まず、耳の「外から見える範囲」だけを見ます
耳の中を触る前に、明るいところで耳の入り口を見てください。奥まで覗き込む必要はありません。
- 色:内側がピンクか、赤くなっていないか
- におい:顔を近づけて、酸っぱい・生ぐさいにおいがしないか
- 耳垢:茶色くベタつくか、黒くカサつくか、ほとんど無いか
- 痛がるか:耳のつけ根をやさしく触られるのを嫌がらないか
この4つを見ておくと、受診したときの話が早くなります。スマートフォンで撮っておくと、なお確かです。耳の中は数日で見た目が変わるので、「かき始めたころ」の写真は診察の助けになります。
様子を見てよいのは、2〜3日まで
赤み・におい・痛みのいずれも無ければ、2〜3日は様子を見ていただいてかまいません。 ただし、かゆみが強いときは早めにご相談ください。かき壊してしまうと、もともとの原因に傷と炎症が上乗せされ、治るまでが長くなります。
綿棒は使わないでください
耳掃除でいちばん多い行き違いが、これです。
犬や猫の耳の穴は、人と違ってL字に曲がっています。入り口からまっすぐ綿棒を入れても、曲がり角より先には届きません。届かないまま押すと、汚れを奥へ押し込み、耳道の壁を傷つけます。
「掃除したのに良くならない」「掃除するほどひどくなる」——そう感じるときは、たいてい掃除では届かない場所で起きています。
耳の構造については、犬猫の外耳炎のページに断面の図を用意しています。どこまでが自分で届く範囲なのかが、ひと目で分かると思います。
ふだんの耳掃除は、月に1回くらいで十分です
「毎週きれいにしたほうがいいですか」と聞かれることがありますが、そこまでは要りません。当院がおすすめしているのは、月に1回程度です。
大事なのは回数ではなく、目的です。
- 軽い汚れなら、イヤークリーナーを使って見える範囲を拭き取るだけで十分です
- 奥まで届かせようとしない(前の項目のとおり、届きませんし傷つけます)
- 垂れ耳か立ち耳か、シャンプーやプールの頻度によって、回数を変える必要はありません
かゆみの出どころが、耳ではないこともあります
耳だけをくり返し治療しても良くならない場合、背景に皮膚の体質が隠れていることがあります。アレルギーのある子では、耳は「かゆい場所のひとつ」として現れます。
また猫の場合は、犬とは事情が違います。子猫や保護猫では耳ダニ、若い猫では耳道のポリープ、中高齢では腫瘍が背景にあることがあり、いずれも「かゆいから掃除」では届きません。猫は不快感を表に出しにくいので、耳をかく・頭を振る・耳垢が増えた・においがするといったサインに気づいたら早めにご相談ください。
受診したら、何をするのか
「行ったら何をされるのか分からない」——それが受診をためらう理由になることがあります。当院の耳の初診は、次の順で進みます。
ステップ1:耳鏡で、耳の中を見る
まず耳道と鼓膜の状態を目で確かめます。炎症の程度や、異物・できものの有無をここで見ます。
ステップ2:必要なら、耳垢を顕微鏡で調べる(細胞診)
全員に必ず行うわけではありません。耳ダニなどの外部寄生虫、マラセチア(酵母)、細菌の感染が疑わしいときに行います。その場で見て、何が増えているかを確かめてから薬を選びます。
ステップ3:ビデオオトスコープは、初診では使いません
耳道を拡大して映しながら処置できる機器ですが、鎮静や麻酔が必要なため、初診でいきなり使うことはありません。くり返す・奥に問題がありそうなど、必要と判断したときにあらためてご提案します。
耳鏡で見て、必要なら細胞診をする——ここまでは、その日のうちに終わります。何が起きているのかが分かれば、そのあとの見通しもお伝えできます。
さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)
- 犬の耳の感染症・外耳炎(MSD獣医マニュアル・飼い主向け・英語) — 家庭での耳のケアについて、綿棒を使わないこと、酢などの民間療法は炎症を悪化させうることが明記されています。
- 犬の外耳炎の頻度と発症しやすい要因(英国の大規模疫学研究・2021年・英語) — 一次診療のデータから、垂れ耳や犬種といった素因を明らかにした査読論文(オープンアクセス)。
原因の見きわめ方・治療・くり返す背景については、犬猫の外耳炎のページで詳しくご説明しています。耳のかゆみが気になるときは「耳を痒がる・におい・汚れ」から探すもあわせてご覧ください。
