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病気の概要
尿道閉塞(にょうどうへいそく、Urethral Obstruction)とは、膀胱から体の外へ尿を送り出す管である尿道がふさがり、排尿が完全に(あるいはほとんど)できなくなった状態です。尿の出口が閉じると、行き場を失った尿が膀胱にたまり続け、やがて腎臓・全身に深刻なダメージが及びます。
この病気の怖さは、進行が非常に速いことにあります。膀胱が破裂しなくても、たまった尿の毒素と電解質異常(とくに高カリウム血症)によって、心臓が止まりかねない状態に短時間で至ります。だからこそ「尿が出ない」というサインを、その日のうちに受診へつなげることが何より大切です。
10倍
雄猫が雌猫より閉塞しやすいとされる目安(細く長い尿道のため)
約60%
雄猫の閉塞原因を占めるとされる尿道栓子の割合
数時間〜1・2日
排尿できないまま放置した場合に命に関わるまでの時間
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何が起きているのか
尿道がふさがると、体の中では次のような悪循環が始まります。閉塞が解除されない限り、この流れは止まりません。
STEP 1
尿道が詰まり、排尿できなくなる
尿栓子・結石・けいれん・炎症などで尿道がふさがり、膀胱の尿を出せなくなる。何度もいきむのに、出ない/数滴しか出ない状態になる。
STEP 2
膀胱がパンパンに張る(過伸展)
尿が逃げ場を失い、膀胱が硬く大きく張る。お腹の下のほうに、テニスボールのように硬い膀胱が触れることもある。強い痛みを伴う。
STEP 3
尿が腎臓へ逆戻り(腎後性の急性腎障害)
行き場のない圧が腎臓まで及び、老廃物(尿毒素)を排泄できなくなる。腎臓より「下流」で詰まって起こるため、腎後性急性腎障害と呼ばれる。
STEP 4
高カリウム血症 → 致死的な不整脈
本来は尿へ捨てられるカリウムが血中にたまり、心臓の拍動を乱す。徐脈(脈が遅くなる)やときに致死的な不整脈を招き、命に関わる状態に至る。
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なぜ雄猫に多いのか・主な原因
尿道閉塞は、とくに雄猫にとても多くみられます。理由は体のつくりにあります。雄猫の尿道は雌猫にくらべて細く長く、先端(陰茎部)に向かうほど狭くなるため、わずかな詰まりものでも通り道がふさがってしまうのです。犬でも、雄で結石が陰茎骨の付近に引っかかって起こることがあります。
尿道栓子(にょうどうせんし)
タンパク質・結晶・炎症産物・細胞などが混ざり合ってできる「栓(せん)」です。雄猫の閉塞でもっとも多い原因とされ、背景に猫の特発性膀胱炎(FIC)があることが多いと考えられています。
結石(尿石症)
膀胱や尿道にできた小さな石が、尿道に詰まって起こります。ストルバイト・シュウ酸カルシウムなどが代表的です。原因や再発予防は尿石症(結石)のページもあわせてご覧ください。
尿道のけいれん・炎症・むくみ
強い炎症や痛みで尿道の筋肉がけいれんし、通り道が狭くなります。猫の特発性膀胱炎(FIC)に続いて起こることが多く、栓子と並ぶ重要な背景です。
腫瘍・狭窄・そのほか
まれに、尿道やその周囲の腫瘍、過去の炎症・カテーテルによる瘢痕(はんこん)で尿道が狭くなり、閉塞につながることもあります。高齢での発症では、これらも念頭に検査を進めます。
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見逃してはいけないサイン
尿道閉塞は、初期には「膀胱炎かな?」と見分けがつきにくく、進むと「胃腸の不調かな?」と誤解されやすい病気です。次のサインは、閉塞を疑う重要な手がかりです。
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診断・検査
来院後は、まず閉塞しているかどうか・全身がどれだけ危険な状態かを素早く見極めます。診断と初期治療は、しばしば同時並行で進みます。
身体検査・膀胱の触診
硬く大きく張った膀胱を触れることが、閉塞を強く疑う所見です。全身状態(脱水・体温低下・心拍の乱れなど)もあわせて評価し、緊急度を判断します。
血液検査・電解質
カリウム値・腎臓の数値(クレアチニン・BUN)・血液の酸性度を確認します。高カリウム血症は心臓に直結するため、最優先でチェックします。
心電図(ECG)
高カリウム血症は心電図に特徴的な変化(徐脈・波形の異常)として現れます。危険な不整脈の有無を確認し、治療の緊急度を判断します。
画像検査(レントゲン・超音波)
結石の有無や位置、膀胱の状態、尿道の詰まりの原因を評価します。原因に応じて、その後の治療方針(内科か外科か)を組み立てます。
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治療 ― まず「詰まりを外し、命を守る」
治療は、大きく「①命に関わる状態の安定化」と「②閉塞の解除」の二本柱で、多くは同時に進めます。落ち着いたあとに、原因に応じた治療と再発予防へ移ります。
ステップ1:全身の安定化(輸液・高カリウム血症の管理)
点滴で脱水と尿毒素を補正し、危険な高カリウム血症を下げる処置を行います。心臓を保護する薬剤などを状態に応じて用い、致死的な不整脈を防ぎます。ここが、命を守るための最初の山場です。
ステップ2:膀胱の減圧(膀胱穿刺)
パンパンに張った膀胱に細い針を刺して尿を抜き、圧を下げます。腎臓への逆流を軽くし、痛みをやわらげ、次のカテーテル処置を安全にするための処置です。
ステップ3:尿道カテーテルで閉塞を解除
鎮静・麻酔のもとで尿道に細い管を通し、栓子や結石による詰まりを押し流して開通させます。膀胱を洗浄し、しばらくカテーテルを留置して尿の通り道を確保することもあります。
ステップ4:入院での集中管理
閉塞を外したあとは、尿量・カリウム・腎臓の数値を見ながら入院で管理します。閉塞解除後は一時的に尿が大量に出る時期(閉塞後利尿)があり、脱水や電解質の乱れを防ぐための輸液調整が重要です。
ステップ5:原因の治療と再発予防へ
状態が落ち着いたら、背景にある膀胱炎(FIC)・結石などの治療と、再発を防ぐ管理へ移ります。ご家庭での水分・食事・環境の工夫を具体的にご提案します。
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再発予防と、外科という選択肢
尿道閉塞は、残念ながら再発しやすい病気です。とくに猫では、背景にある特発性膀胱炎(FIC)や結石が続くかぎり、また詰まる可能性があります。だからこそ、閉塞を外して終わりではなく、その後の再発予防が同じくらい大切です。
| 予防の柱 | 具体的な工夫 | ねらい |
|---|---|---|
| 水分をしっかりとる | ウェットフード中心にする・水飲み場を増やす・循環式給水器を使う | 尿を薄め、栓子や結晶をできにくくする |
| 食事の見直し | 原因(栓子・結石の種類)に応じた療法食を選ぶ | 結晶・結石の形成を抑える |
| 体重・運動の管理 | 適正体重の維持・遊びで運動量を確保 | 肥満・運動不足という背景要因を減らす |
| ストレスを減らす | トイレを清潔に・数を増やす・隠れ場所や上下運動・生活リズムの安定 | FICの引き金となるストレスをやわらげる |
| 定期的なチェック | 尿検査・体重測定・排尿の観察を続ける | 再発の予兆を早くつかむ |
「一度治ったから大丈夫」ではなく、再発を前提に、その子に合った予防を続けていくことが、次の緊急事態を防ぎます。その子とご家族が、これからも安心して穏やかに過ごせることを目標に、無理なく続けられる方法を一緒に考えます。
療法食とは何か・なぜ獣医師の指導が要るのかを見る08
さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)
より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。
- 猫の尿道閉塞/International Cat Care(英語) — 猫の飼い主向けに、緊急性・サイン・原因・治療をわかりやすく解説した、国際的な猫医療団体のページ。
- 雄猫の尿路閉塞/米国獣医外科学会(ACVS・英語) — 原因・診断・治療と、会陰尿道瘻造設術(PU手術)を含む外科的対応を専門家がまとめた解説。
- 犬と猫の閉塞性尿路疾患/MSD獣医マニュアル・獣医師向け(英語) — 尿道閉塞の病態・高カリウム血症の管理・治療を専門的に解説した一次情報。

