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病気の概要
急性腹症(きゅうせいふくしょう、Acute Abdomen)とは、お腹の中で急に起きた、強い痛みや重い異常を伴う状態の総称です。原因はさまざまですが、共通するのは放置すると命に関わり、しばしば緊急の処置や手術が必要になるという点です。
代表的なのが、大型犬に多い胃拡張捻転(GDV)です。胃がガスや液体で急にふくらみ(拡張)、さらにねじれる(捻転)と、胃や周囲の臓器への血流が止まり、ショックへと一気に進みます。ほかにも、異物などによる腸閉塞、胃や腸に穴があく消化管穿孔、それに続く腹膜炎、膵炎や臓器の破裂による腹腔内出血などが、急性腹症を引き起こします。いずれも「お腹の中で今、危険なことが起きている」サインであり、早い診断と対応が救命を左右します。
数時間
胃拡張捻転(GDV)が命に関わるまでの時間の目安
約15%
適切に治療されたGDVでも報告される死亡率の目安
緊急手術
GDV・腸閉塞・穿孔などは外科が救命の柱になることが多い
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胃拡張捻転(GDV)― 大型犬のもっとも怖い救急
GDV(Gastric Dilatation-Volvulus)は、急性腹症の中でもとくに緊急性が高く、大型犬の飼い主さまにぜひ知っておいていただきたい病気です。
STEP 1
胃がガス・液体で急に膨らむ(拡張)
食後の運動などをきっかけに、胃にガスや液体がたまって大きく膨らむ。お腹が張り、吐こうとするのに吐けない「空えずき」が典型的なサインになる。
STEP 2
膨らんだ胃がねじれる(捻転)
膨らんだ胃が軸を中心に回転してねじれると、胃の入口と出口がふさがり、ガスも内容物も逃げ場を失う。膨満がさらに進む。
STEP 3
血流が止まり、周囲の臓器も巻き込む
ねじれた胃と、近くを通る太い血管が圧迫され、胃・脾臓などへの血流が途絶える。全身に血液が戻りにくくなり、循環が破綻し始める。
STEP 4
ショック・組織の壊死 → 命に関わる
ショックが進み、血流を失った胃の壁が傷んで壊死する。不整脈や全身の障害を伴い、放置すれば短時間で命を落とす。だからこそ「疑ったらすぐ」が鉄則になる。
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GDV以外の主な急性腹症
お腹の緊急事態は、GDVだけではありません。犬・猫ともに、次のような原因で急性腹症が起こります。
腸閉塞(異物など)
おもちゃ・布・骨・果物の種などが腸に詰まり、内容物が通れなくなる状態です。何度も吐く・食欲がない・お腹を痛がるなどが現れます。とくにひも状の異物は腸を傷つけ、穴があく危険があり緊急性が高くなります。
消化管穿孔・腹膜炎
胃や腸に穴があき、内容物がお腹の中に漏れて激しい炎症(腹膜炎)を起こした状態です。急激に悪化し、ショックに至ります。異物・潰瘍・腫瘍などが背景になります。緊急手術が必要です。
重い膵炎・その他
膵臓の強い炎症(膵炎)でも、激しい腹痛・嘔吐が起こります。ほかに胆のうの病気、尿路の破裂、子宮の感染(子宮蓄膿症)など、お腹の痛みの背景はさまざまです。
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見逃してはいけないサイン
急性腹症は、原因が違っても共通するサインがあります。次のような様子は、お腹の緊急事態を疑う手がかりです。
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診断・検査
来院後は、ショックの有無と、お腹の中で何が起きているかを素早く見極めます。命に関わる状態では、安定化と検査を同時に進めます。
ステップ1:身体検査・お腹の触診とショックの評価
お腹の張り・痛み・硬さを確認し、歯ぐきの色・心拍・体温などから全身状態(ショックの程度)を評価します。危険なサインがあれば、すぐに安定化を始めます。
ステップ2:レントゲン検査
お腹のレントゲンは、GDVの診断で最も重要な検査です。ねじれた胃に特徴的な像(いわゆる「ダブルバブル」)や、異物・ガスの分布・閉塞のサインを確認します。
ステップ3:超音波検査(エコー)
お腹の中の液体(出血・腹水)の有無、腸の動きや詰まり、臓器の状態を評価します。腹腔内出血や腫瘍の破裂などの発見に役立ちます。
ステップ4:血液検査・心電図
臓器の状態・血球・電解質・血液の酸性度などを確認し、重症度を評価します。GDVでは不整脈が起こりやすいため、心電図での監視も重要になります。
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治療 ― 安定化と、必要な緊急手術
治療は「①ショックからの安定化」と「②原因の外科的な解決」を、多くは並行して進めます。GDV・腸閉塞・穿孔などは、手術が救命の柱になります。
ステップ1:ショックの安定化(点滴など)
まず点滴で循環を立て直し、ショックに対応します。GDVでは、麻酔・手術に耐えられる状態へ整えることが、救命の第一歩になります。
ステップ2:胃の減圧(GDVの場合)
GDVでは、膨らんだ胃からガスを抜いて圧を下げる処置(減圧)を行い、血流と呼吸への圧迫を和らげます。手術前の重要な安定化ステップです。
ステップ3:緊急手術(開腹)
GDVでは、ねじれた胃を元の位置に戻し、傷んだ組織の状態を確認します。腸閉塞では異物の摘出、穿孔・腹膜炎ではお腹の洗浄と修復を行います。原因に応じた外科処置が必要です。
ステップ4:再発予防の胃固定(GDVの場合)
GDVの手術では、再発を防ぐために胃を腹壁に固定する「胃固定術」を同時に行うのが一般的です。これにより、再びねじれるリスクを大きく減らせます。
ステップ5:入院での集中管理
手術後は、不整脈・臓器障害・痛みなどを見ながら、入院で全身管理を続けます。状態が落ち着き、食事がとれるようになるまで、そばで見守ります。
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当院の考え方 ― 選択肢を狭めない
急性腹症は、飼い主さまが突然の決断を迫られる、つらい場面です。当院は「選択肢を最大化する(Tenacious)」という価値観のもと、その子にとっての最善を、ご家族と一緒に考えます。緊急の場面でも、今できること・見込み・費用の見通しを、できるだけ正直に共有し、納得して進んでいただけるよう努めます。
大型犬のGDVのように、予防できる救急もあります。該当する犬種の飼い主さまには、日ごろの食事の工夫や、予防的胃固定術という選択肢を、健康なうちからお伝えしています。「知っていれば防げた」を減らすことも、診察室の延長としてのウェブサイトの役割だと考えています。
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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)
より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。
- 胃拡張捻転(GDV)/米国獣医外科学会(ACVS・英語) — GDVの原因・危険因子・診断・手術(減圧・整復・胃固定)・予防を、専門家がまとめた解説。
- 犬・猫の胃拡張と捻転/MSD獣医マニュアル・獣医師向け(英語) — GDVの病態・診断・治療を専門的に解説した一次情報。
- 犬・猫の救急でまずすべきこと/MSD獣医マニュアル・飼い主向け(英語) — お腹の緊急を含む、緊急時の初期対応と搬送の注意を飼い主向けにまとめたページ。

