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古谷動物病院古谷動物病院FURUYA ANIMAL CLINICご予約

MALASSEZIA DERMATITIS

マラセチア皮膚炎・外耳炎

「感染」というより「増えすぎ」。だから、なぜ増えたのかを一緒に探します。

脂っぽくてベタつく、赤くてかゆい、そして独特の甘酸っぱいにおい——それはマラセチアという酵母の増えすぎかもしれません。マラセチアはもともと皮膚や耳にいる常在菌で、多くはアレルギーや脂漏など「増えやすくなった背景」があって過剰になります。だからこそ、目の前のかゆみを抑えるだけでなく、なぜ増えたのかまでさかのぼることを大切にしています。

  • 皮膚科
  • 耳科

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

とくに気をつけたい犬種・猫種

好発(かかりやすい傾向)が知られている犬種・猫種です。必ずかかるわけではありません。

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病気の概要

マラセチア皮膚炎(マラセチアひふえん、Malassezia dermatitis)は、皮膚や外耳道にもともと棲んでいる酵母様真菌(こうぼようしんきん)マラセチア(Malassezia pachydermatis)が過剰に増えて、赤み・かゆみ・脂っぽさ・独特のにおいを起こす皮膚炎です。同じ酵母が耳の中で増えれば、犬でとても多いマラセチア外耳炎になります。

大切なのは、これが外から菌をもらう「感染症」とは少し違うということです。マラセチアは健康な犬・猫の皮膚や耳にもふつうにいる常在菌で、ふだんは悪さをしません。何らかのきっかけで皮膚の環境がくずれ、バランスが酵母の増えやすい方へ傾いたときに、はじめて増えすぎて症状を起こします。

だからこの病気では、目の前の酵母を減らすことと同じくらい、「なぜ増えたのか」という背景を見つけて管理することが重要になります。当院では、かゆみを早くやわらげながら、その奥にある原因までさかのぼって診ることを大切にしています。

02

何が起きているのか ― 常在酵母が「増えすぎる」しくみ

マラセチアは皮脂(皮膚の脂)を好む酵母で、皮膚や耳の脂っぽい環境で増えます。健康なときは、皮膚のバリアと免疫がその数を一定に保っています。ところが、アレルギーや脂漏、ホルモンの異常、湿気などでこのバランスがくずれると、酵母が増え、増えた酵母がさらに炎症を起こす——という悪循環が始まります。

土台

皮膚環境のかたより(背景の存在)

アレルギー・脂漏・内分泌の病気・皮膚のしわ・高温多湿などで、皮膚が脂っぽく・湿った、酵母の増えやすい状態にかたよる。

増殖

マラセチアの過剰増殖

常在していた酵母が一気に増える。酵母がつくる物質や酵素が皮膚を刺激し、炎症とかゆみを引き起こす。

症状

赤み・かゆみ・脂漏・におい

皮膚が赤くベタつき、独特の甘酸っぱいにおいが出る。強いかゆみで、なめる・掻く・こすりつける行動が増える。

悪循環

掻き壊し → さらに増殖

掻くことで皮膚のバリアがこわれ、湿って脂っぽくなり、酵母がもっと増える。かゆみと炎症が上乗せされていく。

慢性化

色素沈着・苔癬化(ゴワゴワ)

くり返すうちに皮膚が黒ずみ、厚くゾウの皮のようにゴワゴワしてくる(苔癬化)。においも強くなりやすい。

03

症状・サイン

マラセチアが増えると、次のような特徴的なサインが現れます。とくに脂っぽさ・独特のにおい・強いかゆみの3つがそろうときは、マラセチアの関与を疑います。

04

好発 ― 出やすい場所・犬種・背景の病気

出やすい場所

マラセチアは脂が多く・湿気がこもりやすい皮膚のしわの部分で増えやすいのが特徴です。

  • 口のまわり・あご
  • 耳(外耳道)・耳の付け根
  • 指の間(あしを気にしてなめる子が多い)
  • 脇の下・内股・そけい部
  • 首の下(腹側)・胸
  • 皮膚のしわ(垂れ耳の内側、口唇のしわ、肥満によるしわなど)

好発犬種

体質や皮膚の性質から、特定の犬種で多くみられます。もちろん、どの犬・猫でも起こり得ます。

  • ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア(脂漏を伴いやすく、代表的な好発犬種)
  • バセット・ハウンド(皮膚のしわ・垂れ耳で増えやすい)
  • シー・ズー・フレンチブルドッグ・パグ(皮膚のしわ・脂漏傾向)
  • コッカー・スパニエル・柴犬・ダックスフンドなど
  • 猫では犬ほど多くありませんが、脂漏や基礎疾患のある子でみられることがあります

05

診断 ― 「増えているか」を細胞診で確かめる

マラセチア皮膚炎の診断は、「増えているかどうか」を実際に顕微鏡で確認することが中心です。多くは麻酔なしで、その場で結果の概要をお伝えできます。同時に、「なぜ増えたのか」という背景を探る検査も進めます。

細胞診(テープ・スライド)

Cytology

診断の中心です。皮膚にテープやスライドガラスを当てて表面の細胞を採り、染色して顕微鏡で見ます。マラセチアはピーナツ様・雪だるま様(出芽している姿)に見える特徴的な酵母で、これが数多く見つかれば診断につながります。増殖の程度も評価できます。

耳垢検査

Ear cytology

耳の症状があれば、耳あかを採って顕微鏡で確認します。マラセチアだけでなく、細菌や耳ダニが混じっていないかも同時に調べ、点耳薬の選択に役立てます。

背景を探す検査

Underlying cause

くり返す場合は、皮膚掻爬(そうは)検査で寄生虫を除外し、アレルギーの除外診断や、必要に応じて甲状腺・副腎などのホルモン検査を行います。マラセチアを「増やしている背景」を見極めます。

治療への反応をみる

Response to therapy

抗真菌の治療でかゆみや脂漏がしっかり改善するかどうかも、マラセチアが症状の主役だったかを判断する大切な手がかりになります。

06

治療 ― 「酵母を減らす」と「背景を管理する」の両輪

治療は、増えすぎたマラセチアを減らす治療と、増やしている背景を管理する治療の両輪で進めます。片方だけでは、一時的に良くなってもまた増えてしまいます。

① 薬用シャンプー・外用(治療の柱)

抗真菌成分(ミコナゾールクロルヘキシジンなど)を含む薬用シャンプーで、皮膚の酵母と余分な皮脂を洗い流します。国際的なガイドラインでも効果がしっかり確認されている、中心的な治療です。泡を数分置いてから流すのがコツで、局所には抗真菌のローションやふき取り剤を使うこともあります。

② 抗真菌薬の内服(重症・広範囲のとき)

症状が全身に広がっている・重い・外用だけでは追いつかないときは、アゾール系の抗真菌薬(イトラコナゾール・ケトコナゾールなど)を内服します。よく効きますが、まれに肝臓への影響などが出ることがあるため、獣医師の管理のもとで使い、必要に応じて経過をみます。

③ 耳の治療(マラセチア外耳炎)

耳では、まず耳道の洗浄で汚れた耳あかを取り除き、抗真菌成分を含む点耳薬で治療します。奥に汚れがたまった慢性例では、当院のビデオオトスコープ(耳の内視鏡)で深部まで確認・洗浄することもあります。

④ 背景の病気を管理する(再発防止の要)

アレルギー・脂漏・ホルモンの病気など、マラセチアを増やしている背景を見つけて管理します。ここに手を打てるかどうかが、くり返すか・落ち着くかの分かれ目です。原因を管理できると、必要な薬を減らせることも多くあります。

07

耳のマラセチア ― マラセチア外耳炎について

マラセチアは、犬の外耳炎のとても多い原因のひとつです。耳の中は暖かく湿って皮脂も多いため、酵母にとって増えやすい環境で、とくに垂れ耳・毛の多い耳の子で増えやすくなります。茶色〜黒っぽいベタついた耳あかと、独特のにおいが特徴です。

ただし、くり返す外耳炎では、マラセチアはあくまで「増えた結果」であることが多く、その奥にアレルギーや耳の構造といった“なりやすい理由”が隠れています。耳の治療だけをくり返しても、背景が残っていると再発しがちです。

08

くり返さないために ― 背景の管理とスキンケア

マラセチア皮膚炎・外耳炎は、いったん良くなっても、背景を管理しないと再び増えてくることの多い病気です。だからこそ、症状が落ち着いてからのふだんのケアと背景の管理が、快適な状態を長く保つ鍵になります。

脂っぽさやにおい、くり返すかゆみは、その子にとってもご家族にとっても大きなストレスです。「体質だから」とあきらめる前に、まずは細胞診で確かめ、増えている背景を一緒に探すところから始めましょう。その子とご家族が幸せに過ごせることを目標に、無理なく続けられる管理を一緒に組み立てます。皮膚科・耳科の診療内容については、あわせてこちらもご覧ください。

09

さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

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Q&A

よくあるご質問

マラセチアは、人や他のペットにうつりますか?
基本的にはうつりません。マラセチアはもともと健康な犬・猫の皮膚や耳にいる常在の酵母で、ノミや疥癬のように外から感染してうつる病気とは性質が違います。あくまで「その子自身の皮膚で増えすぎている」状態です。そのため、他の子や人へ広がる心配は通常ありません。ただし、免疫が大きく低下している方などごくまれな例外もあるため、ご家族に基礎疾患がある場合は念のため主治医にご相談ください。
一度治っても、なぜくり返すのですか?
マラセチアの増えすぎは、多くの場合「結果」であって「原因」ではないためです。背景にアレルギー(アトピー・食物)や脂漏、ホルモンの病気などがあると、皮膚の環境がマラセチアの増えやすい状態に傾き、抗真菌薬やシャンプーで一度減らしても、背景がそのままだとまた増えてきます。くり返す場合は、目の前のマラセチアを抑えるだけでなく、その背景を検査で見極めて管理することが、再発の間隔を延ばす近道になります。
薬用シャンプーは自宅でできますか?どのくらいの頻度が必要ですか?
多くの場合はご自宅で行っていただけます。マラセチアの管理では、抗真菌成分(ミコナゾールやクロルヘキシジンなど)を含む薬用シャンプーで、皮膚の酵母と余分な皮脂を洗い流すことが治療の柱になります。国際的なガイドラインでは、こうしたシャンプーを週2回程度を目安に、泡を数分置いてから流す使い方が推奨されています。ただし、シャンプーの種類・頻度・つけ置き時間はその子の状態で変わり、すすぎ残しや洗いすぎはかえって逆効果になることもあります。具体的な方法は診察時にご指導しますので、自己流になる前にご相談ください。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。