誤飲・誤食は、どんなに注意深い飼い主様でも起こり得る、家庭内事故の代表格です。大切なのは「食べたかもしれない」と気づいた瞬間に、どれだけ迅速かつ冷静に行動できるかです。
誤飲・誤食が疑われる時にまずすべきこと
お散歩中の拾い食いや、室内での異物誤飲による救急のご相談をよくお受けします。誤食に気がついた場合は、まず落ち着いて以下の情報を整理してください。
- 何を飲んだか(おもちゃ、紐、薬、食べ物など)
- いつ飲んだか(数分前か、数時間前か)
- どれくらいの量を飲んだか(一部か、丸ごとか)
この情報が正確であるほど、最適な処置を選択しやすくなります。
自宅で様子を見てはいけないケース
すぐに受診が必要な「危険なサイン」
以下の症状が見られる場合は、胃から腸へ異物が移動し、腸閉塞を起こしている可能性があります。これらは一刻を争う救急事態です。
- 何度も吐こうとするが、何も出ない(空嘔吐)
- 激しい嘔吐を繰り返す
- お腹を触られるのを嫌がる、背中を丸めて痛そうにしている
- ぐったりしていて、呼びかけに対する反応が鈍い
特に注意が必要な異物
異物の種類によっては、時間の経過とともに状況が悪化します。
- 紐状の異物(糸、リボン、デンタルフロスなど):特に猫に多く、腸を手繰り寄せてアコーディオン状に傷つけてしまいます
- 中毒物質(チョコレート、ネギ類、保冷剤、タバコなど):消化管のダメージだけでなく、特定の臓器にも影響を及ぼします
- 鋭利なもの(竹串、クリップ、針など):食道や胃を貫通させる恐れがあります
これらは様子を見ても改善することはありません。迷わずすぐにお電話ください。
病院での治療の流れ
ワンちゃん・ネコちゃんの状態や異物の種類に合わせて、最適な除去方法を検討します。
吐かせる処置(催吐処置)の判断
飲み込んでから時間が経過しておらず(概ね1〜2時間以内)、胃の中に異物がある場合、お薬を使って吐かせることができます。ただし、尖ったものや強酸・アルカリ物質などは、吐き出す際にかえって食道を傷つけるため、処置が行えない場合もあります。
内視鏡による異物除去
当院では、開腹手術を回避するためのツールとして内視鏡を用いています。最大のメリットは「お腹を切らずに済むこと」です。カメラで胃の中を確認しながら、専用の器具で異物を掴んで取り出します。開腹手術に比べて麻酔時間も短く、体への負担(侵襲)が格段に少ないため、多くの場合その日のうちに帰宅が可能です。
外科手術(開腹手術)が必要になる場合
異物がすでに腸に流れて詰まってしまっている場合や、内視鏡で掴めない巨大な異物の場合は、外科手術が必要です。当院では迅速な緊急手術にも対応しています。
事故を未然に防ぐ環境づくり
誤飲は「予防」が最大の治療です。以下のポイントを再点検しましょう。
- ゴミ箱は蓋付きに:特に匂いがするキッチンのゴミ箱は狙われやすいです
- 「犬の目線」で部屋を見る:床に落ちた輪ゴム、薬のシート、小さなおもちゃは魅力的な標的になります
- 散歩中のアイコンタクト:歩道での拾い食いを防ぐため、飼い主様が先回りして危険なものを見つける習慣をつけましょう
「本当に食べたかわからないけれど、おもちゃが足りない」という状況で受診される飼い主様はたくさんいらっしゃいます。レントゲンや超音波検査で「何もなかった」と確認できることも、一つの大きな安心につながります。手遅れになる前に、少しでも不安を感じたらすぐにご連絡ください。

