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病気の概要
急性胃腸炎(きゅうせいいちょうえん、Acute Gastroenteritis)とは、胃や腸の粘膜に急な炎症が起こり、突然の嘔吐や下痢が現れる状態のことです。ひとつの決まった病名ではなく、さまざまな原因で起こる「症候群」としてまとめて呼ばれます。
犬・猫でとても多く、その多くは自己限定性——つまり、適切に支えてあげれば数日から1週間ほどで自然に回復するものです。一方で、なかには異物・中毒・膵炎などの重い病気が「嘔吐・下痢」という同じ入り口で始まっていることもあり、見きわめが大切になります。
数日〜1週間
多くの急性胃腸炎が回復するまでの目安(適切な治療下)
48時間
下痢がこれ以上続くときは受診の目安
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何が起きているのか
胃や腸の粘膜は、食べ物を消化・吸収し、余分な水分を体に取り込む働きをしています。ここに炎症が起こると、消化・吸収がうまくいかなくなり、逆に水分や電解質が腸の中へしみ出していきます。その結果、嘔吐と下痢で体の水分・ミネラルがどんどん失われ、脱水・電解質の乱れが進みます。急性胃腸炎の治療で「点滴(輸液)」が中心になるのは、このためです。
STEP 1
粘膜に炎症が起きる
食事・感染・ストレス・中毒などのきっかけで、胃や腸の粘膜に急な炎症が起こる。
STEP 2
消化・吸収が乱れ、水分が失われる
消化・吸収の力が落ち、水分と電解質が腸の中へしみ出す。嘔吐・下痢としてさらに体外へ失われる。
STEP 3
脱水・電解質の乱れ
体の水分とミネラル(カリウムなど)が不足し、ぐったりする。子犬・子猫や高齢の子では急に進みやすい。
STEP 4
多くは回復/一部は重症化
大半は数日で回復するが、脱水が強い場合や重症型(AHDS)では、支える治療が間に合わないと危険な状態になりうる。
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主な原因
急性胃腸炎の原因はさまざまで、はっきりしないことも少なくありません。代表的なものを挙げます。
| 原因 | 具体例 |
|---|---|
| 食事性 | 急なフードの切り替え、拾い食い、傷んだもの・脂っこいもの、食べ慣れないおやつ |
| 感染性 | ウイルス(パルボなど)・細菌・寄生虫・原虫。※重い感染症は別に精査します |
| 中毒 | 毒物・薬物、玉ねぎ・チョコレート・ブドウ・キシリトールなど犬猫に有害な食品 |
| ストレス | 環境の変化、旅行、来客など |
| 全身の病気の一症状 | 膵炎・肝臓/腎臓の病気・内分泌疾患などが、嘔吐・下痢として現れることも |
食事は急に変えず、数日かけて少しずつ切り替えることが、食事性の胃腸炎を防ぐ基本です。
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症状・サイン
主な症状は、突然の下痢・嘔吐・食欲低下・元気消失です。多くは軽くすみますが、次のようなサインがあるときは、背景に重い病気が隠れていたり、脱水が進んでいる可能性があります。
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診断・検査
急性胃腸炎は、ほかの原因を除外しながら診断していくのが基本です。軽症で元気があれば、まず対症療法から始めることもあります。症状が強い場合や気になるサインがある場合には、原因を確かめる検査を行います。
問診・身体検査
症状の経過・食事・誤食の可能性を詳しく伺い、脱水の程度やお腹の痛みを確認します。まず緊急性があるかどうかを判断します。
糞便検査
寄生虫・原虫や、細菌のバランスの乱れなどを確認します。下痢の原因を絞り込む基本の検査です。
血液検査
脱水・電解質の乱れ、炎症、膵臓・肝臓・腎臓の状態などを評価します。AHDSでは血液が濃縮してPCV(ヘマトクリット)が高くなるのが手がかりになります。
レントゲン・超音波検査
お腹を痛がる場合や嘔吐が強い場合に、異物・閉塞・腫瘤など外科的な病気が隠れていないかを確認します。超音波は無麻酔・低侵襲で腸の状態まで評価できます。
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治療
治療の中心は、失われた水分・電解質を補い、体を支えながら回復を待つことです。原因そのものを叩く薬より、その子の負担を減らす支持療法が柱になります。
輸液(点滴)による脱水の補正
治療のいちばんの柱です。脱水や電解質の乱れを補い、循環を支えます。軽症なら皮下点滴、脱水が強い・AHDSなどでは入院して静脈点滴で管理します。
制吐薬・胃腸を守る薬
吐き気を抑えることで、苦しさをやわらげ、脱水を減らし、食事の再開を早めます。マロピタントなどを状態に応じて用います。
食事管理(早めの再開)
長い絶食は避け、消化のよい食事を少量ずつ早めに再開するのが近年の考え方です。とくに猫では、食べない時間を長引かせないことを重視します。
整腸(プロバイオティクスなど)
乱れた腸内細菌のバランスを整える手助けとして用いることがあります。回復を少し早める可能性が報告されています。
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ご家庭でできること・予防
- 食事は急に変えない……新しいフードは数日かけて少しずつ混ぜて切り替えます。急な変更は胃腸炎のよくある原因です。
- 拾い食い・誤食を防ぐ……散歩中の拾い食い、ゴミ箱、犬猫に有害な食品(玉ねぎ・チョコレート・ブドウ・キシリトール等)や薬に手が届かないようにします。
- 軽症のときの家庭ケア……元気があれば、消化のよい食事を少量ずつ、水分をこまめに与えて様子をみます。市販の人用の下痢止めなどは自己判断で使わないでください。
- 猫は「食べない」を放置しない……丸一日以上食べないときは、脂肪肝を防ぐためにも早めにご相談ください。
- 危険なサインを覚えておく……血便・タール便・くり返す嘔吐・ぐったり・強い腹痛・不飲不食は、様子を見ずに受診の合図です。
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予後
一般的な急性胃腸炎は自己限定性で、適切に支えれば多くが数日から1週間で回復します。重症型のAHDSも、早く適切な輸液管理を行えば予後は良好で、入院した犬の死亡率は10%未満と報告されています。237頭を対象とした研究では生存率は96%で、多くが1〜2日で退院しています。
だからこそ、「軽い胃腸炎」と「支える治療を急ぐべき状態」を早く見分けることが何より大切です。当院は、目の前の嘔吐・下痢を抑えるだけでなく、その奥に別の病気がないかまで見にいくことを心がけています。気になるサインがあれば、どうぞ早めにご相談ください。
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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)
より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。
- 急性出血性下痢症候群(AHDS)/MSD獣医マニュアル・獣医師向け(英語) — 犬の重症型AHDSの病態・診断(PCV上昇)・治療・予後を専門的に解説。
- 犬と猫の急性胃腸炎の対症療法(Today's Veterinary Practice・英語) — 抗菌薬をルーチンに使わない考え方、制吐・輸液・食事管理の実践指針をまとめた実務誌記事。
- 犬の急性胃腸炎の管理/ワシントン州立大学 獣医教育病院(英語) — 原因・受診の目安・家庭でのケアと予防を、飼い主向けにわかりやすく解説。

