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病気の概要
変形性関節症(へんけいせいかんせつしょう、Osteoarthritis:OA)は、関節のクッションである軟骨が少しずつすり減り、関節に慢性的な炎症と痛みが起こる病気です。「関節炎」「変性性関節疾患(DJD)」とも呼ばれます。
一度すり減った軟骨は元には戻らず、進行すると関節の変形(骨の増殖=骨棘)が進みます。犬では肘・膝・股関節に、猫では肘・股関節・膝などに多くみられます。加齢にともなって非常に多くなる病気で、とくにシニア期の犬と猫では、痛みに気づかれないまま進んでいることが少なくありません。
大切なのは、「完治させる」病気ではなく、「痛みを管理して、快適に過ごせる状態を長く保つ」病気だと理解することです。近年は月1回の注射薬など、痛みを抑える選択肢が大きく広がっています。
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関節で何が起きているのか
健康な関節では、骨の表面をなめらかな軟骨が覆い、関節液がクッション兼潤滑油の役割をしています。変形性関節症では、この軟骨がすり減ることで次のような悪循環が起こります。
きっかけ
軟骨のすり減り
加齢・肥満・関節への慢性的な負担や、もともとの関節疾患(下記)をきっかけに軟骨がすり減る。
進行
炎症と痛み・骨の変化
すり減った関節に炎症が起き、痛みが出る。関節のふちに骨のトゲ(骨棘)ができ、関節が変形していく。
結果
動かなくなり、さらに悪化
痛みで動かなくなると筋肉が落ち、関節を支える力が弱まってさらに負担が増える——という悪循環に。
関連ページ:股関節形成不全/膝蓋骨脱臼(パテラ)/前十字靭帯断裂
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症状・サイン ― 犬と猫で違います
痛みのサインは犬と猫で大きく異なります。とくに猫は痛みを隠すのが上手で、「跛行(足を引きずる)」がはっきり出ないことが多いため、生活の中の小さな変化に気づくことが早期発見の鍵になります。
犬に多いサイン
- 散歩に行きたがらない・すぐ疲れる
- 立ち上がりや歩き出しが遅い・こわばる
- 階段・段差・車の乗り降りをいやがる
- 足を引きずる、かばう(跛行)
- 触られるのをいやがる、元気・食欲の低下
- 寒い日・朝に症状が強い
猫に多いサイン(気づきにくい)
- 高い所へ登らなくなった・ジャンプをためらう
- 毛づくろいが減り、毛並みが乱れる
- 爪とぎや遊びが減る、寝ている時間が増える
- トイレの出入りや排泄姿勢をつらそうにする
- 触ると怒る・隠れる・性格が変わったように見える
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好発・リスク因子
- 加齢(シニア期にかけて増える)
- 肥満・体重過多(関節への負担が増え、炎症を助長する)
- もともとの関節疾患(股関節形成不全・膝蓋骨脱臼・前十字靭帯断裂 など)
- 関節の骨折・外傷・脱臼の既往
- 大型犬・活動性の高い犬(関節への負荷)
- 遺伝的な素因・体格
05
診断・検査
痛みの評価と、関節の状態の確認を組み合わせて診断します。猫では、おうちでの様子(動画)がとても参考になります。
STEP 1
問診・生活の変化の聞き取り
いつから・どんな動きが変わったかを伺います。ご自宅での歩行・ジャンプの動画があると診断に役立ちます。
STEP 2
歩様の評価・整形外科的な触診
歩き方や、関節の痛み・腫れ・可動域・軋みなどを確認します。
STEP 3
レントゲン検査
関節のすき間の狭まり・骨棘・骨の変化などを評価します。痛みの程度とレントゲン所見は必ずしも一致しません。
STEP 4
必要に応じて追加の検査
他の病気の除外や、治療(お薬)の前の全身状態の確認のため、血液検査などを行うことがあります。
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治療の考え方 ― 「完治」ではなく「痛みの管理」
変形性関節症は、基本的に手術で治す病気ではなく、痛みをコントロールしながら付き合っていく病気です。当院では、その子の状態・年齢・生活・ご家族の負担を考え、いくつかの方法を組み合わせる**多角的な痛みの管理(マルチモーダル)**を行います。
目標は、痛みを和らげて活動性を取り戻し、その子とご家族が快適に過ごせる毎日を長く保つこと。そのために、次のページで解説する新しい注射薬(リブレラ・ソレンシア)を軸に、体重管理・お薬・リハビリ・環境整備を組み合わせていきます。
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痛みを抑える新しい注射薬 ― リブレラ(犬)・ソレンシア(猫)
近年、変形性関節症の痛みの治療は大きく変わりました。その中心が、抗NGF(神経成長因子)モノクローナル抗体という新しいタイプのお薬です。日本では2022年に承認され、**犬用が「リブレラ」、猫用が「ソレンシア」**として使われています。
リブレラ(犬用)
Librela / bedinvetmab
犬の変形性関節症の痛みに対する、月1回の皮下注射。犬のタンパク質から作られた抗NGFモノクローナル抗体です。
ソレンシア(猫用)
Solensia / frunevetmab
猫の変形性関節症の痛みに対する、月1回の皮下注射。猫用に最適化された抗NGFモノクローナル抗体で、国際的なガイドラインでも猫のOA疼痛の主要な治療として位置づけられています。
どうやって痛みを抑えるのか
関節の痛みには、NGF(神経成長因子)という物質が深く関わっています。リブレラ・ソレンシアは、このNGFに結合して痛みの信号が脳へ伝わるのを抑えることで、関節の痛みを和らげます。従来の消炎鎮痛薬とは、まったく異なる仕組みで働きます。
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多角的な痛みの管理
注射薬だけに頼るのではなく、次のような取り組みを組み合わせることで、より良い状態を長く保てます。とくに体重管理は、薬に匹敵するほど効果が確かです。
体重管理(最重要)
太りすぎは関節への負担と炎症を大きくします。適正体重に近づけるだけで痛みが和らぐことがあり、お薬の量を減らせることもあります。無理のない減量計画を一緒に立てます。
お薬(内服・その他)
消炎鎮痛薬(NSAIDsなど)や、痛みの伝わり方に働きかける補助的なお薬を、その子に合わせて使います。種類・量・組み合わせは、持病や体の状態を診て獣医師が判断します。
サプリメント・食事
オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)は関節の炎症をやわらげ、荷重の改善に役立つことが示されています。関節ケアを配合した療法食や、グルコサミン等のサプリを補助的に用います。
リハビリ・環境整備
無理のない運動や理学療法(水中トレッドミル等)で、関節を支える筋肉を保ちます。滑らない床・段差の解消・低いトイレや踏み台など、暮らしの工夫も痛みを大きく減らします。
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予後・ご家庭でできること
変形性関節症は慢性の病気ですが、適切な痛みの管理を続けることで、多くの子が活動性と生活の質を取り戻します。痛みの管理は「続けること」が力になります。定期的に状態を評価し、その時々に合った方法へ調整していきます。
「年のせいかな」と思っていた動きの変化が、治療で見違えるように変わることは少なくありません。犬も猫も、そしてシニアの子も、痛みを和らげる選択肢があります。その子とご家族が幸せに過ごせることを目標に、選択肢を一緒に考えます。
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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)
より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。
- 犬と猫の変形性関節症/MSD獣医マニュアル・獣医師向け(英語) — 犬猫で最も一般的な慢性疼痛疾患としての病態・診断・多角的治療をまとめた一次情報。
- 2022 AAHA 犬と猫の疼痛管理ガイドライン/米国動物病院協会(英語) — 本ページの治療方針の根拠となる、多角的(マルチモーダル)疼痛管理の専門ガイドライン。

