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病気の概要
チェリーアイは、正式には**第三眼瞼腺脱出(だいさんがんけんせんだっしゅつ)といいます。犬や猫には、上下のまぶたのほかに、目頭側にもう一枚「第三眼瞼(だいさんがんけん)=瞬膜(しゅんまく)」というまぶたがあります。この瞬膜の根もとには瞬膜腺(第三眼瞼腺)**という涙をつくる腺があり、ふだんは外から見えません。
なんらかの理由でこの腺が正しい位置から飛び出し、目頭に赤くふくらんだ塊として見えるようになった状態が、チェリーアイです。その見た目が熟したさくらんぼ(cherry)に似ていることから、この呼び名がつきました。
約1/3–1/2
瞬膜腺が担う涙液(水層)の割合の目安。だから摘出してはいけない
2歳未満
発症の多くを占める年齢層(若い犬に多い)
片目/両目
どちらにも起こりうる(片眼だけのことも両眼のことも)
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病気のメカニズム ― なぜ飛び出すのか
瞬膜腺は、通常は瞬膜のうしろ側で結合組織によって正しい位置に固定されています。この固定する結合組織が生まれつき弱いと、腺が支えを失って前方へ滑り出し、目頭に脱出します。これがチェリーアイの主なしくみと考えられています。
なぜ若い短頭種に多いのか
Predisposition
腺を留める結合組織の弱さには遺伝的な素因が関わるとされ、多くは2歳未満の若い犬で発症します。フレンチ・ブルドッグ・英国ブルドッグ・パグ・ボストン・テリアなどの短頭種のほか、ビーグルやコッカー・スパニエル、シー・ズーなどで多く報告されています。
脱出したあとに起きること
What happens next
本来は涙で潤い保護されている腺が、外気に直接さらされ続けます。すると腺はむくんで充血し、乾燥や炎症が進行。二次的な結膜炎を起こしたり、こすることで角膜を傷つけたりすることがあります。時間が経つほど戻しにくくなるのも特徴です。
猫でのチェリーアイは犬に比べてまれですが、バーミーズやペルシャなどの品種で報告があります。犬でも猫でも、目頭の赤い膨らみに気づいたら早めに動くことが、その後の目の健康を左右します。
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症状・気づき方
チェリーアイの最大のサインは、なんといっても目頭に現れる赤い膨らみです。多くは見た目からすぐに気づけますが、初期は小さかったり、出たり引っ込んだりすることもあります。
| サイン | 内容 |
|---|---|
| 目頭の赤い膨らみ | 目の内側(鼻側)に、丸くつやのある赤い塊が現れます。チェリーアイの典型像です。 |
| 出たり引っ込んだり | 初期には脱出と戻りを繰り返すことがあります。「一度出て消えた」場合も油断は禁物です。 |
| 充血・涙が増える | 腺の炎症により、白目の充血や涙・目やにの増加がみられることがあります。 |
| 目を気にするそぶり | 前足でこする・床にこすりつける・しょぼしょぼさせるなど。こすると角膜を傷めます。 |
| 両目に出ることも | 片目の発症後、時間をおいて反対の目にも現れることがあります。 |
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診断・検査
チェリーアイの診断そのものは、特徴的な見た目から比較的つけやすい病気です。ただし当院では、見た目の確認だけで終わらせず、目の全体の状態と涙の量まで確認することを大切にしています。
STEP 1
問診・視診
いつから・どちらの目に・出たり引っ込んだりするか、こする様子はないかなどを伺い、赤い膨らみの大きさや炎症の程度を観察します。
STEP 2
眼全体の評価
結膜・角膜・瞬膜の状態を確認し、こすることによる角膜の傷(潰瘍)や二次的な結膜炎がないかを調べます。必要に応じて角膜の染色検査を行います。
STEP 3
涙の量のチェック
脱出した腺が本来の涙をどれだけつくれているか、すでにドライアイの傾向が出ていないかを、涙液量の検査で確認します。手術前後の比較の基準にもなります。
STEP 4
治療方針のご相談
整復手術のタイミングや術式、再発の可能性、反対側の目への対応まで、その子の状態にあわせて一緒に方針を決めます。
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治療・管理
チェリーアイの治療の基本は、飛び出した瞬膜腺を**もとの位置に戻して固定する外科手術(整復手術)**です。繰り返しになりますが、腺を切り取る「摘出」は、ドライアイのリスクを高めるため原則として行いません。
ステップ1:なぜ手術が基本になるのか
一度脱出した腺が自然にもとへ戻ることは期待しにくく、放置すると乾燥・炎症・二次的な結膜炎が続きます。点眼で炎症を一時的に抑えることはできても、根本的な解決には整復が必要です。腺がむくむ前の早い段階のほうが、手術で戻しやすく再発も抑えやすいとされます。
ステップ2:整復手術 ― ポケット法(埋没法)
瞬膜の結膜に切れ込みを作り、脱出した腺をその「ポケット」に包み込むように収めて縫合し、もとの位置に戻す方法です。腺を温存できる代表的な術式で、腺の機能を保ちながらドライアイの発生を減らすことを目指します。
ステップ3:整復手術 ― 固定(タッキング)法
脱出した腺を、眼窩の縁や周囲の組織に糸で縫い留めて固定する方法です。症例や腺の状態に応じて、ポケット法と使い分け、あるいは組み合わせて行います。いずれも「腺を残す」ことが共通の考え方です。
ステップ4:再発したときの対応
整復後も一定の割合で再脱出(再発)が起こりえます。とくに長く脱出していた・炎症が強い・瞬膜の軟骨に変形があるといった場合に再発しやすいとされます。再発しても、別の術式での再整復など次の手が残されています。諦めずにご相談ください。
ステップ5:摘出を検討せざるを得ない場合
ごくまれに、腺自体に重い病変があるなど例外的な状況では摘出を検討することもありますが、その場合もドライアイのリスクを十分に説明したうえで、生涯にわたる涙のケアまで含めて一緒に考えます。「安易に取らない」が当院の基本姿勢です。
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当院の考え方 ― 「取らない」を選び続ける
チェリーアイは、見た目のインパクトから「早く取り除いてすっきりさせたい」と思われがちな病気です。けれど、その赤い膨らみは涙をつくる大切な腺。ここで安易に摘出を選ぶと、数年後にドライアイという別の、そして生涯続く問題を招きかねません。
当院が大切にしている DEPTH ― 命の深さに、向き合い続ける の視点では、「いま見えているものを取り除く」ことより、「その子の目の一生をどう守るか」を問い続けます(D ― Dig Into Why)。だからこそ、多少手間がかかっても腺を残す整復を基本とし、必要なら専門施設と連携します。飼い主の「すぐ治したい」という不安な気持ちに耳を澄ませながら(E ― Empathize)、正直に選択肢と見通しをお伝えすること(P ― Pure Honesty)を大切にしています。
ウェブサイトを診察室の延長と考える当院では、このページを見ながら「なぜ切らずに戻すのか」を一緒に確認できるようにしています。その子とご家族が幸せに過ごせることを目標に、最適な方法を一緒に選びましょう。
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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)
より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。
- チェリーアイ(犬)/コーネル大学 Riney Canine Health Center(英語) — 瞬膜腺の役割、摘出を避ける理由、整復手術と再発、好発犬種を大学の立場で解説。
- 涙器・涙腺装置/MSD(Merck)獣医マニュアル・獣医師向け(英語) — 涙液の三層構造、瞬膜腺の脱出(若齢・特定犬種)、腺を温存する整復とKCSの関係を専門的に記載。
- チェリーアイ/米国獣医眼科学会(ACVO)(英語) — 瞬膜腺が涙の相当割合を担うこと、摘出がドライアイ素因になること、整復の必要性を専門医団体が解説。

