本文へスキップ
古谷動物病院古谷動物病院FURUYA ANIMAL CLINICご予約

EPILEPSY

犬と猫のてんかん・発作

けいれんは、脳からのSOS。慌てず、まず「時間」と「動画」を。

「体をつっぱらせて、がくがくと震えた」「泡を吹いて意識がなくなった」——愛犬・愛猫の発作は、ご家族にとって忘れられないほど怖い出来事です。でも、多くのてんかんは、正しく見立てて薬で管理すれば、発作を減らしてその子らしい毎日を守ることができます。まず知っておいてほしいのは、「発作の長さを計ること」と「様子を動画に残すこと」。それが診断と治療のいちばんの助けになります。

  • 神経
  • 救急

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

とくに気をつけたい犬種・猫種

好発(かかりやすい傾向)が知られている犬種・猫種です。必ずかかるわけではありません。

01

病気の概要

てんかんは、脳の神経細胞が一時的に過剰に興奮することで、けいれんなどの「発作」を繰り返し起こす病気です。犬では神経の病気の中でもっとも多いもののひとつで、一次診療ではおよそ100頭に1頭弱が発作を経験するとされます。

発作は見た目がとても激しく、ご家族を強い不安に陥れます。しかし多くのてんかんは、正しく見立てて管理すれば、発作の回数と重さを減らし、その子らしい生活を守ることができる病気です。

6か月〜6歳

特発性てんかんが発症しやすい年齢(発症の中央値は約2.5歳)

1〜2分

多くの発作が自然に治まるまでのおおよその時間

5分以上

この長さを超える発作は緊急事態(てんかん重積の目安)

02

「発作」と「てんかん」は違います

まず言葉を整理します。この違いを知っておくと、検査や治療の意味が理解しやすくなります。

  • 発作(てんかん発作):脳の神経が過剰に興奮して起こる症状そのもの。1回きりのこともあります。
  • てんかん:その発作を繰り返す状態を指す「病名」。

そして、発作の原因は脳の病気だけとは限りません。低血糖・重い肝臓の病気・中毒など、脳以外の全身の異常でも発作は起こります。だからこそ、「発作を起こした=てんかん」と決めつけず、なぜ起きたのかを見きわめることが出発点になります。

03

てんかん・発作の3つのタイプ(国際分類)

国際的な専門家会議(IVETF)は、発作の原因を大きく3つに分類しています。どのタイプかによって、必要な検査も治療も変わります。

タイプ原因特徴
特発性てんかん脳に構造的な異常が見つからない。遺伝的な素因が関わると考えられる若い犬(6か月〜6歳)に多い。発作と発作の間は元気で、神経の異常もない
構造的てんかん脳腫瘍・脳炎(髄膜脳炎)・脳梗塞・奇形・頭のケガなど、脳そのものの病気高齢での発症や、発作の間にも神経症状(麻痺・行動変化など)が残ることがある
反応性発作低血糖・肝臓の病気(肝性脳症)・中毒など、脳以外の全身異常への反応厳密には「てんかん」ではない。原因を治すと発作も治まる

04

発作はどう見える?

発作は「全身のけいれん」だけではありません。次のように、さまざまな見え方をします。

  • 全般発作:意識を失い、体をつっぱらせて、四肢をがくがくさせる。よだれ・失禁・排便を伴うこともある(もっとも典型的)
  • 焦点発作:顔や口元だけがぴくつく、片側の手足だけがけいれんする、宙を噛む、といった部分的な症状
  • 発作の前後:直前に落ち着かずそわそわする、直後にボーッとする・ふらつく・一時的に目が見えにくそうにする(発作後期)

05

好発犬種

特発性てんかんは遺伝的な素因が関わると考えられ、次のような犬種で多く報告されています。ボーダー・コリー、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、ビーグル、ボクサー、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、コッカー・スパニエルなどが代表的です。加えて、フレンチ・ブルドッグ、チワワ、ポメラニアン、パグなどの小型犬でも発作は多くみられます。

ただし、これらの犬種以外でもてんかんは起こります。犬種はあくまで「起こりやすさ」の目安であり、診断は個々の子の経過と検査で行います。

06

診断 ― まず「脳以外の原因」を除外する

てんかんには、これ一つで確定できる検査はありません。他の原因を一つずつ除外していくことで診断に近づきます。

  1. ステップ1問診・発作の情報整理

    いつから・どんな発作が・どのくらいの長さで・どのくらいの頻度で起きているか。ご家族が撮った動画発作日誌が、ここで大きな力を発揮します。発症年齢も重要な手がかりです。

  2. ステップ2身体・神経学的検査

    発作と発作の間(発作間欠期)に、麻痺・行動の変化などの神経の異常がないかを確認します。異常がなければ特発性てんかんを、あれば脳そのものの病気(構造的てんかん)を、より疑います。

  3. ステップ3血液検査などで反応性発作を除外

    低血糖・肝臓の病気・電解質異常・中毒など、脳以外が原因の発作(反応性発作)を血液検査などで調べます。これらが見つかれば、その原因の治療が最優先になります。

  4. ステップ4MRI・脳脊髄液(CSF)検査

    次のいずれかに当てはまる場合は、脳腫瘍・脳炎などを調べるためにMRIとCSF検査が強くすすめられます——発症が生後6か月未満または6歳以上/発作間欠期にも神経の異常がある/最初から群発・重積で発症した/薬が効きにくい。必要と判断した場合、提携する画像診断施設「CAMIC城南」へご紹介します。

07

緊急対応 ― この2つは「待てない」発作です

ほとんどの発作は1〜2分で自然に治まり、ただちに命に関わるものではありません。しかし、次の2つは命と脳を守るために緊急の治療が必要です。

発作が起きたときの、家庭での対応

  1. ステップ1慌てず、時刻を確認して時間を計る

    「何時に始まり、何分続いたか」を確認します。パニックにならず、まず時計かスマートフォンを見てください。

  2. ステップ2周囲の危険を遠ざける

    階段・家具の角・水場などから遠ざけ、二次的なケガを防ぎます。無理に抱き上げず、そっと見守ります。

  3. ステップ3口の中には絶対に手を入れない

    「舌を飲み込む」ことはありません。口に手やものを入れると、咬まれて大ケガをするおそれがあります。絶対にしないでください。

  4. ステップ4動画を撮る

    可能なら発作の様子をスマートフォンで撮影します。全身の動き・目の向き・持続時間がわかるように撮れると理想的です。

  5. ステップ5治まったら連絡・受診

    短時間で治まっても、初めての発作や頻度が増えている場合は受診を。5分以上続く・繰り返す場合は、治まるのを待たずすぐに連絡してください。

08

治療・管理 ― 発作を「ゼロ」ではなく「減らす」

特発性てんかんは、多くの場合「完治」ではなく「発作とうまくつき合っていく」病気です。治療の目標は、発作を無理にゼロにすることではなく、発作の回数と重さを減らし、薬の負担を抑えながら、その子とご家族が穏やかに過ごせる時間を最大にすることです。

管理のうえで、ご家庭の力がとても大切になります。

  • 発作日誌をつける:発作の日付・時刻・長さ・様子を記録。薬の効果を判断し、量を調整する土台になります
  • 薬を毎日決まった時間に:血中濃度を安定させるため、飲み忘れ・時間のばらつきを減らします
  • 定期的な血液検査:薬の効き具合や肝臓などへの影響を確認しながら、安全に続けます
  • 誘因を減らす:強いストレス・睡眠不足・急な生活の変化が発作の引き金になることがあります

DEPTHの一つ「T=Tenacious(選択肢を最大化する)」の考え方で、一度の処方で終わりにせず、その子に合った管理を根気強く一緒に探し続ける——それが当院の姿勢です。

09

さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

はじめてご来院される方へ

ご予約から診察・治療方針のご提案までの流れを、わかりやすくまとめています。

はじめての方はこちら

Q&A

よくあるご質問

発作が起きたら、まず何をすればいいですか。
いちばん大切なのは「慌てないこと」「時間を計ること」「動画を撮ること」の3つです。まず、その子が階段や家具の角などで二次的にケガをしないよう、周囲の危険なものを遠ざけてください。口の中に手を入れるのは危険なので絶対にしないでください(舌を飲み込むことはありません)。多くの発作は1〜2分で自然に治まります。可能であればスマートフォンで発作の様子を動画に撮り、始まった時刻と続いた長さを記録してください。発作が5分以上続く、または短時間に繰り返す場合は緊急事態です。すぐに当院、夜間は提携の夜間救急へご連絡ください。
てんかんと発作はどう違うのですか。
「発作(てんかん発作)」は、脳の神経が一時的に過剰に興奮して起こる症状そのものを指します。一方「てんかん」は、その発作を「繰り返す」状態をいう病名です。1回だけの発作がすべててんかんというわけではなく、また、発作の原因は脳の病気だけでなく、低血糖・肝臓の病気・中毒など脳以外の異常(反応性発作)のこともあります。だからこそ、発作を起こしたら「なぜ起きたのか」を調べることが大切です。
発作を起こしたら、必ずすぐ薬を飲ませ続けるのですか。
いいえ、すべての発作ですぐに薬を始めるわけではありません。国際的な指針では、発作が半年に2回以上ある、群発発作やてんかん重積を起こした、発作の後の状態が重い、といった目安をもとに、抗てんかん薬を始めるタイミングをご家族と相談して決めます。薬は「発作をゼロにする」ことより「発作の回数と重さを減らし、生活の質を保つ」ことが目標です。一度始めた薬を自己判断で急にやめると、かえって重い発作を招くことがあるため、必ず獣医師と相談しながら調整します。
てんかんの検査ではMRIが必要ですか。
必ずしも全例で必要ではありません。まず血液検査などで低血糖・肝臓の異常・中毒といった「脳以外が原因の発作」を除外することが先です。そのうえで、発作が始まった年齢が生後6か月未満または6歳以上、発作と発作の間にも神経の異常がある、最初から群発・重積で発症した、薬が効きにくいといった場合は、脳腫瘍や炎症などを調べるためにMRIと脳脊髄液検査が強くすすめられます。当院ではMRIが必要と判断した場合、提携する画像診断施設へ迅速にご紹介します。
薬を飲めば発作は完全に止まりますか。
多くの子で発作の回数や重さを大きく減らせますが、「完全にゼロにする」ことを保証はできません。適切な薬でうまくコントロールできる子が多い一方で、薬を複数組み合わせても発作が残る「難治性」の子も一定数います。それでも、発作を減らし、発作のない穏やかな時間をできるだけ長く保つことには大きな意味があります。当院は、発作日誌をつけながらその子に合った管理を根気強く一緒に探していきます。
猫もてんかんになりますか。
はい、猫にもてんかんはあります。犬に比べると、脳炎や脳腫瘍、頭のケガなど「原因のある発作(構造的てんかん)」の割合が比較的高いとされ、原因を調べることがより重要になります。一方で、原因が特定できない特発性てんかんの猫も薬でよくコントロールできることが多くあります。犬と同じく、発作の様子を動画に残し、頻度を記録して受診することが診断の助けになります。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。