前十字靭帯断裂そのものの概要・診断については前十字靭帯断裂のページを、3つの術式の比較と選び方については手術のページをご覧ください。このページでは、FLO法(関節外制動術、英語では extracapsular lateral suture stabilisation / lateral fabello-tibial suture)について詳しく解説します。
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この手術の目的と適応
FLO法は1970年代から行われてきた、もっとも歴史の長い術式です。膝の外側で、大腿骨の裏にある小さな骨(ファベラ)と脛骨の上端に開けた孔とのあいだに人工の糸を通し、関節の外側から膝を制動します。
TPLOやTTAが骨の形を変えて力を打ち消す手術であるのに対し、FLO法は骨には手をつけず、外から支えを足す手術です。糸が支えているあいだに関節のまわりに丈夫な線維組織ができ、最終的にはその線維化が膝の安定を担います。糸はいわば、線維化ができるまでの足場です。
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手術の内容
膝の外側の皮膚を切開し、関節内と半月板を確認したうえで、脛骨の上端に細い孔を開けます。ファベラの周囲にかけた人工の糸をこの孔に通し、8の字を描くように張って固定します。骨を切らないため、骨がつくのを待つ工程がありません。
糸には強度の高い人工素材が用いられ、専用の金具で締結する方法などがあります。締める強さは強すぎても弱すぎてもいけません。強すぎれば関節の動きが制限され、弱すぎれば不安定さが残ります。
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半月板の確認
前十字靭帯が断裂した膝では、内側半月板も同時に傷んでいることが少なくありません。FLO法でも手術の際に関節内と半月板を確認し、損傷があれば処置します。
手術のときに無傷だった半月板が後から損傷する遅発性半月板損傷は、この術式では最大7%と報告されています。順調だったのに急に足を挙げたときは、この可能性を考えて早めにご相談ください。
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手術の流れ
ステップ1:診断・術式の検討
触診とレントゲンで膝の不安定性と関節炎の程度を評価し、体格・年齢・持病をふまえて術式を検討します。
ステップ2:術前検査・手術のご説明(別日)
麻酔のための術前検査を行い、手術の内容・回復までの見通し・起こりうる合併症をくわしくご説明します。持病がある場合は麻酔計画も併せてご説明します。
ステップ3:手術当日:絶食で来院
当日は食事を抜いてご来院ください(お水は飲ませていただいてかまいません)。
ステップ4:手術・麻酔覚醒後にご連絡
関節内と半月板を確認したうえで、糸をかけて関節を制動します。麻酔から覚めたらお電話でご報告します。
ステップ5:入院・退院・抜糸
状態に応じて入院期間を決めます。7〜10日ほどで抜糸・再診を行います。
ステップ6:6〜8週の運動制限を経て段階的に再開
線維化が進むまでしっかり運動を制限し、経過を見ながら段階的に通常の運動へ戻します。
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術後の経過とリハビリ
骨を切らない手術ですが、回復を急いではいけないという点は骨切り術と変わりません。膝を支える線維組織ができあがるまでのあいだに無理をすると、糸が緩んだり切れたりして、手術の効果そのものが損なわれます。
- 〜2週:室内でのケージ・サークル管理。排泄はリードをつけた短時間のみ
- 2〜6週:滑らない床で、リードをつけた短い散歩から少しずつ。走る・跳ぶ・階段は禁止
- 6〜8週:経過を確認しながら、歩く時間を段階的に延ばします
- 8週以降:問題がなければ通常の運動へ。以降も定期的に膝の状態を確認します
体重管理は、この術式ではとくに重要です。体重がそのまま糸にかかる力になるためです。必要に応じて食事の内容と量も一緒に見直します。
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予後・起こりうる合併症
臨床評価ではおよそ85%で満足のいく結果が得られ、飼い主の82%が良好な機能回復を報告したとされています。一方で、歩き方が完全に正常と評価されるのは6割程度とする報告もあり、骨切り術と比べて機能回復の水準にはやや幅があります。
また、関節外制動術を受けた犬の10〜20%が生涯のうちに再治療や再手術を必要とするという報告もあります。長期的な安定性という点では骨切り術に及ばない、というのが率直なところです。
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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)
より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。
- 関節外制動術(ELSS)/RCVS Knowledge・犬の十字靭帯レジストリ(英語) — 英国の獣医専門団体による飼い主向け解説。手術内容・適応・回復・合併症をまとめている。
- 犬の前十字靭帯疾患/ACVS・米国獣医外科学会(英語) — 病態・診断・関節外制動術を含む治療・予後を専門学会が解説。
- 犬の前十字靭帯疾患:治療法のエビデンス(Today's Veterinary Practice・英語) — 保存療法・関節外制動術・骨切り術の成績と合併症を、報告データをもとに比較した総説。

