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古谷動物病院古谷動物病院FURUYA ANIMAL CLINICご予約

CHRONIC ENTEROPATHY

犬・猫の慢性腸症(IBD)

長引く下痢・嘔吐には、「まず食事から」試す近年の考え方で向き合います

3週間以上、下痢や嘔吐、体重減少がつづく——慢性腸症(IBD)は、腸に慢性の炎症が起こる病気の総称です。近年は「どの治療に反応するか」で分類し、多くの子が食事療法だけで落ち着くことがわかってきました。当院では、いきなり強い薬に頼らず、その子に合う方法を段階的に見つけていきます。

  • 消化器科
  • 慢性・下痢

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

とくに気をつけたい犬種・猫種

好発(かかりやすい傾向)が知られている犬種・猫種です。必ずかかるわけではありません。

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病気の概要

慢性腸症(まんせいちょうしょう、Chronic Enteropathy)とは、下痢・嘔吐・体重減少・食欲不振といった消化器の症状が3週間以上つづく、または何度もくり返す状態のうち、寄生虫や膵臓・内分泌の病気などを除外しても残るものの総称です。炎症性腸疾患(IBD)も、この大きな枠組みの中に含まれます。

原因はひとつではなく、その子がもともと持つ体質を背景に、腸内細菌のバランス・腸の免疫・食事・腸のバリア機能が複雑に影響し合って慢性の炎症が続くと考えられています。だからこそ「これを叩けば治る」という単純な病気ではなく、その子に合う組み合わせを見つけていく病気です。

3週間以上

慢性腸症を考える、消化器症状が続く目安

食事

近年、多くの子で第一に試す治療(食事反応性)

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何が起きているのか — 治療反応による分類

慢性腸症は、最初から「これ」と決めつけず、治療に対する反応をみながら、後から型を確定していくのが特徴です。近年は次のように分類します。

TYPE 1

食事反応性腸症(FRE)

第一に試す予後良好

療法食に変えると落ち着くタイプ。慢性腸症の中でもっとも多く、予後も良好。まずここを確かめることが診断であり治療でもある。

TYPE 2

抗菌薬(微生物叢)反応性腸症

かつて抗菌薬で改善したとされた群。近年は「腸内細菌のバランスの乱れ」に関わると位置づけ直され、経験的な抗菌薬使用は推奨されなくなっている。

TYPE 3

免疫抑制反応性腸症(狭義のIBD)

食事などで改善せず、免疫を抑える薬に反応するタイプ。人のクローン病に近く、長期の管理が必要になる。

TYPE 4

非反応性腸症/蛋白漏出性腸症(PLE)

複数の治療に反応しにくいタイプや、腸からタンパクが漏れて低アルブミンになる重症型(PLE)。予後に注意が必要で、腫瘍などの再評価も行う。

この分類は「治療してみて、反応をみる」段階的なやり方で決まっていきます。つまり、診断と治療が同時に進むのがこの病気の特徴です。

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症状・サイン

症状は、炎症の主な場所(小腸か大腸か)によって少し違います。

タイプ現れやすいサイン
小腸性便の量が増える、体重が減る、嘔吐、食欲不振、黒っぽい便。全身への影響(低栄養・低アルブミン)が出やすい。
大腸性便の回数が増える、少量を何度も、粘液や鮮血が混じる、しぶり(力むのに出ない)。

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診断・検査

慢性腸症は「ほかの原因を除いていく」除外診断が基本です。順を追って、その子の負担が少ない検査から進めます。

問診・身体検査・便検査

症状の経過・食事を詳しく伺い、まず寄生虫や感染を除外します。駆虫薬を試すこともあります。

血液検査

アルブミン・炎症の値に加え、ビタミンB12(コバラミン)や葉酸を測ります。コバラミンが低いと回復しにくく、補ってあげることが大切です。膵臓・内分泌の病気の除外も行います。

腹部超音波検査

腸の壁の厚みや層構造、リンパ節、他の臓器を無麻酔で評価します。腫瘍やリンパ管の異常など、ほかの病気との区別にも役立ちます。

食事療法による診断的治療

安定している子では、内視鏡の前に療法食を試すことがよくあります。これで落ち着けば食事反応性(FRE)と判断でき、体に負担の少ない診断になります。

内視鏡検査・生検(必要に応じて)

食事や治療で改善しない場合などに、内視鏡で腸の粘膜を採って調べます。炎症の程度の評価と、とくに猫では小細胞リンパ腫との区別のために重要です。

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治療

治療の柱は食事療法で、必要に応じてビタミン補給や免疫を抑える薬を段階的に加えます。「反応をみながら、必要な分だけ」が基本です。

食事療法(第一選択)

加水分解食(タンパクを細かく分解した食事)や、新規タンパク食(食べたことのないタンパク源)を用います。合う食事が見つかれば、それだけで長く落ち着く子も多くいます。効果判定には最低2〜3週間の徹底が必要です。

ビタミンB12(コバラミン)の補給

慢性腸症では吸収が落ち、不足しがちです。低い場合は補うことで回復を助けます。不足は予後にも関わるため、当院は必ずチェックします。

免疫を抑える薬(反応しない場合に)

食事などで改善しない免疫抑制反応性のタイプでは、ステロイドなどを段階的に用います。「まず強い薬」ではなく、必要と判断したときに使います。薬剤・量は担当獣医師が決定します。

腸内環境のケア

乱れた腸内細菌のバランスを整える目的で、プロバイオティクスなどを併用することがあります。

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ご家庭でできること

慢性腸症は「治しきる」より「上手に付き合って落ち着かせる」病気です。ご家庭の協力が、治療の成否を大きく左右します。

  • 療法食を徹底する……指示された食事だけを与え、おやつ・人の食べ物・味つきの薬・風味つきのフィラリア/駆虫薬まで避けます。ひとつでも混ざると効果を判断できません。
  • 記録をつける……便の状態・回数・血や粘液の有無、嘔吐、食欲、体重を毎日メモして受診時に共有すると、治療の効き目を客観的に判断できます。
  • 薬・補給を勝手にやめない……良くなっても自己判断で中断すると再発しやすい病気です。
  • 急変のサインを覚える……急に食べない・吐き続ける・お腹が張る・むくむ・黒い便や血便が続くときは早めに受診を。
  • 「一度で確定しない病気」と知っておく……試しながら型を見つけていくため、根気よく一緒に進めていきましょう。
療法食とは何か・なぜ獣医師の指導が要るのかを見る

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予後

食事反応性(FRE)のタイプは予後が良好で、多くが食事だけで長く落ち着きます。一方、蛋白漏出性腸症(PLE)や、複数の治療に反応しにくいタイプは注意が必要です。低アルブミン・強い体重減少・低コバラミンなどは、経過が難しくなるサインとされています。だからこそ、早めに見つけて、その子に合う型を丁寧に見きわめることが何より大切です。

当院は、目の前の下痢を止めるだけでなく、「なぜ続くのか」を一緒に考え、その子とご家族が穏やかに過ごせる状態を長く保つことを目指します。長引く消化器症状があれば、どうぞご相談ください。

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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

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Q&A

よくあるご質問

慢性腸症とIBDは違う病気ですか?
大きくは同じ枠組みの中の言葉です。「慢性腸症」は、3週間以上つづく消化器症状の原因のうち、ほかの病気を除いても残るものをまとめた総称です。「IBD(炎症性腸疾患)」は本来、内視鏡の生検で腸の炎症が証明されたものを指す、より狭い言葉です。近年は「どの治療で良くなるか」で分類する考え方が主流になり、食事で落ち着くタイプ・免疫を抑える薬が必要なタイプなどに分けて管理します。
どうして内視鏡や生検が必要なのですか?
慢性腸症は「ほかの原因をひとつずつ除いていく」ことで診断します。寄生虫・膵臓や内分泌の病気などを検査で除外し、それでも説明がつかないときに、腸の炎症の程度や、まぎらわしい腫瘍(とくに猫の小細胞リンパ腫)との区別のために、内視鏡で腸の粘膜を採って調べます。ただし、状態が安定している子では、生検の前にまず食事療法を試すことも多く、必ず最初に内視鏡をするわけではありません。
食事療法はどのくらい続ければ効果がわかりますか?
多くの場合、合う食事に変えると10〜14日ほどで反応が現れます。ただし、その間は指示された療法食だけを与え、おやつ・人の食べ物・風味つきの薬なども避けることが大切です。効果を正しく判断するには少なくとも2〜3週間の徹底が必要で、合う食事が見つかれば数か月単位で続けます。合わなければ別の食事や治療へ段階的に進みます。焦らず一緒に見つけていきましょう。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。