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古谷動物病院古谷動物病院FURUYA ANIMAL CLINICご予約

PROGRESSIVE RETINAL ATROPHY

犬と猫の進行性網膜萎縮(PRA)

夜の見えにくさから始まり、少しずつ視力が失われていく遺伝性の網膜疾患

「暗くなると壁にぶつかる」「散歩で段差を踏み外す」「目が以前より光って見える」——それは進行性網膜萎縮(PRA)のサインかもしれません。多くは遺伝性で、痛みなく両目が進みます。根治は難しくても、その子が安心して暮らせる工夫と、繁殖の前に判別できる遺伝子検査について、一緒に考えます。

  • 眼科

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

とくに気をつけたい犬種・猫種

好発(かかりやすい傾向)が知られている犬種・猫種です。必ずかかるわけではありません。

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病気の概要

進行性網膜萎縮(Progressive Retinal Atrophy:PRA)は、目の奥で光をとらえる網膜——カメラでいえばフィルムやセンサーにあたる部分——が、少しずつ変性していく病気の総称です。多くは遺伝性で、痛みを伴わずに両目が同時に、左右対称に進みます。

網膜には、暗い所ではたらく「杆体(かんたい)」と、明るい所で色や細部を見る「錐体(すいたい)」という2種類の光受容細胞があります。多くのPRAでは杆体が先に弱るため、まず夜間・薄暗い場所での見えにくさ(夜盲)から始まり、やがて錐体も障害されて昼間も見えにくくなり、最終的に視力を失っていきます。

両眼性

左右の目が同時に、少しずつ進行する(痛みは伴わない)

夜→昼

多くは夜の見えにくさから始まり、やがて昼も見えにくくなる

遺伝性

犬・猫ともに多くは遺伝性。繁殖前に遺伝子検査で判別できる型がある

犬でも猫でも起こり、いくつもの原因遺伝子が知られています。「診察室の延長としてのウェブサイト」として、このページではなぜ起こるのか・どう気づくか・何ができるかを、来院前に予習していただける形で整理しました。

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なぜ起こるのか ― 遺伝と原因遺伝子

PRAの多くは常染色体劣性遺伝です。これは「両親がともに発症していなくても、保因(キャリア)どうしの組み合わせで、両方から変異を受け継いだ子が発症する」という遺伝の仕方です。オス・メスで発症率に差はありません。

重要なのは、PRAは1つの病気ではなく、原因遺伝子の異なる複数の病気の集まりだという点です。品種によって関わる遺伝子が違うため、遺伝子検査もその品種に合ったものを選ぶ必要があります。代表的なものを整理します。

主な原因遺伝子・型主な犬種・猫種特徴
prcd(進行性杆体錐体変性)トイ・プードル、ミニチュア・プードル、アメリカン/イングリッシュ・コッカー・スパニエル ほか多数もっとも多くの犬種で共通する型。中年齢で発症する遅発性。夜盲から進む。
RPGRIP1(cord1/CRD4)ミニチュア・ダックスフンド ほか不完全浸透(変異があっても発症時期・程度に幅がある)。
CNGB1(PRA1)パピヨン、ファレーヌパピヨン特異の型。平均5〜6歳ごろの遅発性。
遺伝性PRA(型は品種で要確認)ウェルシュ・コーギー ほか遺伝性の網膜変性として報告される。原因遺伝子は個体・系統で異なりうる。
AIPL1(pd-PRA)ペルシャ、エキゾチック、ミヌエット(ペルシャ由来)猫の早発型。生後5週ごろから細胞が失われ、16週ごろには重度に。

03

症状・気づき方

進行性網膜萎縮はゆっくり・両目そろって・痛みなく進むため、初期は見過ごされがちです。次のような様子は、視力が落ちてきているサインかもしれません。

視力低下がゆっくりのため、飼い主が気づく頃にはかなり進んでいることも珍しくありません。一方で、慣れた環境では上手に順応するため「見えていないこと」に気づきにくい面もあります。気になるサインがあれば、動画を撮っていただくと診察の助けになります。

04

診断・検査

診断は「網膜そのものの状態を見ること」と「原因の遺伝子を調べること」の両面から進めます。

  1. ステップ1問診・見え方の確認

    いつ・どんな場面で見えにくそうか(夜か昼か、片目か両目か、進み方)を伺います。ご家庭での様子は診断の大切な手がかりです。

  2. ステップ2眼底検査(眼科用の器械で網膜を観察)

    網膜の血管が細くなる・反射が過剰になる・視神経円板が萎縮するといった、PRAに特徴的な変化がないかを確認します。あわせて白内障の有無も評価します。

  3. ステップ3網膜電図(ERG)などの精密検査

    網膜の電気的な反応を調べ、機能がどの程度残っているかを客観的に評価します。専門的な機器・評価が必要な場合は、提携施設をご紹介します。

  4. ステップ4遺伝子検査(DNA検査)

    犬種・猫種に応じた検査で、発症前でも変異の有無(正常/保因/発症リスク)を判別できます。繁殖を考える場合や早期把握に有用です。

05

治療と管理の考え方

現時点で、変性した網膜を元に戻す根治的な治療はありません。抗酸化物質などのサプリメントが用いられることもありますが、進行を確実に止める効果は証明されていません。誠実にお伝えすると、PRAそのものを「治す」手段は、まだ手元にないのが現状です。

しかし、これは「何もできない」という意味ではありません。当院が大切にするのは、その子とご家族が幸せに過ごせることを目標に、生活の質を保つ支援を続けることです。

  • 環境調整:見えにくさを補う暮らしの工夫(次のセクションで詳しく)
  • 併発する白内障の管理:白内障が進むと緑内障などを起こすことがあり、状態に応じて対応します
  • 定期的な評価:進行の程度を確認し、その時々に必要なケアを一緒に見直します

06

ご家庭での環境調整 ― 見えにくくても安心して暮らすために

犬も猫も、嗅覚・聴覚・ひげ(触覚)を使い、慣れた環境では視力低下に驚くほど上手に順応します。次のような工夫が、その子の「安心」を支えます。

  1. ステップ1家具・食器・トイレの配置を変えない

    見えなくても記憶で移動できます。模様替えや引っ越しの直後はとくに慎重に見守ってください。

  2. ステップ2ぶつかると危ない場所に対策を

    机の角にはクッション材を、段差や階段には手前で分かる目印(マット・においの手がかり)を。落下の危険がある場所は柵で守ります。

  3. ステップ3触れる前に声をかける・足音で気づかせる

    突然触られると驚いて防御的になることがあります。名前を呼んでから近づくと安心します。

  4. ステップ4散歩は慣れた道を、リードで安全に

    自由に走らせるより、におい嗅ぎを楽しむ落ち着いた散歩に。知らない場所では特に注意します。

  5. ステップ5音・におい・感触で「合図」をつくる

    食事やトイレの場所を、音の出るマットや香りで分かるようにすると、生活のリズムを保てます。

07

遺伝子検査と繁殖の考え方

多くのPRAが常染色体劣性遺伝であることは、繁殖の前に発症を防げることを意味します。これは飼い主にとって前向きな情報です。

  • 保因(キャリア)どうしを掛け合わせない:どちらか一方でも「正常」なら、発症する子は生まれません
  • 発症前に判別できる:症状が出る前でも、DNA検査で正常/保因/発症リスクが分かります
  • 品種に合った検査を選ぶ:原因遺伝子は品種で異なるため、その品種向けの検査を用います

すでに一緒に暮らしている子では、遺伝子検査は「これから何に気をつけ、いつ頃どう備えるか」を知る手がかりになります。DEPTHの一つ「T=Tenacious(選択肢を最大化する)」の考え方で、早く知ることで打てる手を増やす——それが当院の姿勢です。検査の要否や種類は、犬種・猫種とご家族の状況に合わせてご提案します。

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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

はじめてご来院される方へ

ご予約から診察・治療方針のご提案までの流れを、わかりやすくまとめています。

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Q&A

よくあるご質問

進行性網膜萎縮は治せますか?
現時点で、失われた網膜の細胞を元に戻す根治的な治療はありません。抗酸化サプリメントなどが市販されていますが、進行を確実に止める効果は証明されていません。ただし「治せない=何もできない」ではありません。犬も猫も、慣れた環境では嗅覚・聴覚・ひげを使って驚くほど上手に暮らせます。家具の配置を変えない、段差に目印をつける、声をかけてから触れるといった環境調整で、生活の質は十分に保てます。併発しやすい白内障の管理も含めて、その子が安心して過ごせる形を一緒に整えます。
片目だけ見えにくいのですが、PRAでしょうか?
進行性網膜萎縮は基本的に「両目が同時に、左右対称に」進むのが特徴です。片目だけの視力低下は、緑内障・網膜剥離・ぶどう膜炎・視神経や脳の病気など、別の原因のことが多くあります。片目の異常は原因によって緊急性が異なるため、自己判断で様子を見ず、早めにご相談ください。眼底検査で、どの病気の可能性が高いかを見極めます。
遺伝子検査は受けたほうがよいですか?
繁殖を考えている場合や、好発犬種・好発猫種の子では、遺伝子検査が役立ちます。多くのPRAは常染色体劣性遺伝で、両親が発症していなくても「保因(キャリア)」どうしの掛け合わせで発症する子が生まれます。検査で保因かどうかが分かれば、発症する子が生まれない組み合わせを選べます。ただし品種ごとに原因遺伝子が異なり、その品種向けの検査でなければ判別できない点に注意が必要です。どの検査が適しているかは、犬種・猫種に合わせてご案内します。
目が見えなくなると、生活はどうなりますか?
視力は少しずつ失われるため、多くの子は残された感覚を使って自然に環境へ適応していきます。完全に見えなくなっても、慣れた家の中では今までどおり移動できることが少なくありません。家具や食器の位置を変えない、床に段差の目印を置く、急に触らず声をかける、散歩は慣れた道をリードで、といった工夫で安心して暮らせます。困りごとが出てきたら、その都度いっしょに対策を考えます。
白内障とは違うのですか?
違う病気ですが、関連することがあります。白内障は「レンズ(水晶体)が濁る」病気で、進行性網膜萎縮は「フィルムにあたる網膜が変性する」病気です。進行性網膜萎縮が進むと、二次的に白内障を併発することがよく知られています。逆に、白内障で目が白く見えて視力低下に気づき、詳しく調べたら網膜萎縮も見つかる、という順序のこともあります。見え方の変化に気づいたら、水晶体と網膜の両方を評価することが大切です。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。