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病気の概要
外傷(がいしょう、Trauma)は、交通事故・落下・咬傷・打撲など、外からの強い力によって体が傷ついた状態です。皮膚の傷や骨折など目に見えるケガに目が行きがちですが、外傷でほんとうに怖いのは、外から見えない体の中の損傷です。
強い衝撃は、胸やお腹の中で出血を起こしたり、肺・肝臓・脾臓・膀胱などの臓器を傷つけたり、横隔膜を破ったりします。これらは、事故の直後には元気そうに見えても、数時間から1〜2日たってから急に悪化することがあります。また、痛みと出血はショック(全身に血液が回らない危険な状態)を引き起こします。だからこそ、外傷は「見た目のケガの手当て」だけでなく、全身をくまなく評価することが欠かせません。事故にあったら、程度にかかわらず一度受診する——これが、その子を守る最も確実な方法です。
氷山の一角
外から見える傷は、体内の損傷のごく一部のことがある
24〜48時間
内臓損傷などが遅れて症状に現れることがある時間の目安
まず全身評価
傷の手当てより先に、呼吸・循環・ショックの評価を優先
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外から見えない、こんな損傷が起こります
外傷では、皮膚の傷の下や体の奥で、命に関わる損傷が同時に起きていることがあります。当院では、目に見える傷だけで安心せず、全身を系統立てて調べます。
お腹の損傷・内出血
肝臓・脾臓・腎臓の損傷による腹腔内出血、膀胱の破裂などです。急にぐったりする・歯ぐきが白い・お腹が張るなどが手がかりになります(関連:急性腹症)。
横隔膜ヘルニア
胸とお腹を仕切る横隔膜が破れ、お腹の臓器が胸へ入り込む状態です。交通事故で起こりやすく、肺が圧迫されて呼吸が苦しくなります。手術が必要になることがあります。
頭・背骨・神経の損傷
頭部外傷による意識の低下、背骨の損傷による麻痺などです。ふらつく・立てない・反応が鈍い・足が動かないなどがサインです。運ぶときに背骨を動かさない配慮が重要になります。
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ショックのサインを見逃さない
外傷では、痛み・出血・臓器の損傷から「ショック」が起こります。ショックは、全身に血液(=酸素)が回らなくなる危険な状態で、早く気づくことが救命につながります。
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応急処置と、安全な運び方
事故の現場では、ご自身の安全を確保したうえで、落ち着いて対応してください。痛みと恐怖から、ふだんおとなしい子でも噛むことがあります。
ステップ1:まず自分の安全と、周囲の安全を確保
道路上なら、二次事故を避けて安全な場所へ。パニックの子は噛むことがあるため、厚手のタオルや上着で体を包むと、落ち着かせつつ安全に扱えます。
ステップ2:出血は「直接圧迫」で止める
出血している場所を、清潔なガーゼ・タオルで数分間しっかり押さえます。血がにじんでも布は外さず、上から重ねます。止血帯(手足を縛る方法)は誤ると危険なため、基本は行いません。
ステップ3:無理に動かさず、水平を保って運ぶ
背骨や骨折を疑うときは、板・毛布を担架のように使い、体を曲げず水平を保って運びます。小型犬・猫は、しっかりした箱・キャリーへ。揺らさず安静にします。
ステップ4:呼吸の妨げを作らない
噛みつき防止でタオルを使う場合も、呼吸が苦しそうな子の口・鼻を覆わないよう注意します。嘔吐しているときは、吐いたものを詰まらせないよう横向きにします。
ステップ5:連絡してから、すぐ受診
応急処置と並行して、動物病院へご連絡ください。事故の内容(何に・どのくらいの強さで)、意識・呼吸の様子を伝えていただけると、受け入れ準備が整います。
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診断・治療
来院後は、傷の手当てより先に、命に関わる異常(呼吸・循環・ショック)がないかを系統立てて評価します。安定化と検査・治療を同時に進めます。
ステップ1:トリアージ(緊急度の評価)と安定化
呼吸・循環・意識・出血の状態を素早く評価し、ショックがあれば点滴・酸素などで安定化を始めます。命に直結する問題から順に対応します。
ステップ2:全身の系統的なチェック
頭からしっぽ、皮膚から体の奥まで、見落としがないよう全身を調べます。胸・お腹・骨・神経・目に見えない損傷を、順に評価します。
ステップ3:画像・血液検査で体内を評価
レントゲンで骨折・胸やお腹の異常(気胸・横隔膜ヘルニアなど)を、超音波でお腹や胸の出血を確認します。血液検査で出血・臓器・ショックの程度を評価します。
ステップ4:止血・創処置・骨折や臓器損傷への対応
出血のコントロール、傷の洗浄・処置、痛みの管理を行います。骨折・横隔膜ヘルニア・臓器損傷・腹腔内出血などは、状態に応じて手術が必要になります。
ステップ5:入院での経過観察(遅発性の損傷に備える)
外傷は、あとから症状が出ることがあります。落ち着いて見えても、必要に応じて入院でモニタリングし、遅れて現れる内出血・臓器障害・感染を早くつかみます。
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予防と、当院の考え方
外傷の多くは、環境を整えることで防げます。当院は「起きてからの対応」と同じくらい、起こさない工夫を大切にしています。
- 交通事故を防ぐ……散歩はリードを必ず着け、道路への飛び出しに注意。庭・玄関からの脱走対策を。
- 落下を防ぐ……ベランダ・窓・階段に柵やネットを。猫は高所からの落下(ハイライズ症候群)に注意します。
- 咬傷を防ぐ……初対面の犬・猫を無理に近づけない。多頭飼育では相性と逃げ場に配慮を。
- 迷子・事故に備える……マイクロチップ・迷子札を。夜間救急の連絡先を控えておきましょう。
外傷は、突然の出来事です。当院は「言葉の奥に耳を澄ます(Empathize)」という価値観のもと、動揺されているご家族の気持ちに寄り添いながら、今できること・見込みを正直にお伝えします。その子とご家族が、これからも安心して過ごせることを目標に、最善の選択肢へ最短でつなぎます。
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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)
より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。
- 犬・猫の救急でまずすべきこと/MSD獣医マニュアル・飼い主向け(英語) — 出血・ショック・骨折・ケガをした動物の運び方など、外傷時の初期対応を飼い主向けにまとめたページ。
- ペットの応急処置の基本/米国獣医師会 AVMA(英語) — 事故・出血・ショックなど、緊急時に飼い主ができる応急手当の基本と備えを、米国獣医師会がまとめた解説。

