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古谷動物病院古谷動物病院FURUYA ANIMAL CLINICご予約

KERATOCONJUNCTIVITIS SICCA

犬の乾性角結膜炎(ドライアイ)

涙が足りなくなり、目の表面が乾いて傷ついていく眼科疾患

「いつも目やにでベタベタしている」「白目がずっと赤い」「黒目が曇ってきた」——それは涙が足りていないサイン、乾性角結膜炎(ドライアイ)かもしれません。涙は目を潤すだけでなく、栄養や免疫を届けて角膜を守る大切な液体です。その涙が減ると、目の表面は乾いて傷つきやすくなります。完治をめざすより、上手に付き合い長く管理していく病気です。

  • 眼科

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

とくに気をつけたい犬種・猫種

好発(かかりやすい傾向)が知られている犬種・猫種です。必ずかかるわけではありません。

01

病気の概要

乾性角結膜炎(かんせいかくけつまくえん:Keratoconjunctivitis Sicca、KCS)は、その名のとおり「乾いた(sicca)」目の病気です。涙の量が足りなくなり、目の表面(角膜と結膜)が乾いて炎症を起こし、傷ついていきます。一般にはドライアイの名で知られています。

涙は「ただの水」ではありません。角膜には血管がなく、涙が酸素や栄養を届け、老廃物や異物を洗い流し、免疫の成分で感染から守っています。その涙が減ると、角膜は栄養と防御を同時に失い、乾き・傷・濁り・感染へと進んでいきます。

15mm/分〜

犬の正常な涙の量の目安(シルマー涙液試験・これを下回ると疑う)

免疫介在性

犬のドライアイで最も多い原因(涙腺そのものの炎症)

生涯

多くは完治ではなく、続けて管理していく病気

02

涙の3層と、ドライアイのしくみ

目の表面をおおう涙の膜(涙液層)は、外側から3つの層でできています。ドライアイでは、このうち真ん中の水の層(水層)が量的に足りなくなるのが基本です。

つくる場所はたらき
油層(あぶらの層)まぶたのマイボーム腺涙の蒸発を防ぎ、表面をなめらかに保つ
水層(水の層)涙腺・第三眼瞼腺(瞬膜の腺)涙の大部分。酸素・栄養・免疫を届け、洗い流す
ムチン層(粘液の層)結膜の杯細胞涙を角膜にぴったり密着させる

犬のドライアイでもっとも多いのは、この水層が減る「量的(涙が足りない)」タイプです。水層をつくる主役は涙腺と第三眼瞼腺(瞬膜の内側の腺)で、ここが障害されると涙の総量が落ちてしまいます。

03

原因 ― 最も多いのは免疫の異常

ドライアイにはさまざまな原因があります。犬で圧倒的に多いのは、自分の免疫が涙腺を攻撃してしまう免疫介在性の涙腺炎です。原因のタイプを見極めることが、治療方針を決める第一歩になります。

免疫介在性(最も多い)

自分の免疫細胞が涙腺・第三眼瞼腺を炎症で壊してしまうタイプ。犬のドライアイの大半を占めます。後述する好発犬種で多くみられ、両目に起こることがよくあります。

薬剤性

サルファ剤(スルホンアミド系の抗菌薬)や一部の消炎薬(エトドラク等)が涙の分泌を抑えることがあります。投薬中に目やに・充血が出たら要注意です。

神経原性

涙の分泌を促す神経(三叉神経・顔面神経)の障害で起こるタイプ。多くは片側で、同じ側の鼻も乾くのが特徴的なサインです。

そのほか

先天的に涙腺の発達が不十分なもの、内分泌の病気(甲状腺機能低下症など)、犬ジステンパーウイルス感染、放射線治療の影響、そして第三眼瞼腺の切除後など。

猫のドライアイは犬より少なく、多くはヘルペスウイルスなどの感染に続いて起こります。慢性の結膜炎をくり返す猫では、涙の量も一度確かめておくと安心です。

04

症状・気づき方

ドライアイのサインは、目の乾きと炎症、そして「ネバつく目やに」として現れます。慢性に進むほど、角膜の色や透明さが変わっていきます。

サイン内容
ネバつく目やに糸を引くような、粘っこい黄色〜灰色の目やにが毎日出ます(水分が足りず粘液が濃くなるため)。
白目の充血結膜が赤く充血し、慢性の結膜炎をくり返します。
黒目の乾き・くもり角膜が乾いて艶がなくなり、うっすら濁って見えます。
色素沈着・血管の侵入慢性化すると角膜に黒い色素が広がり、血管が伸びてきます。視界をさまたげます。
角膜の傷乾きで角膜潰瘍(角膜の傷)ができやすく、痛がります。
目の不快感目をショボショボさせる・こする・まばたきが増える。

05

診断・検査 ― シルマー涙液試験

ドライアイの診断で中心になるのが、涙の量を数字で測るシルマー涙液試験(STT)です。専用の細い試験紙をまぶたのふちに1分間はさみ、しみ込んだ涙で濡れた長さを測ります。痛みはほとんどありません。

STEP 1

問診・目の観察

いつから・どちらの目に・どんな目やにや充血があるか、飲んでいる薬はないかを丁寧に伺います。

STEP 2

シルマー涙液試験(STT)

1分間の涙の量を測ります。犬ではおおむね15mm/分以上が正常の目安で、これを下回るほど涙不足を疑います(10前後で疑い、5未満で重度の目安。数値は判定法で幅があります)。必ず左右を比べます。

STEP 3

フルオレセイン染色

角膜を緑色の色素で染め、角膜潰瘍(傷)が合併していないかを確認します。傷の有無は、使える目薬の判断にも関わる大切な情報です。

STEP 4

原因タイプの見極め

片側だけか・同じ側の鼻も乾いていないか(神経原性の手がかり)、投薬歴、ほかの病気の有無などから原因のタイプを推定し、治療方針を決めます。

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治療・管理

治療のゴールは、足りない涙を補い、涙腺の炎症を抑えて涙の分泌を取り戻し、角膜を守ることです。原因のタイプによって組み合わせは変わりますが、免疫介在性では点眼による長期のケアが中心になります。

  1. ステップ1涙腺の炎症を抑える点眼(免疫調整点眼)

    免疫介在性ドライアイの主軸です。シクロスポリンやタクロリムスといった点眼薬が、涙腺を攻撃している免疫の炎症を抑え、涙の分泌の回復を助けます。効果が出るまで数週間かかることもあり、良くなっても続けることが大切です(薬剤の種類・濃度・回数はその子の状態に応じて個別に判断します。詳しくは担当獣医師にご確認ください)。

  2. ステップ2人工涙液で涙を補う

    足りない涙を外から補い、角膜の乾きと不快感をやわらげます。免疫調整点眼と併用し、症状に応じて回数を調整します。

  3. ステップ3原因タイプに合わせた対応

    薬剤性なら原因の薬の見直し、神経原性では涙の分泌を促す薬(ピロカルピンなど)を用いることがあります。感染や角膜の傷を合併しているときは、それに応じた治療を並行します。

  4. ステップ4角膜の傷があるときの注意

    ステロイドの目薬は炎症をよく抑えますが、角膜潰瘍(傷)があるときに使うと悪化させる危険があります。傷の有無を確かめたうえで、使ってよい薬を選びます。自己判断で手持ちの目薬を使わないでください。

  5. ステップ5外科的な選択肢

    点眼で十分な効果が得られない難治のケースでは、唾液を目に導く手術(耳下腺管転位術)という選択肢があります。唾液で目の表面を潤す方法で、適応や利点・注意点をよくご説明したうえで検討します。

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ご家庭でのケアと「涙やけ」との違い

毎日のケアと観察は、飼い主だからこそできる大切な役割です。あわせて、まぎらわしい「涙やけ」との違いも知っておきましょう。

心がけたいこと

  • 処方された点眼を、決められた回数きちんと続ける
  • こびりついた目やには、ぬるま湯で湿らせたコットンでやさしく拭き取る
  • 好発犬種は、健診時に一度シルマー涙液試験で涙の量を測っておく
  • 片目だけ・同じ側の鼻も乾く、といった左右差に気づく
  • 目やに・充血・黒目のくもりが続くときは早めに相談する

避けたいこと

  • 人用の目薬や、以前ほかの子に出された目薬を自己判断で使う
  • とくにステロイド入りの目薬を、傷の有無を確かめずに使う
  • 「ただの目やに」と決めつけ、くり返す結膜炎を放置する
  • 症状が落ち着いたからと、点眼を自己判断でやめる

「涙やけ」は、あふれた涙で目の周りの毛が変色する状態で、どちらかというと涙が「多い・流れが悪い」ことに関わります。一方でドライアイは涙が「足りない」病気です。見た目では区別が難しいので、気になるときは涙の量を測ってみましょう。ドライアイは早く気づいて根気よく管理するほど、目の表面を良い状態に保ちやすくなります。その子とご家族が幸せに過ごせることを目標に、続けやすいケアを一緒に考えます。

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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

関連:チェリーアイ(第三眼瞼腺脱出)について ― 摘出せず整復する理由 関連:角膜潰瘍について(ドライアイに合併しやすい角膜の傷) 眼科診療のご案内を見る

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Q&A

よくあるご質問

ドライアイは治りますか?一度なると一生の付き合いですか?
多くの乾性角結膜炎は「完治」させるより「上手に付き合って管理していく」病気です。最も多い免疫介在性のタイプでは、涙をつくる涙腺が少しずつ壊されていくため、点眼で炎症を抑え、残った涙腺のはたらきを守りながら、生涯にわたってケアを続けるのが基本になります。早く始めて根気よく続けるほど、目の表面を良い状態に保ちやすくなります。神経の障害や薬剤が原因のタイプなど、原因によっては経過が異なることもありますので、まずはタイプの見極めが大切です。
目薬はいつかやめられますか?
免疫介在性のドライアイでは、点眼をやめると多くの場合また涙が減り、目の表面が乾いて傷ついてしまいます。そのため、症状が落ち着いても自己判断で中止せず、継続することが大切です。逆に、点眼がよく効いて涙の量が回復してくると、回数を減らせる場合もあります。やめる・減らすの判断は、シルマー涙液試験で涙の量を確かめながら担当獣医師と一緒に決めていきましょう。
「涙やけ」と「ドライアイ」は同じものですか?
いいえ、別のものです。涙やけは、あふれた涙で目の周りの毛が茶色く変色する状態で、どちらかというと涙が「多い・流れが悪い」ことに関わります。一方でドライアイ(乾性角結膜炎)は涙が「足りない」病気です。まぎらわしいのは、ドライアイでも目やにや涙のようなネバネバした分泌物が増えるため、見た目では区別が難しいこと。目の充血や粘っこい目やにが続くときは、涙の量を測る検査で見分けることをおすすめします。
放っておくとどうなりますか?
涙が足りない状態が続くと、目の表面(角膜)が乾いて傷つき、慢性の結膜炎、角膜の潰瘍、黒い色素の沈着、濁りや血管の侵入などが進みます。進行すると角膜が広く濁って見えづらくなり、痛みも伴います。重症では角膜に穴があく(穿孔)こともあります。多くは早く気づいて管理を始めれば、こうした進行を抑えられます。目やに・充血・目の曇りが続くときは、早めにご相談ください。
家でできるケアはありますか?
処方された点眼を決められた回数きちんと続けることが何より大切です。加えて、目の周りにこびりついた目やには、ぬるま湯で湿らせたコットンなどでやさしく拭き取り、清潔に保ってあげてください。人用の目薬や、以前ほかの子に処方された目薬を自己判断で使うのは避けてください(ステロイド入りの目薬は、角膜に傷があるときに使うと悪化させることがあります)。気になる変化があれば、次の受診を待たずにご連絡いただいて構いません。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。