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病気の概要
誤食(ごしょく)・中毒(Poisoning)とは、犬や猫が体に有害なものを口にし、その成分によって体に害が及ぶ状態です。人にとっては何でもない食べ物・植物・薬・日用品が、犬や猫では代謝のしくみが違うために強い毒性を示すことがあります。
中毒の怖さは、食べた直後は元気に見えても、あとから症状が現れる点にあります。玉ねぎによる貧血、ブドウによる腎障害、キシリトールによる肝障害などは、時間差で進行します。「元気だから大丈夫」と待つ間に、体の中ではダメージが広がっていることがあるのです。だからこそ、症状の有無にかかわらず「食べたかもしれない」時点で動くことが、その子を守ります。
無症状でも
症状が出る前の受診が、治療の選択肢を最も広げる
約100–200mg/kg
犬のテオブロミン(チョコレート成分)中毒の致死量の目安
現物・量・時刻
治療方針を決めるうえで役立つ3つの情報
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犬・猫で中毒を起こす主なもの
身近なものの中に、犬・猫にとって危険なものが数多くあります。以下は代表的なもので、これがすべてではありません。迷ったら「食べさせない」「相談する」を基本にしてください。
| 分類 | 代表例 | 主な危険 |
|---|---|---|
| 食べ物 | 玉ねぎ・長ねぎ・にら・にんにく(ネギ類) | 赤血球を壊し、貧血を起こす(加熱しても危険) |
| 食べ物 | チョコレート・ココア | テオブロミンによる嘔吐・興奮・不整脈・けいれん |
| 食べ物 | ブドウ・レーズン | 急性腎障害(少量でも起こりうる) |
| 食べ物 | キシリトール(ガム・お菓子・歯磨き剤) | 重い低血糖・肝障害(犬でとくに危険) |
| 食べ物 | マカダミアナッツ・アルコール・カフェイン・生のパン生地 | 神経症状・ふらつき・嘔吐など |
| 植物 | ユリ(猫)・スズラン・アサガオの種・観葉植物の一部 | ユリは猫で重い急性腎障害。花瓶の水も危険 |
| 薬 | 人間の解熱鎮痛薬・風邪薬・湿布・サプリ | 少量でも肝・腎・血液に重い障害(とくに猫) |
| 日用品 | 保冷剤・不凍液(エチレングリコール)・電池・洗剤・タバコ | 神経・腎障害、腐食、電池は消化管の損傷 |
| 屋外 | 殺鼠剤(さっそざい)・ナメクジ駆除剤・除草剤 | 出血が止まらない・けいれんなど、命に関わる |
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中毒量の目安を計算する
「食べてしまったけれど、どれくらい危ないの?」——その不安に、目安で答えるツールです。体重と、食べたもの・量を入れると、体重あたりの摂取量(mg/kg など)と、リスクの目安を表示します。チョコレート・キシリトール・カフェイン・玉ねぎ/ネギ類・マカダミアに対応しています。
食べてしまったもの
板チョコ1枚≒50g、ひとかけ≒5g
体重と食べた量を入力すると、中毒量の目安とリスクの目安が表示されます。
※ 表示される数値・リスク判定は、獣医毒性学の一次情報(Merck/MSD 獣医マニュアル、ASPCA など)にもとづく目安です。実際の毒性は、製品ごとの成分量・体質・持病・食べた時刻などで大きく変わり、「この量以下なら安全」とは言い切れません。中毒は時間差で悪化することがあり、無症状でも油断は禁物です。少しでも心配なときは、必ず担当獣医師にご相談ください。
計算できない ―「量に関係なく」危険なもの
次の中毒は、安全な量が分かっておらず、ごく少量でも重い障害を起こすことがあります。量にかかわらず、口にした時点でご連絡ください。
🍇 ブドウ・レーズン(犬)
安全量・毒性量が確立していません(原因は酒石酸と考えられています)。ごく少量でも急性腎障害を起こした例があり、「少しだから大丈夫」は通用しません。
🌸 ユリ(猫)
花・葉・花粉、生けた花瓶の水をなめただけでも、猫では重い急性腎障害を起こすことがあります。触れた・かじった可能性があれば緊急でご連絡ください。
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なぜ人は平気で、犬・猫は危険なのか
同じものを食べても、動物種によって影響が大きく異なります。理由は、体の中で毒を処理する「代謝」のしくみが違うことにあります。
分解できない・遅い
チョコレートのテオブロミンは、犬では分解がとても遅く、体内に長くとどまって作用します。人の何倍も影響を受けやすいのは、このためです。
赤血球が壊れやすい
ネギ類に含まれる成分は、犬・猫の赤血球を酸化ダメージで壊し、貧血を起こします。加熱調理しても毒性は消えず、スープやハンバーグなどでも起こります。
猫はとくに薬に弱い
猫は特定の薬(人間の解熱鎮痛薬など)を分解する肝臓の働きが乏しく、ごく少量でも中毒を起こします。「人の薬を少しだけ」は、猫では絶対に避けてください。
少量でも起こる中毒がある
ブドウ・レーズンやキシリトールは、なぜ中毒が起こるかまだ十分に解明されておらず、「少量なら安全」という明確な線引きがありません。少しでも危険と考えて対応します。
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中毒のサイン(物質により異なります)
中毒の症状は、食べたものによって大きく変わります。次のようなサインがあれば、中毒を疑って受診してください。ただし、症状が出る前に受診するのが理想です。
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家庭での対応 ― やること・やってはいけないこと
「早く吐かせなきゃ」と焦る気持ちは自然ですが、自己流の催吐はかえって危険です。落ち着いて、次の対応をしてください。
やること
・まずお電話ください。物質と状況から、催吐が適切か・すぐ受診かを判断します
・食べたもの/パッケージ/現物・写真を確保する
・量の見当(個数・グラム・錠数)と時刻をメモする
・吐いたものがあれば捨てずに持参する
・落ち着いて、できるだけ早く受診できるよう動く
やってはいけないこと
・自己判断で吐かせる(意識低下・けいれん時、石油・強酸強アルカリ・鋭利物では危険)
・塩を飲ませて吐かせる(食塩中毒の危険)
・牛乳やオイルを飲ませる(根拠がなく誤嚥の危険)
・「様子を見る」で受診を遅らせる
・ネットの情報だけで家庭処置を完結させる
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診断・治療
治療の基本は、「①これ以上吸収させない」「②毒を早く出す・中和する」「③臓器を守る」の3本柱です。物質・量・経過時間・症状に応じて、組み合わせて対応します。
ステップ1:問診・状態の評価(トリアージ)
何を・どれくらい・いつ食べたか、そして現在の症状(意識・呼吸・心拍など)を確認し、緊急度を判断します。危険なサインがあれば、検査より先に安定化の処置を始めます。
ステップ2:吸収を止める(催吐・吸着)
適応があれば、催吐で胃の中身を出します。加えて、毒素を吸着させて便として排出させる処置(活性炭など)を状態に応じて行い、体への吸収を抑えます。
ステップ3:点滴・全身管理で臓器を守る
点滴で毒素の排泄を促し、腎臓・肝臓など臓器への負担を減らします。嘔吐・けいれん・不整脈などの症状には、それぞれに応じた処置を行います。
ステップ4:解毒薬・特異的な治療(あれば)
一部の中毒には、専用の解毒薬や特異的な治療があります(例:不凍液・特定の薬物など)。物質が特定できると、こうした的を絞った治療が可能になります。
ステップ5:入院でのモニタリング
時間差で症状が出る中毒では、見た目が落ち着いても入院で経過を観察します。血液検査で腎臓・肝臓・血球の値を追い、遅れて現れる障害を早くつかみます。
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予防 ― 「起こさない」がいちばんの治療
中毒は、環境を整えることで多くを防げます。当院の理念である「選択肢を最大化する(Tenacious)」は、起きてからの選択肢だけでなく、そもそも起こさない工夫にも通じます。
- 食べ物……ネギ類・チョコ・ブドウ/レーズン・キシリトール製品は、犬・猫の届かない場所へ。テーブルやカバンの中も要注意です。
- 植物……猫のいる家にはユリ・ユリに似た花を持ち込まない。観葉植物も種類を確認しましょう。
- 薬・サプリ……人の薬は必ず戸棚などにしまう。「人の薬を分けて与える」は絶対にしないでください。
- 日用品・屋外……保冷剤・不凍液・電池・洗剤・殺鼠剤などは密閉・施錠して保管。散歩中の拾い食いにも注意します。
- もしもに備える……かかりつけと夜間救急の連絡先を、すぐ見える場所に控えておきましょう。
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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)
より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。
- 動物の中毒に関する情報/ASPCA Animal Poison Control(英語) — 米国の動物愛護団体ASPCAによる、危険な食べ物・植物・日用品の一覧と、24時間の中毒相談窓口の案内。
- ペットが危険なものを口にしたら/Pet Poison Helpline(英語) — 犬・猫にとって危険な物質を検索できる、獣医毒性学の専門機関によるデータベース。
- 犬・猫の救急でまずすべきこと/MSD獣医マニュアル・飼い主向け(英語) — 中毒を含む緊急時の初期対応を、飼い主向けにまとめたページ。

