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病気の概要
消化管内異物(しょうかかんないいぶつ、Gastrointestinal Foreign Body)とは、食べ物ではないものを飲み込み、それが食道・胃・腸に留まったり詰まったりした状態です。好奇心の強い犬や猫では珍しくなく、とくに若い子に多くみられます。
飲み込んだものが小さければ便と一緒に出ることもありますが、大きなものや形の悪いものは消化管に詰まり(閉塞)、放置すると腸が壊死・穿孔(穴があく)し、命に関わる腹膜炎に進むことがあります。「何を・いつ・どのくらい飲んだか」と、どれだけ早く対応できるかが、その後を大きく左右します。
36–48時間
腸を通過せず動かなければ手術を検討する目安
紐・糸
猫でとくに多く、危険度の高い「線状異物」
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何が起きているのか
異物が消化管に詰まると、その手前に食べ物・水・ガスがたまって腸が膨らみます。詰まりが続くと血の巡りが悪くなり、腸の壁が酸素不足で傷んでいきます。さらに進むと壁が壊死して穴があき(穿孔)、腸の中身がお腹の中に漏れて腹膜炎——命に関わる状態になります。
STEP 1
異物が詰まる(閉塞)
飲み込んだものが胃や腸に留まり、内容物の流れをせき止める。手前の消化管が液体とガスで拡張する。
STEP 2
血流障害・腸が傷む
詰まりが続くと、その部分の血の巡りが悪くなり、腸の壁が酸素不足で傷んでいく。嘔吐・脱水が進む。
STEP 3
壊死・穿孔
傷んだ腸の壁が壊死し、穴があく(穿孔)。とくに線状異物は腸を裂きやすく、穿孔の危険が高い。
STEP 4
腹膜炎・ショック
腸の中身がお腹に漏れ、腹膜炎・敗血症へ。ショック状態に陥ると命に関わる。ここに至る前の対応が重要。
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こんなものにご注意ください
| 対象 | 飲み込みやすいもの |
|---|---|
| 犬 | おもちゃ、靴下・布類、骨、果物の種、焼き鳥やバーベキューの串、飼い主の錠剤 |
| 猫 | 糸・毛糸・リボン・デンタルフロス・釣り糸などの線状異物、ビニール、ヘアゴム |
| 共通 | ボタン電池・磁石(重篤化しやすい)、竹串、針、小さなおもちゃの部品 |
食道に詰まりやすいのは、骨や大きめのおやつです。とくに犬で多く、飲み込んだ直後からよだれ・えずき・飲み込みにくさが出ることがあります。
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症状・サイン
飲み込んだ場所や、詰まっているかどうかで症状は変わります。無症状で経過することもあれば、急に重くなることもあります。
- 嘔吐をくり返す・食べてもすぐ吐く
- 食欲がない・元気がない
- お腹を痛がる・触ると嫌がる・お腹が張っている
- よだれが増えた・飲み込みにくそう(食道異物)
- 下痢・血便
- ぐったりして動かない・虚脱(重症)
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診断・検査
「異物があるか」「どこにあるか」「詰まって腸が傷んでいないか」を確かめることが目的です。飲んだものによってはレントゲンに写らないため、複数の検査を組み合わせます。
問診・身体検査
何を・いつ・どのくらい飲んだかを詳しく伺い、脱水や腹痛、お腹の張りを確認します。口の中や舌下も確認します。
レントゲン検査
金属や骨など写るものは直接、写らないものも腸のガスの溜まり方(閉塞のサイン)から推測します。線状異物では腸がアコーディオン状に寄る所見、お腹の中の遊離ガスは穿孔のサインです。
超音波検査
写りにくい異物や腸の状態、腹水の有無を、無麻酔・低侵襲で評価できます。腸の動きや壁の傷みも確認できます。
造影検査・CT(必要に応じて)
レントゲンに写らない異物を、造影剤で陰影の欠けとして確認します。穿孔が疑われるときはバリウムを使わず、体にやさしい水溶性の造影剤を用います。
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治療
飲んだもの・場所・時間・全身状態から、その子にとって安全で確実な方法を選びます。大きく分けて「経過観察」「吐かせる」「内視鏡」「手術」があります。
経過観察(自然排出を待つ)
小さく丸いもので、症状がなく安定していれば、便として出るのを連続したレントゲンで追いながら待つことがあります。動かない・悪化するなら手術に切り替えます。
催吐(吐かせる)
胃の中にあり、飲んで間もなく、吐かせて安全に出せる物に限って選びます。鋭利なもの・線状異物・食道の異物・すでに腸へ進んだ物・腐食性の物には行いません(かえって危険なため)。
内視鏡による摘出
胃や食道、近い十二指腸までの異物は、体を大きく切らずに口から内視鏡で取り出せます。低侵襲で回復も早い方法です。届かない場所の異物は手術になります。
開腹手術(胃・腸の切開/腸切除)
腸の奥の異物・閉塞・穿孔は手術で対応します。傷んだ腸は切って繋ぎ直す(腸切除・吻合)ことも。線状異物では腸全体を丁寧に確認します。
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予後
早く見つけて、腸が傷む前に対応できれば、多くは良好に回復します。一方で、穿孔・腹膜炎を起こしてからでは、手術も体への負担も大きくなり、予後は厳しくなります。手術後は、腸のつなぎ目がほころびる(縫合部離開)ことが術後3〜5日ごろに起こりやすいため、この時期の入院管理と観察が大切です。
つまり、この病気で最も効くのは「早さ」です。飲み込んだ疑いがあるだけの段階でご相談いただければ、吐かせて簡単にすむこともあります。迷ったら、様子を見るより先にご連絡ください。
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ご家庭でできること・予防
- 危険なものを届かない所へ……紐・糸・裁縫針・布・小さなおもちゃ・串・ボタン電池・磁石・飼い主の薬などを、犬猫の届かない場所に片づけます。
- 猫の「糸遊び」に注意……紐やリボンで遊ばせたあとは必ず片づけ、出しっぱなしにしないでください。
- 留守番は安全な環境で……目の届かない時間は、異物のない部屋やケージで過ごさせると安心です。
- 「ちょうだい・放して」を教える……口にした物を出せるよう練習しておくと、いざというとき役立ちます。
- 一度やった子はくり返しやすい……誤食歴のある子は、環境の見直しをより丁寧に。
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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)
より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。
- 誤飲を防ぐ「STOP!誤飲プロジェクト」/アニコム損害保険(日本語) — 国内の保険データにもとづく誤飲の統計と、家庭でできる予防策をまとめた啓発ページ。
- 消化管の閉塞・異物/MSD獣医マニュアル・獣医師向け(英語) — 閉塞のしくみ・線状異物・診断・手術までを専門的に解説。
- 消化管異物(GI Foreign Bodies)/米国獣医外科専門医学会 ACVS(英語) — 外科専門医による、手術適応・術後合併症を含む総説。

