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病気の概要
眼瞼内反症(がんけんないはんしょう:Entropion)は、まぶたの縁が内側に巻き込む状態です。巻き込みによって、本来なら外を向いているはずのまつ毛や顔の被毛が、黒目(角膜)や白目(結膜)の表面に当たり続けます。この慢性的な刺激が、痛み・涙・目やに、そして角膜の傷や色素沈着を引き起こします。
上まぶた・下まぶたのどちらにも、また片眼にも両眼にも起こりえます。犬では、遺伝的にかかりやすい犬種が多く知られており、まぶたの病気のなかでもっとも多い先天的な異常のひとつです。
上下眼瞼
内反はどのまぶたにも起こりうる(下眼瞼が多い)
2–3週
若齢の一時的タッキング(仮固定)の目安期間
4タイプ
発生的・加齢性・瘢痕性・痙攣性の主な分類
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眼瞼内反症の主なタイプ
眼瞼内反症は、その成り立ちによっていくつかに分けられます。どのタイプかによって、最初に行うべきことがまったく変わるため、見極めが治療の出発点になります。
発生的・遺伝的な内反
Developmental / Inherited
生まれ持ったまぶたや顔の形が原因で、若い時期から現れるタイプです。好発犬種で多くみられます。まぶたの縁の長さと眼球のバランス、顔のしわの深さなどが関係します。基本的には自然には治らず、外科的に向きを整えることが解決策になります。
痙攣性(けいれんせい)内反
Spastic
目の痛みが引き金となって、まぶたを強く閉じる筋肉が縮み、二次的に巻き込みが起こるタイプです。原因は角膜の傷・結膜炎・異物・ドライアイなどさまざま。もとの痛みを取り除くと内反も解けることがあり、まず原因治療を優先します。
加齢性の内反
Age-related
年齢とともにまぶたの周囲の組織がゆるみ、支えが弱くなって巻き込みが生じるタイプです。高齢の犬でみられます。ゆるみの程度に応じて、まぶたを整える手術を検討します。
瘢痕性(はんこんせい)内反
Cicatricial
外傷・手術・慢性の炎症でできたまぶたの傷あと(瘢痕)が引きつれて、まぶたが内側に引き込まれるタイプです。猫の内反は犬に比べてまれですが、多くはこの瘢痕性で、慢性の結膜炎やヘルペス性角膜炎のあとに生じることがあります。
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好発犬種・好発猫種
眼瞼内反症は、まぶたと顔の形に強く影響されるため、犬種による差が大きい病気です。大きく分けて、顔のしわが深い犬種・短頭種・大型犬で目立ちます。
| タイプ | 代表的な犬種 |
|---|---|
| 顔のしわ・重い上まぶた | シャー・ペイ、チャウ・チャウ(深いしわと重い上眼瞼が巻き込みを招きやすい) |
| 短頭種(顔が短い犬種) | フレンチ・ブルドッグ、パグ、シー・ズーなど。鼻の低さや眼の周りの構造が関係します |
| 大型犬(外眼角の内反) | ラブラドール・レトリバー、ゴールデン・レトリバーなど。目尻(外眼角)側の巻き込みがみられることがあります |
猫の眼瞼内反症は犬ほど多くありませんが、慢性の結膜炎やヘルペスウイルスによる角膜炎のあと、まぶたに傷あが残って生じる瘢痕性の内反がみられることがあります。猫では気づかれにくいため、慢性的に目やにや涙が続く場合は注意が必要です。
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症状・気づき方
眼瞼内反症のサインは、慢性的な目の刺激症状として現れます。派手ではないぶん、「体質かな」と見過ごされがちです。
| サイン | 内容 |
|---|---|
| 目をショボショボさせる | 巻き込んだ毛が当たる不快感・痛みで、目を細める・まぶしがるそぶりをみせます。 |
| 涙・涙やけ | 刺激で涙が増え、目の下の被毛が涙やけで変色することがあります。 |
| 目やに・充血 | 慢性刺激で結膜が充血し、目やにが続きます。 |
| 目をこする・気にする | 前足や床で目をこすったり、顔をこすりつけたりします。 |
| 角膜の濁り・傷 | 進行すると角膜が青白く濁る(浮腫)・黒っぽくなる(色素沈着)・傷(潰瘍)ができます。 |
| まぶたの見た目 | まぶたの縁が内側に巻き込み、まつ毛の並びが外から見えにくくなります。 |
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診断・検査
診断では、**「まぶたが本当に巻き込んでいるのか」「角膜に傷はないか」「痛みによる一時的なものか」**の3点を見極めます。
STEP 1
問診・視診
いつから・どちらの目に・どんなときに気にするかを伺い、まぶたの縁の向き、まつ毛や被毛が角膜に当たっていないかを観察します。
STEP 2
角膜のフルオレセイン染色
角膜に傷(潰瘍)がないかを、専用の色素で染めて確認します。傷の有無と範囲が、治療の緊急度を判断する大切な材料になります。
STEP 3
痙攣性かどうかの見極め
目の表面に点眼の表面麻酔を用いて、痛みによる巻き込み(痙攣性)が和らいで内反が解けるかを確認します。解ける場合は、まず原因の痛みを治療します。
STEP 4
全体の評価と方針決定
巻き込みの範囲・角膜のダメージ・年齢や犬種を総合し、経過観察・原因治療・手術のいずれが最適かを一緒に決めます。
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治療・管理
治療のゴールは、角膜への刺激を断ち、痛みを取り除くことです。タイプと年齢によって、進め方が変わります。
ステップ1:まず原因の見極め(痙攣性かどうか)
痛みが引き金の痙攣性内反であれば、角膜の傷・結膜炎・異物・ドライアイなど、もとの原因の治療を優先します。原因が治れば内反も解けることがあり、その場合は手術を避けられます。
ステップ2:角膜を守る初期対応
角膜に傷がある場合は、保護のための点眼などで角膜のケアを行いながら、巻き込みへの対応を並行して考えます(使用する薬剤はその子の状態に応じて個別に判断します。具体的な内容は担当獣医師にご確認ください)。
ステップ3:若齢の子犬では一時的タッキング
顔が成長途中の子犬では、本格手術を急ぐと成長後に外反(外向き)になることがあります。角膜を守る必要がある場合は、まぶたを一時的に外向きへ固定するタッキング(仮の縫合/医療用ステープル)で刺激を防ぎ、成長を待ちます。目安は数週間で、必要に応じて成長後に整えます。
ステップ4:外科的な整復(成長後・恒久的な矯正)
発生的・加齢性・瘢痕性など、まぶたの形そのものが原因の内反では、巻き込んでいる部分を整える手術(Hotz-Celsus法など)が基本的な解決策です。必要に応じて、まぶたの長さを調整する処置を組み合わせます。しわの深い犬種や成長途中の例では、あえて控えめに整えて再評価する段階的な方針をとることもあります。
ステップ5:術後のケアと再評価
術後は角膜が落ち着くまで点眼などでケアし、巻き込みが十分に取れたか、逆に外反していないかを確認します。まぶたの形や成長によっては、追加の修正を行うことがあります。
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ご家庭での気づき・受診の目安
眼瞼内反症は「体質」と思われて見過ごされやすい病気です。早く気づいて相談することが、角膜を守るいちばんの近道です。
心がけたいこと
- ふだんから左右の目を見比べ、まぶたの向き・充血・涙やけの違いに気づけるようにする
- 好発犬種(短頭種・大型犬・しわの深い犬種)は、目を気にするそぶりに早めに気づく
- 目をショボショボさせる・涙やけ・目やにが続くときは、体質と決めつけず相談する
- 子犬のうちから目の様子を診てもらい、成長に合わせて経過をみる
- 角膜の濁り・黒ずみ・強い痛みは、その日のうちに連絡する
避けたいこと
- 「いつものこと」と、目を気にするそぶりを長期間様子見する
- 自己判断で市販の目薬(人用など)を使う
- 目の周りの毛を無理に切ろうとして、かえって目を傷つける
「目を気にしていそう」という段階でのご相談も歓迎です。眼瞼内反症は、早く整えるほど角膜へのダメージを小さくできる病気です。その子とご家族が幸せに過ごせることを目標に、手術ありきではなく、その子に合った選択肢を一緒に考えます。手術が必要な場合も、見通しと段取りを率直にお伝えします。
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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)
より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。
- 動物のまぶたの病気(眼瞼内反症を含む)/MSD獣医マニュアル・獣医師向け(英語) — 眼瞼内反症の定義・角膜への影響・若齢での一時的タッキング・手術適応を専門的に解説。
- ペットの眼瞼内反症、手術以外の選択肢は?/米国獣医眼科専門医協会(ACVO)・一般向け(英語) — 眼科専門医団体による、内反症の考え方と対応の解説。

