本文へスキップ
古谷動物病院古谷動物病院FURUYA ANIMAL CLINICご予約

URETHRAL OBSTRUCTION

尿道閉塞

「トイレに行くのに尿が出ない」——数時間を争う、命に関わる緊急事態です

尿道閉塞は、尿の出口である尿道がふさがり、排尿が完全にできなくなる病気です。とくに雄猫に多く、放置すると膀胱にたまった尿の毒素と高カリウム血症で、早ければ数時間、多くは1〜2日で命に関わります。「尿が出ない」は、様子を見てよいサインではありません。すぐにご連絡ください。

  • 腎泌尿器科
  • 緊急

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

とくに気をつけたい犬種・猫種

好発(かかりやすい傾向)が知られている犬種・猫種です。必ずかかるわけではありません。

01

病気の概要

尿道閉塞(にょうどうへいそく、Urethral Obstruction)とは、膀胱から体の外へ尿を送り出す管である尿道がふさがり、排尿が完全に(あるいはほとんど)できなくなった状態です。尿の出口が閉じると、行き場を失った尿が膀胱にたまり続け、やがて腎臓・全身に深刻なダメージが及びます。

この病気の怖さは、進行が非常に速いことにあります。膀胱が破裂しなくても、たまった尿の毒素と電解質異常(とくに高カリウム血症)によって、心臓が止まりかねない状態に短時間で至ります。だからこそ「尿が出ない」というサインを、その日のうちに受診へつなげることが何より大切です。

10倍

雄猫が雌猫より閉塞しやすいとされる目安(細く長い尿道のため)

約60%

雄猫の閉塞原因を占めるとされる尿道栓子の割合

数時間〜1・2日

排尿できないまま放置した場合に命に関わるまでの時間

02

何が起きているのか

尿道がふさがると、体の中では次のような悪循環が始まります。閉塞が解除されない限り、この流れは止まりません。

STEP 1

尿道が詰まり、排尿できなくなる

尿栓子・結石・けいれん・炎症などで尿道がふさがり、膀胱の尿を出せなくなる。何度もいきむのに、出ない/数滴しか出ない状態になる。

STEP 2

膀胱がパンパンに張る(過伸展)

尿が逃げ場を失い、膀胱が硬く大きく張る。お腹の下のほうに、テニスボールのように硬い膀胱が触れることもある。強い痛みを伴う。

STEP 3

尿が腎臓へ逆戻り(腎後性の急性腎障害)

行き場のない圧が腎臓まで及び、老廃物(尿毒素)を排泄できなくなる。腎臓より「下流」で詰まって起こるため、腎後性急性腎障害と呼ばれる。

STEP 4

高カリウム血症 → 致死的な不整脈

本来は尿へ捨てられるカリウムが血中にたまり、心臓の拍動を乱す。徐脈(脈が遅くなる)やときに致死的な不整脈を招き、命に関わる状態に至る。

03

なぜ雄猫に多いのか・主な原因

尿道閉塞は、とくに雄猫にとても多くみられます。理由は体のつくりにあります。雄猫の尿道は雌猫にくらべて細く長く、先端(陰茎部)に向かうほど狭くなるため、わずかな詰まりものでも通り道がふさがってしまうのです。犬でも、雄で結石が陰茎骨の付近に引っかかって起こることがあります。

尿道栓子(にょうどうせんし)

タンパク質・結晶・炎症産物・細胞などが混ざり合ってできる「栓(せん)」です。雄猫の閉塞でもっとも多い原因とされ、背景に猫の特発性膀胱炎(FIC)があることが多いと考えられています。

結石(尿石症)

膀胱や尿道にできた小さな石が、尿道に詰まって起こります。ストルバイト・シュウ酸カルシウムなどが代表的です。原因や再発予防は尿石症(結石)のページもあわせてご覧ください。

尿道のけいれん・炎症・むくみ

強い炎症や痛みで尿道の筋肉がけいれんし、通り道が狭くなります。猫の特発性膀胱炎(FIC)に続いて起こることが多く、栓子と並ぶ重要な背景です。

腫瘍・狭窄・そのほか

まれに、尿道やその周囲の腫瘍、過去の炎症・カテーテルによる瘢痕(はんこん)で尿道が狭くなり、閉塞につながることもあります。高齢での発症では、これらも念頭に検査を進めます。

04

見逃してはいけないサイン

尿道閉塞は、初期には「膀胱炎かな?」と見分けがつきにくく、進むと「胃腸の不調かな?」と誤解されやすい病気です。次のサインは、閉塞を疑う重要な手がかりです。

05

診断・検査

来院後は、まず閉塞しているかどうか・全身がどれだけ危険な状態かを素早く見極めます。診断と初期治療は、しばしば同時並行で進みます。

身体検査・膀胱の触診

硬く大きく張った膀胱を触れることが、閉塞を強く疑う所見です。全身状態(脱水・体温低下・心拍の乱れなど)もあわせて評価し、緊急度を判断します。

血液検査・電解質

カリウム値・腎臓の数値(クレアチニン・BUN)・血液の酸性度を確認します。高カリウム血症は心臓に直結するため、最優先でチェックします。

心電図(ECG)

高カリウム血症は心電図に特徴的な変化(徐脈・波形の異常)として現れます。危険な不整脈の有無を確認し、治療の緊急度を判断します。

画像検査(レントゲン・超音波)

結石の有無や位置、膀胱の状態、尿道の詰まりの原因を評価します。原因に応じて、その後の治療方針(内科か外科か)を組み立てます。

06

治療 ― まず「詰まりを外し、命を守る」

治療は、大きく「①命に関わる状態の安定化」と「②閉塞の解除」の二本柱で、多くは同時に進めます。落ち着いたあとに、原因に応じた治療と再発予防へ移ります。

  1. ステップ1全身の安定化(輸液・高カリウム血症の管理)

    点滴で脱水と尿毒素を補正し、危険な高カリウム血症を下げる処置を行います。心臓を保護する薬剤などを状態に応じて用い、致死的な不整脈を防ぎます。ここが、命を守るための最初の山場です。

  2. ステップ2膀胱の減圧(膀胱穿刺)

    パンパンに張った膀胱に細い針を刺して尿を抜き、圧を下げます。腎臓への逆流を軽くし、痛みをやわらげ、次のカテーテル処置を安全にするための処置です。

  3. ステップ3尿道カテーテルで閉塞を解除

    鎮静・麻酔のもとで尿道に細い管を通し、栓子や結石による詰まりを押し流して開通させます。膀胱を洗浄し、しばらくカテーテルを留置して尿の通り道を確保することもあります。

  4. ステップ4入院での集中管理

    閉塞を外したあとは、尿量・カリウム・腎臓の数値を見ながら入院で管理します。閉塞解除後は一時的に尿が大量に出る時期(閉塞後利尿)があり、脱水や電解質の乱れを防ぐための輸液調整が重要です。

  5. ステップ5原因の治療と再発予防へ

    状態が落ち着いたら、背景にある膀胱炎(FIC)・結石などの治療と、再発を防ぐ管理へ移ります。ご家庭での水分・食事・環境の工夫を具体的にご提案します。

07

再発予防と、外科という選択肢

尿道閉塞は、残念ながら再発しやすい病気です。とくに猫では、背景にある特発性膀胱炎(FIC)や結石が続くかぎり、また詰まる可能性があります。だからこそ、閉塞を外して終わりではなく、その後の再発予防が同じくらい大切です。

予防の柱具体的な工夫ねらい
水分をしっかりとるウェットフード中心にする・水飲み場を増やす・循環式給水器を使う尿を薄め、栓子や結晶をできにくくする
食事の見直し原因(栓子・結石の種類)に応じた療法食を選ぶ結晶・結石の形成を抑える
体重・運動の管理適正体重の維持・遊びで運動量を確保肥満・運動不足という背景要因を減らす
ストレスを減らすトイレを清潔に・数を増やす・隠れ場所や上下運動・生活リズムの安定FICの引き金となるストレスをやわらげる
定期的なチェック尿検査・体重測定・排尿の観察を続ける再発の予兆を早くつかむ

「一度治ったから大丈夫」ではなく、再発を前提に、その子に合った予防を続けていくことが、次の緊急事態を防ぎます。その子とご家族が、これからも安心して穏やかに過ごせることを目標に、無理なく続けられる方法を一緒に考えます。

療法食とは何か・なぜ獣医師の指導が要るのかを見る

08

さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

腎泌尿器科のページへ戻る

はじめてご来院される方へ

ご予約から診察・治療方針のご提案までの流れを、わかりやすくまとめています。

はじめての方はこちら

Q&A

よくあるご質問

「トイレに何度も行くのに尿が出ていない」ようです。様子を見てもいいですか?
様子を見ないでください。とくに雄猫・雄犬では尿道閉塞の可能性があり、排尿できない状態が続くと早ければ数時間、多くは1〜2日で急性腎不全・高カリウム血症から命に関わります。「トイレに行くけれど出ない」「少量しか出ない」「陰部をしきりになめる」「鳴いていきむ」といったサインがあれば、夜間でもすぐにご連絡ください。膀胱炎との見分けはご家庭では難しく、迷ったら受診が安全です。
嘔吐してぐったりしています。胃腸の病気ではないですか?
その可能性もありますが、尿道閉塞でも嘔吐・元気消失・食欲不振が起こります。閉塞で尿毒素と高カリウムが体にたまると、一見「胃腸の不調」に見える症状が出るため、見逃されやすいのが怖い点です。とくに雄猫で嘔吐・ぐったりがある場合は、排尿できているかを必ず確認してください。判断に迷うときは、尿が出ているか分からない旨をお伝えのうえ受診してください。
一度詰まると、また繰り返しますか?予防はできますか?
残念ながら再発しやすい病気です。とくに猫では、背景にある特発性膀胱炎(FIC)や結石の管理が再発予防の柱になります。水分をしっかりとる工夫、療法食、体重管理、そしてストレスの少ない環境づくりが有効です。閉塞を何度も繰り返す・カテーテルで解除しにくい場合には、尿道を広げる会陰尿道瘻造設術(PU手術)という外科的な選択肢もあります。その子に合った再発予防を一緒に組み立てます。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。