まずご自宅で確認したいこと
無理に足を引っ張ったり動かしたりせず、まずは以下のポイントをチェックしてみましょう。
1. 足の裏(肉球)と爪の確認
散歩コースに落ちていたトゲやガラス片、小さな石などが肉球に刺さっていないか確認します。夏場は熱くなったアスファルトによる火傷、冬場は乾燥による肉球の変化が原因で足を浮かせることもあります。爪が伸びすぎていたり、どこかに引っかけて割れたりしていないかも同時に確認しましょう。
2. 腫れや熱感の有無
左右の足を優しく触り比べてみてください。関節付近が腫れていたり、熱を持っていたりする場合は、内部で炎症が起きている可能性があります。
3. 「いつ」「どのように」足を上げているか
- 歩き始めに数歩だけケンケンをする
- 高いところから飛び降りた直後に足を上げた
- 階段の上り下りを嫌がる仕草がある
- しばらく歩くと普通に戻る
足を上げる行動が持続的なのか、再現性があるか(あればどんな条件で)を把握できるとよいでしょう。スマートフォンで動画を撮影しておくと、診察の手助けになります。
足を上げる主な原因
犬が足を浮かせる「ケンケン」の原因はさまざまですが、小型犬において最も多いのは骨や関節、靭帯といった整形外科領域のトラブルです。ここでは特に多い膝蓋骨脱臼(パテラ)と前十字靭帯断裂についてお話しします。
膝蓋骨脱臼(パテラ)
膝のお皿(膝蓋骨)が本来収まるべき溝から外れてしまう状態を指します。小型犬に圧倒的に多く見られます。
| グレード | 状態 |
|---|---|
| グレード1 | 指で押すと外れるが、離すとすぐ戻る。無症状のことが多い |
| グレード2 | 膝を曲げると外れるが、足を伸ばすと戻る。時々スキップのような歩き方をする |
| グレード3 | お皿が常に外れた状態。指で戻せるが、すぐにまた外れる |
| グレード4 | 常に外れた状態で、指でも戻せない。足を曲げたまま歩くなど、常に歩行の異常がみられる |
パテラは進行性の疾患であり、放置すると骨の変形や関節炎を招くため、早期の診断が重要です。
前十字靭帯の損傷・断裂
膝の関節を安定させている前十字靭帯が傷ついたり切れたりする疾患です。散歩中の急なダッシュやターン、段差からの着地などで負荷がかかり発症します。特にパテラを抱えているワンちゃんは、膝の安定性が低いため、靭帯を痛めるリスクが高くなります。
「様子をみてもいい?」が大変なことに
「痛がっていないから、まだ大丈夫」という判断は、後になって大変な事態につながるリスクがあります。足の異常をそのままにすると、次のような二次的な影響が出ることがあります。
- 反対側の足への過剰負担:片足をかばって歩くことで、健康だったもう片方の足や腰に大きな負担がかかり、両足とも悪くしてしまう負の連鎖が起こります
- 慢性的な関節炎:関節が不安定な状態が続くと、軟骨がすり減り、生涯続く痛みが出ることがあります
- 筋肉の萎縮:足を浮かせる時間が長くなると、その足の筋肉は次第に細くなります。筋肉が落ちると、たとえ手術をしても回復に時間がかかってしまいます
その子に合わせた治療プランをご提案します
当院では、痛みを取るだけでなく「一生自分の足で楽しく散歩ができること」を目標に治療方針をご提案しています。診断結果に基づき、ご家族のライフスタイルやワンちゃんの年齢・状態に合わせて、ご相談しながら進めます。
- 保存療法(内科的ケア):体重管理、サプリメントの活用、レーザー治療、リハビリテーションなど
- 外科的治療(手術):グレードが高い場合や痛みが強い場合に検討します。手術のメリット・デメリットをご説明し、ご納得いただいた上で進めます
散歩中の「ケンケン」や「足を浮かせる動作」は、大切なSOSかもしれません。「この程度の違和感で受診してもいいのかな」とご心配なさらず、お気軽にご相談ください。詳しくは整形外科のページもご覧ください。

