本文へスキップ
古谷動物病院古谷動物病院FURUYA ANIMAL CLINICご予約

FLIGHT PREP

飛行機に乗せる前の準備

書類が揃っても、心配が消えるわけではありません。

手続きの見通しが立つと、次に来るのは「この子は飛行機に耐えられるだろうか」という心配です。鎮静剤を使うべきか、何を練習しておけばいいのか。ここでは、機内がどんな環境なのかという事実からお伝えし、出発までの数週間でできることを具体的にご説明します。

  • クレートトレーニング
  • 鎮静剤

PAGE GUIDE

このテーマは5ページでご案内しています

海外渡航の手続きは、調べることが多く、どこから手をつければよいか分かりにくいものです。知りたいことにすぐたどり着けるよう、内容を5つのページに分けています。上から順にご覧いただくと、全体像がつかめる並びにしています。

FIRST

「鎮静剤は出してもらえますか」への答え

渡航のご相談でいちばん多くいただく質問です。眠っているあいだに終わってくれるなら、その子もつらくないはずだ——そう考えるのは自然なことだと思います。けれども当院の答えは、「原則としておすすめしていません」です。これは当院独自の考えではなく、国際航空運送協会(IATA)と米国獣医師会(AVMA)がいずれも示している立場でもあります。

理由は、飛行中の貨物室が地上と同じ環境ではないからです。地上で安全に眠らせられる量でも、気圧が下がり、酸素が薄くなり、温度が変化する環境では、同じようには働きません。

呼吸が浅くなる

鎮静薬は多かれ少なかれ呼吸を抑えます。酸素の薄い環境でそれが重なると、地上では問題にならない量でも酸素が足りなくなることがあります。

体温を保てなくなる

鎮静下では体温調節がうまく働かなくなります。貨物室は空調管理されていますが、外気温の影響を受け、搭載・取り卸しの際は屋外を通ります。暑さにも寒さにも弱くなった状態は危険です。

姿勢を保てない・吐いたときに危ない

ふらついて体勢を保てず、揺れのたびにクレート内で体をぶつけることがあります。吐いてしまったときに、自力で気道を守れないことも問題です。

誰も異変に気づけない

これがいちばん大きな理由です。貨物室に人は乗っていません。日本航空も「お預かりした後、係員による食事や水分補給のお世話は実施しておりません」と明記しています。何かが起きても、到着まで対処できません。

ENVIRONMENT

貨物室は、どんな場所なのか

日本の航空会社では、犬や猫は客室ではなく貨物室(バルクカーゴルーム)でのお預かりになります。空調で温度と湿度は管理されていますが、客室とまったく同じではありません。知らないまま想像するより、事実を先にご覧いただいたほうが、準備すべきことがはっきりします。

0.8気圧

飛行中の機内。標高2,000mの山頂と同程度(日本航空の案内より)

暗室

飛行中は照明が消えます。離着陸時や飛行中は機械操作音・風切り音が続きます

120分前

預けるタイミングの目安。間際に預けると急激な温度変化が負担になります

気圧の変化は上昇中・下降中に耳へ影響します。夏は気温や反射熱の影響で高温になることがあり、冬は到着地によっては氷点下になります。航空機への搭載・取り卸しは屋外で行われるため、その前後で温度と湿度が大きく変わります。

TRAINING

薬より前に、できることがあります

渡航のご相談は、多くの場合、出発の2〜3か月前にいただきます。つまり慣らすための時間は、十分にあるということです。ANAも「長時間ペットケージの中にいることに慣れていないペットはストレスを感じやすいため、ご旅行前に慣れさせておくことをおすすめします」と案内しています。AVMAも、クレートやハーネスに事前に慣らし、慣れたおもちゃや毛布を入れることを勧めています。

目標は「クレートを我慢できるようにすること」ではありません。クレートを、その子にとって安心できる自分の場所にすることです。そこまで持っていけると、機内の数時間は「怖い場所に閉じ込められる時間」ではなく、「いつもの寝床で眠る時間」に近づきます。

  1. ステップ18〜6週間前:クレートを「部屋の一部」にする

    まず、実際に搭乗するクレートを用意します。扉を外すか開けっぱなしにして、ふだん家族が過ごす部屋に置いてください。この時期は、中に入れようとしないことが大切です。近づいたら褒める、そばでおやつを食べる、それだけで十分です。

    いちばんやってはいけないのが、出発の数日前に初めてクレートを買ってきて、その中に押し込むことです。その子にとってクレートは「閉じ込められた場所」として記憶され、機内の数時間がまるごと恐怖の時間になります。

  2. ステップ26〜4週間前:中で食べる・中で眠る

    食事をクレートの中で与えます。最初は入口の手前、慣れてきたら奥へと、器の位置を少しずつ動かしてください。毛布やタオル、使い慣れたおもちゃを入れて、においのついた寝床にしていきます。

    自分から入って眠るようになったら、扉を数秒だけ閉めて開ける、を繰り返します。鳴く前に開けるのがコツです。鳴いてから開けると「鳴けば出られる」と学習してしまいます。

  3. ステップ34〜2週間前:時間をのばす・音に慣らす

    扉を閉めている時間を、数分から30分、1時間と少しずつのばします。飼い主が部屋を出ても平気でいられるところまで進められると理想的です。実際の飛行時間と同じだけ練習する必要はありませんが、「ひとりでクレートの中にいても大丈夫」という経験を積ませておくことが、そのまま当日の支えになります。

    飛行中は照明が消えて暗くなり、機械音や風切り音が続きます。クレートに薄い布をかけて暗さに慣らす、テレビや生活音のある場所に置いて無音でなくても眠れるようにしておく——こうした小さな慣らしが効きます。

  4. ステップ42週間前〜前日:クレートごと移動する練習

    クレートに入れたまま車に乗せ、短い距離から練習します。持ち上げられる・運ばれる・揺れるという体験は、空港での取り扱いにいちばん近い練習です。ここで嘔吐や下痢、過剰なよだれが出るようなら、当日も同じことが起きる可能性が高いと考えて、事前にご相談ください。

    給水器(ノズル式)もこの時期に取り付け、ノズルから水を飲めるかを必ず確かめてください。飲み方を知らない子は、機内で水が目の前にあっても飲めません。

MEDICATION

薬を考えるのは、どういうときか

「鎮静剤はすすめない」とお伝えしましたが、薬をいっさい使わないという意味ではありません。その子の困りごとが何なのかによって、選ぶものが変わります。ここを分けて考えることが大切です。

吐く子乗り物で酔って吐いてしまう

犬には、乗り物酔いによる嘔吐の予防で国内承認を受けている薬(マロピタント製剤)があります。移動の1時間前までに投与し、予防効果は約11時間持続します。16週齢未満の子には使えず、空腹時に投与すると嘔吐することがあるなどの注意があるため、獣医師の指示のもとで使用してください。これは吐き気を抑える薬であって、鎮静薬でも抗不安薬でもありません。

怖がる子不安や恐怖が強く、パニックに近い反応が出る

行動診療科の領域です。まず何にどれだけ反応するのかを評価し、数週間かけて段階的に慣らす行動療法を軸に計画を立てます。必要と判断した場合には薬の併用も検討しますが、犬猫の不安に対して国内で承認されている飲み薬は限られており、多くは人体用医薬品の適応外使用になります。そのため、使う場合は必ず事前に自宅で試して効き方を確認します。

持病心臓や呼吸器の病気、高齢である

薬を足すかどうかより先に、そもそも預けられる健康状態かどうかの評価が必要です。航空会社も心臓疾患・呼吸器疾患のある子は預かれないと定めています。渡航の時期や便の選び方、場合によっては渡航そのものの是非まで含めて、正直にお話しします。

THE DAY

出発の日と、到着してから

当日に急にできることは多くありません。それでも、いくつかの点に気をつけるだけで負担は変わります。

食事は「軽く」

満腹も空腹も、飛行機酔いや体調不良の原因になります。IATAは預ける2時間ほど前に軽い食事と少量の水を与え、クレートに入れる直前に運動(排泄)させることを勧めています。

においのついたものを一緒に

日本航空は「ストレスを軽減するため、タオルなど普段の匂いが残るものと一緒にお預けいただけます」としています。使い慣れた敷物は、それだけで落ち着く材料になります。

給水器は必ず設置する

預けたあと、係員が水やりをすることはありません。ノズル式の給水器をしっかり固定してください。12時間以上の旅程では必須とされています。

いつもどおりに接する

ANAは「飼い主の様子の変化をペットは不安に感じることがあります。ご旅行へご出発される際も、いつもと同じ接し方を心がけてください」と案内しています。長い別れの挨拶より、いつもの調子が助けになります。

CONSULT

渡航が決まったら、早めにご相談ください

検疫の手続きには、待つ時間が組み込まれています。その待ち時間は、そのままクレートトレーニングに使える時間でもあります。手続きと慣らしを並行して進められるかどうかが、当日のその子の負担を分けます。

「うちの子は乗せて大丈夫でしょうか」というご相談だけでも構いません。公式LINEやオンライン診療でも承ります。診察が必要と判断した場合は、そのときにご案内します。

LINKS

このページの根拠となる情報

上記の内容は、次の各機関・航空会社のページで確認したものです(2026年8月時点)。航空会社の条件は変わります。実際のご予約の際は、必ず最新の情報をご確認ください。

Q&A

よくあるご質問

飛行機に乗せるとき、鎮静剤は使えますか?
原則としておすすめしていません。IATA(国際航空運送協会)は「輸送中の有害な影響の可能性があるため、客室・貨物室のいずれにおいても鎮静薬・精神安定剤の使用を推奨しない」と明記しています。AVMA(米国獣医師会)も「心臓や呼吸器の問題のリスクを高める可能性があり、航空会社も一般に認めていない」として、投与前に獣医師に相談するよう求めています。理由は、飛行中の貨物室が地上と同じ環境ではないからです。日本航空の案内によれば機内の気圧は0.8気圧、標高2,000mの山頂と同程度になります。酸素が薄い環境で呼吸が浅くなること、体温調節がうまくできなくなること、ふらついてクレートの中で体をぶつけること、吐いたものを誤嚥することなど、地上では起こりにくい問題が重なります。しかも貨物室では、異変が起きても誰も気づけません。当院は「鎮静剤で眠らせる」のではなく、数週間かけてクレートに慣らしていく方法をおすすめしています。そのうえで、不安がとても強い子や過去に強い恐怖反応を示した子については、行動診療科で個別にご相談ください。
乗り物酔いの薬なら使えますか?
犬については、乗り物酔いによる嘔吐の予防で国内承認を受けている薬(マロピタント製剤)があります。移動の1時間前までに投与し、予防効果は約11時間持続します。ただし16週齢未満の子には使えず、空腹時の投与で嘔吐することがあるなどの注意点があるため、獣医師の判断のもとで使用してください。大切なのは、これは吐き気を抑える薬であって、不安や恐怖そのものを和らげる薬ではないという点です。「酔って吐いてしまう子」には有効ですが、「怖くて鳴き続ける子」の答えにはなりません。その子の困りごとがどちらなのかを見きわめたうえで、必要であれば渡航前の診察でご相談ください。
どうしても不安が強い子には、何もしてあげられないのでしょうか?
そんなことはありません。まず、クレートトレーニングを含む環境面の準備は、多くの子にとって薬より確実に効きます。そのうえで、分離不安や恐怖症の診断がつくレベルの子には、行動診療科で渡航に向けた計画を一緒に立てます。数週間かけて段階的に慣らす行動療法を軸に、必要と判断した場合は薬の併用も検討します。ただし犬猫の不安に対して国内で承認されている飲み薬は限られており、多くは人体用医薬品を獣医師の責任で使う「適応外使用」になります。そのため、使う場合は必ず渡航前に自宅で試して、効き方と副作用を確認していただきます。ぶっつけ本番で当日に初めて飲ませることだけは、絶対に避けてください。なお、航空会社によっては薬を使った状態のペットを受け付けない場合があります。事前に航空会社にもご確認ください。
短頭種ですが、飛行機に乗せられますか?
航空会社によって扱いが異なり、そもそも預けられないことがあります。日本航空はフレンチ・ブルドッグとブルドッグを全便で受託していません。ANAは毎年5月1日から10月31日までの夏季期間、ブルドッグ、フレンチ・ブルドッグ、ボクサー、シーズー、ボストン・テリア、ブル・テリア、キングチャールズ・スパニエル、チベタン・スパニエル、ブリュッセル・グリフォン、チャウチャウ、パグ、チン、ペキニーズの受付を中止しています。さらにANAは、心臓疾患・呼吸器疾患のある子、生後4か月未満、妊娠中の子は預かれないとしています。短頭種はもともと気道が狭く、興奮や高温で急速に呼吸が苦しくなります。飛行機はその条件がそろいやすい環境です。渡航先と時期を決める前に、まず航空会社の受付条件をご確認ください。そのうえで、その子の気道の状態を診察で評価します。
猫の場合も同じ準備でよいですか?
考え方は同じですが、猫は犬以上にキャリーそのものを警戒します。「病院に行くときだけ出てくる箱」になっていると、見ただけで逃げるようになります。渡航が決まったら、キャリーを日常的に部屋へ出しっぱなしにして、寝床の一つにしてしまうのが最短です。においのついたタオルを敷き、上から布をかけて薄暗くすると落ち着く子が多くいます。フェロモン製品を併用する方法もありますが、効果には個体差があります。なお猫は狂犬病予防注射を受けていないことが多く、検疫の準備そのものに時間がかかるケースが大半です。トレーニングと並行して、早めに準備を始めてください。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。

INFORMATION

受診のご案内

〒142-0064 東京都品川区旗の台4-4-19

TEL 03-3788-4688

  • 東急大井町線・池上線旗の台駅」より徒歩5
  • 東急大井町線荏原町駅」より徒歩3

病院前に1台分駐車できます。使用中の場合は近隣の提携パーキングをご利用ください(1時間分のサービス券をお渡ししています)。

ご予約優先制です。

古谷動物病院の診療時間。休診日は日曜日・祝日
診療時間
9:00〜11:30
16:00〜18:3016:00〜18:00

休診日日曜日・祝日

  • 土曜日の午後は18:00までとなります。
  • 初診は随時受け付けております。
  • 往診・トリミング・麻酔処置は事前のご予約が必要です。