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病気の概要
外耳炎(がいじえん、Otitis Externa、「外耳道炎」とも)は、耳の穴から鼓膜までの通り道である外耳道(がいじどう)に炎症が起こる病気です。犬・猫の耳のトラブルでもっとも多く、動物病院を受診する理由の上位に入ります。
犬の外耳道は、入り口からほぼ垂直に下る垂直耳道と、そこで折れ曲がって鼓膜へ向かう水平耳道からなる、L字状の構造をしています。奥は外からは見えず、点耳薬や耳あかも届きにくいため、慢性化した外耳炎では、後述のビデオオトスコープ(耳の内視鏡)で奥までしっかり確認・洗浄することが大切になります。
耳をかゆがる、頭をよく振る、耳あかが増える、においがする——こうしたサインで気づかれます。多くは点耳薬でいったん落ち着きますが、しばらくするとまた再発するというお悩みが少なくありません。
この病気で大切なのは、「なぜ、その耳に炎症が起きているのか」を見極めることです。外耳炎は、それ自体がひとつの独立した病気というより、さまざまな背景が重なって現れる「結果」であることが多いからです。目の前の耳の炎症を抑えるだけでなく、その奥にある原因まで診ることを大切にしています。
4要因
くり返す外耳炎を読み解くPSPP分類(主因・副因・素因・永続化要因)
7.3%
1年間に外耳炎と診断された犬の割合(英国の大規模調査)
約1.8倍
垂れ耳の犬が外耳炎になりやすさ(立ち耳との比較)
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症状・サイン
外耳道の炎症は、かゆみ・不快感・においとして現れます。次のようなサインがあれば、外耳炎のはじまりかもしれません。
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なぜ、くり返すのか ― 「PSPP」で背景を読み解く
くり返す外耳炎を理解するうえで、獣医皮膚科で広く使われている考え方が PSPP分類 です。外耳炎に関わる要因を、次の4つの役割に分けて整理します。「感染を抑える治療」だけでは再発する理由が、これを見るとよく分かります。
① 主因(Primary|プライマリー)
炎症を起こす直接の引き金
その耳に炎症を起こしている大もとの原因です。アレルギー(アトピー性皮膚炎・食物アレルギー)、耳ダニなどの外部寄生虫、植物の芒(のぎ)などの異物、角化異常、ホルモンの病気(内分泌疾患)などが含まれます。ここを見つけて管理しないと、いくら感染を抑えても再発します。
② 副因(Secondary|セカンダリー)
炎症の結果、二次的に増える感染
炎症で環境が変わった耳道で二次的に増える、細菌やマラセチア(酵母様真菌)の感染です。かゆみ・におい・耳垢を大きく上乗せします(マラセチア皮膚炎・外耳炎もあわせてご覧ください)。点耳薬が主に狙うのはここですが、副因だけを抑えても主因が残っていれば元に戻ります。
③ 素因(Predisposing|プリディスポージング)
もともと「なりやすい」体質・環境
外耳炎そのものの原因ではないものの、発症しやすくする条件です。垂れ耳・耳道が狭い・耳の中の毛が多いといった構造、湿気(水浴び・シャンプー後の乾燥不足)、過度な耳掃除などが当てはまります。垂れ耳の犬は立ち耳より外耳炎になりやすいと報告されています。
④ 永続化要因(Perpetuating|パーペチュエイティング)
治りにくくする、耳道の変化
炎症がくり返すうちに生じる、耳道自体の変化です。耳道の皮膚が厚くなる(肥厚)・狭くなる(狭窄)・石灰化する、バイオフィルム(細菌の膜)、中耳炎への波及などです。これがあると通常の治療が効きにくくなり、難治化の主な理由になります。
よくある悪循環
①主因が残ったまま、②感染だけを治療
点耳薬で感染(副因)を抑える → いったん改善 → 薬をやめる → 主因・素因が残っているため再発、をくり返す。
放置すると
④永続化要因が加わり、難治化
再発をくり返すうちに、耳道の肥厚・狭窄・石灰化や中耳炎が生じ、通常の治療が効きにくくなる。
当院のめざす管理
4要因を見渡し、背景から立て直す
感染を抑えつつ、主因(アレルギー等)を管理し、素因(湿気・構造)に手を打つ。再発の間隔を延ばし、耳道の変化が進む前に食い止める。
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診断 ― 耳の中を「見て・調べて」確かめる
外耳炎の診断では、炎症の程度だけでなく、背景にある原因(主因・素因)と、二次感染の種類(副因)を見極めることを目指します。その子の負担が少ない検査から進めます。
問診・視診
いつから・片耳か両耳か・季節性はあるか・生活環境・これまでの治療歴を詳しく伺います。皮膚全体の状態もあわせて確認します(背景にアレルギーが隠れていることが多いためです)。
耳鏡(耳の中の観察)
耳鏡で外耳道や鼓膜の状態を確認します。赤み・腫れ・耳垢の性状、そして鼓膜が保たれているかを評価します。鼓膜の状態は、使える点耳薬や洗浄の可否を左右する大切な情報です。
耳垢の細胞診(顕微鏡検査)
診断の中心です。耳垢を採ってスライドガラスで染色し、細菌・マラセチア・耳ダニのどれが、どれくらい増えているかを顕微鏡で確認します。原因菌に合わせて薬を選ぶための、欠かせない検査です。麻酔なしでその場で行えます。
ビデオオトスコープ・画像検査(慢性・難治例)
くり返す・治りにくい場合は、ビデオオトスコープ(耳の内視鏡)で耳道の奥や鼓膜まで拡大した鮮明な画像で評価します。中耳炎が疑われるときは、CTなどの画像検査で奥の状態を確かめることもあります。
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治療 ― 「感染を抑える・原因を管理する・耳道を立て直す」
外耳炎の治療は、ひとつの薬に頼らず、PSPPの4要因それぞれに手を打つことが基本です。目の前の炎症を鎮めながら、背景の原因まで管理して、再発しにくい耳をつくることを目指します。
耳道洗浄で、たまった汚れを取り除く
耳垢・膿・古い薬がたまっていると、点耳薬が届かず効きにくくなります。その子に合った洗浄液で、まず耳道をきれいにします。汚れが多い・痛みが強いケースでは、鎮静下でていねいに洗うこともあります。
点耳・内服で、感染と炎症を抑える
細胞診の結果に合わせて、抗菌薬・抗真菌薬・抗炎症薬(ステロイド)を含む点耳薬を選びます。炎症が強い・範囲が広いときは内服を併用することもあります。薬の種類・量は耳や鼓膜の状態をふまえて決めます。
主因を管理する(ここが再発予防の要)
背景にアレルギー(アトピー性皮膚炎・食物アレルギー)があれば、その管理を並行して行います。耳ダニなら駆虫、異物なら除去、ホルモンの病気ならその治療——原因に手を打つことが、くり返しを止める鍵です。
素因・永続化要因に手を打つ
耳の中の湿気を減らす・過度な耳掃除をやめるといった生活の見直しに加え、耳道が厚く狭くなっている場合は、それを見越した治療計画を立てます。中耳炎や耳道閉塞まで進んだ重度例では、外科という選択肢も検討します。
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ビデオオトスコープによる耳科診療(当院の強み)
くり返す外耳炎や中耳炎は、耳道の奥や鼓膜の状態を「しっかり見て、奥まで処置できるか」が、治療の成否を大きく左右します。当院では、通常の耳鏡では届かない領域に対応するため、ビデオオトスコープ(耳の内視鏡)を備えています。
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猫の外耳炎で、とくに気をつけたいこと
猫の外耳炎は、犬とは背景が少し異なります。次のような原因が比較的多くみられます。
耳ダニ(ミミヒゼンダニ)
猫の外耳炎で非常に多い原因です。黒くて乾いた、コーヒーかすのような耳垢と強いかゆみが特徴で、感染力が強く、同居の犬・猫にうつることもあります。とくに子猫や保護猫で多くみられます。駆虫薬で治療します。
鼻咽頭ポリープ・耳道のポリープ
若い猫では、中耳や耳道にできる良性のポリープ(炎症性ポリープ)が外耳炎・中耳炎の原因になることがあります。片側だけの慢性の耳の症状や、頭を傾ける・鼻の症状を伴うときに疑い、画像検査やビデオオトスコープで確かめます。
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ご家庭でのケアと注意
外耳炎の管理は、診察室での治療と、ご家庭での日々のケアの両輪で進みます。誤ったケアはかえって悪化させることがあるため、次の点にご注意ください。
くり返す外耳炎は、その子にとってもご家族にとっても、つらく根気のいるお悩みです。「体質だから」「また薬をもらえばいい」とあきらめる前に、なぜくり返すのかを一度きちんと確かめてみませんか。原因までさかのぼって管理することで、再発の間隔を延ばし、耳の不快感の少ない毎日に近づけていきます。その子とご家族が幸せに過ごせることを目標に、無理なく続けられる管理を一緒に考えます。皮膚科・耳科の診療内容については、あわせてこちらもご覧ください。
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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)
より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。
- 犬の耳の感染症・外耳炎/MSD獣医マニュアル・飼い主向け(英語) — 症状・原因・治療・家庭でのケアの注意を、飼い主向けにやさしく解説。
- 動物の外耳炎/MSD獣医マニュアル・獣医師向け(英語) — 主因・副因・素因・永続化要因という考え方や、診断・治療を獣医師視点で詳説。
- 犬の外耳炎の頻度と発症しやすい要因(英国の大規模疫学研究・2021年・英語) — 垂れ耳・犬種などの素因を、一次診療のデータから明らかにした査読論文(オープンアクセス)。

