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GASTROINTESTINAL TUMOR

犬・猫の消化器腫瘍(胃・腸・直腸)

「よくある嘔吐・下痢」の陰で進むことがある。だから、型を確定させることを大切にします。

消化器の腫瘍は、慢性の嘔吐・下痢・体重減少という、どこにでもあるような症状の陰で静かに進むことがあります。とくに猫では、炎症性腸疾患(IBD)とリンパ腫が見分けにくく、確定には踏み込んだ検査が必要です。一方で、外科手術で長く付き合える型もあります。だからこそ「何の腫瘍か」を確定させることが、その子に合った治療への第一歩になります。

  • 腫瘍科
  • 消化器

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

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病気の概要

消化器(胃・腸・直腸)の腫瘍は、慢性の嘔吐・下痢・体重減少という、ごくありふれた症状の陰で進むことがあります。そのため、「胃腸が弱いだけ」と見過ごされやすいのがやっかいな点です。

この病気で大切なのは、「何の腫瘍か(型)」を確定させることです。消化器腫瘍には、外科手術で長く付き合える型から、化学療法で全身を治療する型まで幅があり、型によって治療も見通しもまったく変わるからです。

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主な種類 ― 犬と猫で多い型が違う

種類特徴
腺癌上皮から発生。胃・腸・直腸に。輪状に腸を狭めて通過障害を起こしやすく、リンパ節・肝・肺へ転移しやすい
消化器リンパ腫猫の消化管腫瘍でもっとも多い。進行のゆるやかな低悪性度と、急な高悪性度に分かれる。化学療法が中心
消化管間質腫瘍(GIST)・平滑筋肉腫腸の壁の筋・間質から発生。進行がゆるやかで、完全切除で良好な経過も。GISTは検査で見分けられる
消化管型の肥満細胞腫猫でみられることがある
犬・猫のリンパ腫について詳しく見る

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好発 ― どんな子に多いか

  • 中〜高齢に多く発生します(犬はおよそ6〜9歳、猫は10〜12歳での発症が多いと報告されています)。
  • わずかに雄に多い傾向や、一部の犬種・猫種で特定の型が多いという報告があります。

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症状・気づきのサイン

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診断・検査

STEP 1

腹部超音波検査

第一選択の検査です。腸の壁の正常な層構造が消えている・限局して厚くなっている、しこり、リンパ節の腫れなどを評価します。

STEP 2

内視鏡 / CT

内視鏡で粘膜の病変を直接見て組織を採ります。CTは広がりや転移の評価に役立ちます(必要に応じ提携施設をご紹介)。

STEP 3

生検・病理検査で型を確定

腫瘍の種類を確定します。必要に応じて免疫染色や遺伝子検査を加え、型に応じた治療につなげます。

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治療

限局性の腫瘍 ― 外科切除

腺癌・GIST・平滑筋肉腫など、限られた範囲の腫瘍は、腸の一部を切ってつなぐ手術(腸切除・吻合)が中心です。周囲に十分な余白をつけて切除し、所属リンパ節も評価します。

リンパ腫 ― 化学療法

リンパ腫は全身の病気として化学療法で治療します(外科が中心にはなりません)。プロトコルなどの詳細はリンパ腫のページをご覧ください。

GIST ― 分子標的薬

切除が難しい・再発・転移したGISTでは、分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬)が選択肢になります。

支持療法・緩和ケア

吐き気・食欲・栄養を支えるケアを大切にします。積極的な治療が難しい場合も、穏やかに過ごすためのサポートを続けます。

化学療法(抗がん剤治療)の総論を読む

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治療計画の考え方と予後

見通しは、腫瘍の型・悪性度・切除の完全性・転移の有無・部位で大きく変わります(数値は報告による傾向で、個体差があります)。

  • GIST・平滑筋肉腫:進行がゆるやかで、完全に切除できると長く過ごせるという報告があります(報告では中央値で数年に及ぶことも)。
  • 腺癌:完全切除が予後を左右します。結腸直腸の腺癌は比較的良好な一方、胃の腺癌は厳しめとされます。転移がある場合は見通しが厳しくなります。
  • 猫の低悪性度消化器リンパ腫:飲み薬による内科管理で、報告では数年単位の良好な経過が得られることがあります。

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ご家庭でのケアと、当院の考え方

消化器腫瘍は、「よくある胃腸の不調」との境目が分かりにくい病気です。だからこそ、体重の変化・便の色(黒い便に注意)・食欲・嘔吐や下痢の頻度を記録していただけると、早期発見と経過の把握にとても役立ちます。

「なぜ良くならないのか」を、表面の症状で終わらせず、型を確定させるところまで掘り下げる——それが、その子に本当に合った治療への近道だと考えています。慢性の胃腸の不調が続くときは、どうか一度ご相談ください。その子とご家族が幸せに過ごせることを目標に、選択肢を一緒に考えます。

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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

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Q&A

よくあるご質問

慢性的に吐いたり下痢をしたりします。腫瘍の可能性もあるのでしょうか。
慢性の嘔吐・下痢・体重減少の原因は、食事・寄生虫・炎症性腸疾患(IBD)・内分泌の病気などさまざまで、その多くは腫瘍ではありません。ただし、とくに中高齢で、体重減少をともなう、黒い便や血便が出る、食欲が落ちてきた、という場合は、消化器腫瘍も念頭に置いて調べる価値があります。まずは血液検査や腹部の超音波検査で、腸の壁の状態やしこり、リンパ節などを確認します。ありふれた症状の奥にある原因まで見極めることを大切にしています。
猫で「炎症性腸疾患かリンパ腫か、はっきりさせるには生検が必要」と言われました。なぜそこまで必要なのですか。
猫では、炎症性腸疾患(IBD)と、進行のゆるやかな低悪性度の消化器リンパ腫が、症状も血液検査も超音波所見も非常によく似ていて、これらを見分けるには組織を調べる必要があるためです。とくに、腸の壁の全層を採る「全層生検」は、内視鏡で粘膜の表面だけを採る方法より、この見分けに優れています。治療の方針(炎症を抑えるのか、腫瘍として治療するのか)が変わるため、遠回りに見えても確定診断が結局は近道になります。必要性や体への負担については、十分にご説明します。
内視鏡で組織を採ったのに「確定できない」と言われました。どうしてですか。
内視鏡の生検は、腸の粘膜の「表面」しか採れないという限界があるためです。腸の深いところ(筋肉の層)から出る腫瘍や、炎症とリンパ腫の見分けが難しい場合には、表面だけの組織では判断がつかないことがあります。その場合は、おなかを開けて腸の壁の全層を採る「全層生検」や、免疫染色・遺伝子検査といった追加の検査で確定を目指します。どの方法を選ぶかは、その子の状態と、得られる情報のバランスを考えて一緒に決めます。
腸にできた腫瘍は、手術で取れば治りますか。
腫瘍の種類によります。限られた範囲にできた腺癌・消化管間質腫瘍(GIST)・平滑筋肉腫などは、腸の一部を切ってつなぐ手術(腸切除・吻合)で、良い経過が得られることがあります。とくにGISTや平滑筋肉腫は進行がゆるやかで、完全に切除できると長く過ごせるという報告があります。一方、リンパ腫は全身の病気として化学療法で治療するのが基本で、手術が中心にはなりません。まず種類と広がりを見極め、その子に合った方針を選びます。
手術後、腸をつないだ部分は大丈夫でしょうか。心配です。
ご心配はもっともです。腸を切ってつなぐ手術では、つないだ部分(吻合部)がうまく治らずに漏れる(縫合不全)というリスクがゼロではなく、とくに全身状態が悪い場合や、腸がもろくなっている場合には注意が必要です。だからこそ、術前・術中・術後の管理を丁寧に行い、術後は数日間、慎重に経過をみます。当院では麻酔科とも連携し、リスクを正しく評価したうえで手術に臨みます。気になる点は、事前に遠慮なくお尋ねください。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。