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古谷動物病院古谷動物病院FURUYA ANIMAL CLINICご予約

BRACHYCEPHALIC AIRWAY SYNDROME

犬・猫の短頭種気道症候群(BOAS)

いびき・ガーガーという呼吸は「その子の個性」ではなく、治療できる病気のサインかもしれません

鼻先の短い短頭種(フレンチ・ブルドッグ、パグ、シー・ズー、ペルシャ猫など)は、その愛らしい顔立ちの裏側で、生まれつき空気の通り道が狭くなりやすい体のつくりをしています。いびきや「ガーガー」という呼吸、暑さや運動への弱さは、しばしば「犬種の個性」として見過ごされますが、実は管理・改善できる病気のことがあります。当院は、その子がどれだけ息のしやすさで困っているかを見極め、負担の少ない選択肢から一緒に考えます。

  • 呼吸器科
  • 短頭種に多い

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

とくに気をつけたい犬種・猫種

好発(かかりやすい傾向)が知られている犬種・猫種です。必ずかかるわけではありません。

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病気の概要

短頭種気道症候群(たんとうしゅきどうしょうこうぐん、Brachycephalic Obstructive Airway Syndrome:BOAS、「短頭種気道閉塞症候群」とも)は、鼻先の短い犬種・猫種に生まれつき起こる、上気道(鼻から喉にかけての空気の通り道)が狭く、呼吸がしづらくなる病気です。

短頭種は、頭の骨が短く平たくつくられている一方で、その中におさまる鼻や喉の軟らかい組織の量はあまり変わりません。その結果、限られたスペースに組織が詰め込まれ、空気の通り道のあちこちが狭くなってしまうのです。フレンチ・ブルドッグ、パグ、シー・ズー、ボストン・テリア、ブルドッグ、そして猫ではペルシャやエキゾチック・ショートヘアなどが代表的です。

いびきや「ガーガー」という呼吸、暑さや運動への弱さは、しばしば「この犬種はこういうもの」として受け止められがちです。しかし、その多くは管理でき、外科的に改善できる余地があります。当院は「なぜ、その呼吸音が出ているのか」を問い、その子がどれだけ息のしやすさで困っているかを見極めることを診療の出発点にしています。

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鼻の穴・軟口蓋・喉頭小嚢・気管など、複数の狭い部位が重なって起こる

ガーガー

興奮時・運動後・睡眠時に目立つ、努力性の呼吸音

暑さに弱い

放熱が苦手で、熱中症のリスクがとくに高い

02

何が起きているのか ― 狭さが狭さを呼ぶ悪循環

BOASは、ひとつの異常ではなく、複数の狭い部位が重なって起こります。もともとの構造(一次的な異常)に、狭い所を無理に空気が通ろうとする力が加わって、二次的な変化が進んでいきます。

もともとある狭さ(一次的な異常)

狭窄性外鼻孔(きょうさくせいがいびこう)

鼻の穴そのものが狭く、息を吸うときにさらにつぶれて閉じ気味になります。BOASの入り口にあたる、もっとも代表的で、かつ改善しやすい異常です。

長く厚い軟口蓋(なんこうがい)

口の奥の「のどちんこ」につながる軟口蓋が長すぎて、喉の入り口に垂れ込み、空気の通り道をふさぎます。「ガーガー」という音の大きな原因です。

鼻の中の構造(鼻甲介)の異常

鼻の中で空気を分けている薄いひだ(鼻甲介)が過剰に発達し、鼻腔の奥をふさぐことがあります。外からは見えず、CTや内視鏡で評価します。

気管の低形成(きかんていけいせい)

気管(空気の本管)そのものが生まれつき細い子がいます。とくにブルドッグやパグでみられ、症状を重くする要因になります。

進行して起こる変化(二次的な異常)

狭い通り道を無理に空気が通ろうとすると、吸うたびに気道の中が強く引っぱられます。この力が長年かかると、次のような変化が加わり、狭さがさらに狭さを呼ぶ悪循環に進みます。

STEP 1

狭い所を無理に吸う

狭窄性外鼻孔や長い軟口蓋のため、息を吸うのに強い力が必要になり、気道の中が強い陰圧(引っぱる力)にさらされる。

STEP 2

組織がむくみ、引き込まれる

強い陰圧で喉の粘膜がむくみ、喉頭の脇にある小さな袋(喉頭小嚢)や扁桃が気道側へ引き込まれて外反し、通り道をさらにふさぐ。

STEP 3

喉頭虚脱(こうとうきょだつ)

長年の負担で喉頭を支える軟骨がもろくなり、喉頭そのものがつぶれてくる。ここまで進むと呼吸苦は重くなり、改善も難しくなる。

STEP 4

全身への影響

慢性的な呼吸苦は、熱中症のリスク、睡眠の妨げ、胃食道の逆流(吐き戻し)などにつながる。だからこそ、悪循環が進む前の対処が大切。

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好発犬種・猫種

短頭種であることそのものが、いちばんのリスク因子です。頭が短く平たいほど、また鼻の穴が狭いほど、症状は出やすくなります。

  • :フレンチ・ブルドッグ、パグ、ブルドッグ(イングリッシュ・ブルドッグ)、シー・ズー、ボストン・テリア、ペキニーズ、ボクサー、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなど。とくにフレンチ・ブルドッグとパグは、大規模な疫学調査でBOASのリスクが極めて高いことが示されています。
  • :ペルシャ、エキゾチック・ショートヘア、ヒマラヤンなど、極端に鼻先の短い猫種。鼻づまり・涙やけ(流涙)・口を開けた呼吸などのかたちで現れることがあります。
  • 肥満は犬種を問わずBOASを悪化させる最大の増悪因子のひとつです。

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症状・気づき方

BOASのサインは、日常のなかに溶け込んで見過ごされがちです。次のような様子は、「その子の個性」ではなく、呼吸の負担のサインかもしれません。

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診断・検査

診断の目的は、「どの部位が、どれくらい狭くなっているか」を見極め、その子に必要な治療を組み立てることです。負担の少ない検査から順に進めます。

問診・視診・聴診

鼻の穴の狭さ、呼吸音、いびきや運動での疲れやすさ、暑さへの弱さ、吐き戻しの有無をていねいにうかがい、確認します。ご家庭で撮った呼吸の動画がとても役立ちます。

呼吸機能グレードの評価

安静時の呼吸音を聴き、短時間の軽い運動の前後で呼吸の変化を評価する方法(英国ケンブリッジ大学などの呼吸機能グレード)が国際的に用いられています。「今どれくらい困っているか」を客観的に共有できます。

喉頭・咽頭の検査(鎮静・麻酔下)

軟口蓋の長さ、喉頭小嚢や扁桃の外反、喉頭虚脱の程度は、鎮静・麻酔をかけて口の奥や喉頭を直接観察して評価します。手術の適応と術式を決める大切な検査です。

レントゲン・CT

胸部レントゲンで気管の太さや肺・心臓の状態を確認します。鼻腔内の構造(鼻甲介の異常)や全体像を精密に評価するには、CTが有用です。必要に応じて提携施設と連携します。

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治療 ― 外科と内科、それぞれの役割

BOASの治療には、狭い部分を物理的に広げる外科治療と、症状を和らげ悪化を防ぐ内科・生活管理の両輪があります。どちらが適しているかは、症状の程度・年齢・どの部位が狭いか・全身状態によって変わります。

外科治療 ― 通り道を広げる

手術は、生まれつきの骨格を変えるものではなく、狭くなっている軟らかい組織を整えて、空気を通りやすくすることが目的です。代表的なものに次があります。

外鼻孔の拡大(鼻翼形成)

狭い鼻の穴を切開して広げ、鼻からの呼吸を楽にします。効果が実感されやすく、若いうちに行うと悪循環の進行を防ぎやすい処置です。

軟口蓋の短縮(口蓋形成)

長すぎる軟口蓋を適切な長さに整え、喉への垂れ込みをなくします。「ガーガー」という音や呼吸苦の大きな改善につながります。

喉頭小嚢の切除

気道側へ外反した小さな袋(喉頭小嚢)を取り除き、喉頭の入り口を広げます。軟口蓋の手術とあわせて行われることがあります。

重度例(喉頭虚脱)への対応

喉頭そのものがつぶれた重度例は治療が難しく、専門的な判断と設備を要します。適応に応じて、実施可能な提携施設をご紹介します。

内科・生活管理 ― 悪化を防ぐ土台

手術をする・しないにかかわらず、日々の管理はすべての短頭種に共通する土台です。

  • 適正体重を保つ……肥満はBOASを悪化させる最大の要因のひとつ。減量だけで呼吸が楽になる子もいます。
  • 暑さ・湿度・興奮を避ける……夏場はエアコンで室温・湿度を管理し、散歩は涼しい時間に。興奮しすぎない工夫も大切です。
  • 首を圧迫しないハーネスに……首輪で引くと気道を圧迫します。お散歩は胸で支える胴輪へ。
  • 炎症・むくみへの対処……気道の炎症や胃食道逆流には、状態に応じてお薬で対応することがあります。

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ご家庭での管理・予防

診察室の外での毎日の工夫が、その子の呼吸のしやすさを大きく左右します。BOASは、ご家庭でできることがとても多い病気です。

夏を安全に越える

短頭種は熱中症にとくに弱い体質です。真夏でなくても、湿度の高い日・興奮・運動だけで危険が高まります。室温と湿度を管理し、日中の暑い時間の散歩は避けましょう。

体重を「呼吸のために」保つ

わずかな体重増加でも、狭い気道はさらに圧迫されます。適正体重の維持は、もっとも手軽で効果的なケアです。食事量やおやつの見直しはご相談ください。

「いつもの呼吸」を知っておく

ふだんのいびき・呼吸音・運動での疲れやすさを知っておくと、悪化のサインに早く気づけます。呼吸の様子を動画に残しておくと、診察の大きな手がかりになります。

熱中症の症状・応急処置・予防を見る

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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

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Q&A

よくあるご質問

いびきをかくのは短頭種だから当たり前ですよね?受診は必要ですか?
いびきは短頭種によくみられますが、「当たり前だから大丈夫」とは限りません。いびきは、眠っているあいだも空気の通り道が狭くなっているサインで、その程度は子によってさまざまです。日中も「ガーガー」と苦しそう、少し歩くと息が上がる、興奮すると呼吸が乱れる、暑さにとても弱い——こうした様子があれば、短頭種気道症候群として管理・改善できる余地があります。とくに若いうちに外鼻孔(鼻の穴)を広げるなどの対処をすると、その後の悪化を防ぎやすいことが知られています。気になる呼吸の様子を動画に撮ってお持ちいただくと、診察がスムーズです。
手術をすれば完全に治りますか?
手術は「狭くなっている部分を広げて、呼吸を楽にする」ことが目的で、生まれつきの骨格そのものを変えるわけではありません。狭くなった鼻の穴を広げる、長すぎる軟口蓋を短くする、といった手術で多くの子は呼吸がぐっと楽になり、生活の質が大きく改善します。ただし、進行して喉頭がつぶれてしまった重度の例では、改善が限られることもあります。だからこそ、症状が軽いうち・若いうちの相談が大切です。適応や術式は一頭ごとに異なるため、診察と検査をもとにご説明し、高度な設備が必要な場合は提携施設をご紹介します。
どうして短頭種は熱中症になりやすいのですか?
犬や猫は、人のように全身で汗をかいて体温を下げることができず、主に口を開けたパンティング(ハアハア)で放熱します。短頭種は空気の通り道が狭いため、このパンティングの効率が悪く、体温を下げにくい体質です。さらに、暑さで息を荒くすると気道の粘膜がむくみ、いっそう空気が通りにくくなる悪循環に陥りやすくなります。そのため、短頭種は真夏でなくても、湿度の高い日や興奮・運動だけで熱中症を起こすことがあります。夏場の管理は特に慎重に行ってください。
よく食べたあとに吐いたり、ゲポッと戻したりします。呼吸と関係ありますか?
関係していることがあります。短頭種気道症候群の子は、強い力で息を吸い込むために胸とお腹の圧の差が大きくなり、胃や食道の内容物が逆流しやすくなります。その結果、食べたあとの吐き戻し(吐出)や、よだれ、飲み込みにくさといった消化器のサインを伴うことが少なくありません。呼吸の治療とあわせて胃腸のケアを行うと、両方が落ち着くことがあります。気になる症状は、呼吸のことと合わせてご相談ください。
短頭種を飼っています。日常で気をつけることは何ですか?
一番大切なのは、適正体重を保つこと、暑さ・湿度・興奮を避けること、そして首を圧迫しない胴輪(ハーネス)を使うことです。わずかな体重増加でも、狭い気道はさらに圧迫され呼吸が苦しくなります。夏場はエアコンで室温と湿度を管理し、散歩は涼しい時間に。首輪で強く引くと気道を圧迫するため、お散歩はハーネスに切り替えましょう。そして、いびきや呼吸の音・運動での疲れやすさなど、ふだんの「その子のいつも」を知っておくと、悪化のサインに早く気づけます。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。