始めます。
胸に水がたまって苦しそうです。すぐにできることはありますか。
はい、まず呼吸を楽にすることを最優先にします。胸腔の腫瘍(胸腺腫・中皮腫・リンパ腫・心臓基部の腫瘍など)では、胸に水(胸水)や心臓のまわりに水(心嚢液)がたまり、急に呼吸が苦しくなることがあります。たまった水を抜いて呼吸を助けること、酸素を使うことなどで、その場の苦しさをやわらげられます。抜いた水は、腫瘍の種類を調べる手がかりにもなります。息づかいが荒い・落ち着かないといった様子は緊急のサインのことがあるため、早めにご連絡ください。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。