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古谷動物病院古谷動物病院FURUYA ANIMAL CLINICご予約

HEAT STROKE

熱中症

「ハアハアが止まらない」「ぐったりして熱い」——夏だけでなく、命に関わる緊急事態です

犬や猫は人のように汗で体温を下げられず、暑さに弱い動物です。体温が危険なほど上がると、脳・腎臓・血液など全身に障害が及び、短時間で命に関わります。熱中症は「起こさないこと」が最善ですが、疑ったときは応急処置と受診の判断が予後を左右します。冷やしすぎにも注意が必要です。

  • 救急・集中治療科
  • 緊急

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

とくに気をつけたい犬種・猫種

好発(かかりやすい傾向)が知られている犬種・猫種です。必ずかかるわけではありません。

01

病気の概要

熱中症(ねっちゅうしょう、Heat Stroke)とは、体温が正常な範囲を超えて危険なほど上がり、全身の臓器に障害が及ぶ状態です。犬や猫は人のように全身で汗をかいて体温を下げることができず、主に口を開けたパンティング(ハアハア)で放熱するため、暑さや湿気に弱く、熱がこもりやすい体のつくりをしています。

犬の平熱はおよそ38〜39℃台ですが、重症の熱中症では核心(体の深部)の体温が41℃を超え、意識や神経の異常を伴う状態とされます。この段階になると、脳・腎臓・肝臓・消化管、そして血液を固めるしくみまでもがダメージを受け、血液が固まりにくくなる重篤な状態(DIC)や急性腎障害など、多くの臓器の障害へ連鎖します。だからこそ、「暑い環境でぐったり」を見たら、その場から救急対応を始めることが命を分けます。

41℃超

重症の熱中症で問題となる核心温の目安(+意識・神経の異常)

汗をかけない

犬・猫はパンティング中心で放熱。人より熱がこもりやすい

回復後も

体温が下がった後に臓器障害が遅れて出るため必ず受診

02

なぜ危険なのか ― 体の中で起きていること

熱中症は、体温が上がるだけの単純な病気ではありません。高体温をきっかけに、全身で悪循環が始まります。

STEP 1

放熱が追いつかず、体温が上がり続ける

暑さ・湿気・運動・興奮などで熱の産生が放熱を上回る。犬・猫はパンティングでしか十分に放熱できず、湿度が高いと蒸発による冷却も効きにくく、体温がぐんぐん上がる。

STEP 2

細胞と臓器が高温でダメージを受ける

高い体温そのものが、全身の細胞を傷つける。脱水と血圧低下も加わり、脳・腎臓・肝臓・腸などが酸素不足に陥る。この段階で意識やもうろうとした様子が現れる。

STEP 3

腸のバリアが壊れ、炎症が全身へ

腸の壁が傷むと、腸内の細菌や毒素が血液に漏れ出し、全身に激しい炎症を引き起こす。これが多臓器障害を一気に進める引き金になる。

STEP 4

血液凝固の破綻(DIC)・多臓器障害

血液を固めるしくみが暴走・破綻し(DIC)、あちこちで出血や血栓が起こる。腎臓・肝臓など複数の臓器が同時に障害され、命に関わる。体温が下がった後でも進行しうる。

03

こんな子・こんな状況が危険

熱中症は真夏の炎天下だけで起こるものではありません。次のような子・状況では、軽い暑さでもリスクが高まります。

なりやすい子

・短頭種(フレンチブルドッグ・パグ・シーズー・ペルシャ猫など)
・肥満の子・厚い被毛の子
・高齢の子・子犬/子猫
・心臓や呼吸器に持病のある子
・興奮しやすい・運動を我慢できない子

危険な状況

・車内(短時間でも急激に高温になる/たとえ曇りでも危険)
・締め切った室内・エアコンの切れた部屋
・湿度の高い日(気温が高くなくても危険)
・日中〜夕方の暑いアスファルトでの散歩
・水飲み場のない屋外・日陰のないケージ

04

応急処置 ― 冷やしながら、すぐ受診

熱中症を疑ったら、「冷やす」と「病院へ向かう」を同時に進めます。ただし、冷やしすぎにも注意が必要です。

  1. ステップ1涼しい場所へ移す

    直射日光や暑い場所から、風通しのよい涼しい場所・エアコンの効いた室内へすぐ移動します。まずは環境を変えることが第一歩です。

  2. ステップ2全身を濡らして風を当てる

    常温〜やや冷たい水で全身を濡らし、扇風機やうちわで風を当てます。水の蒸発と風で効率よく冷やせます。氷水に全身を浸けるのは避けてください(急激な冷却は逆効果になることがあります)。

  3. ステップ3脇・内もも・首・足先を重点的に

    太い血管が通る脇の下・内もも・首まわり・足先を冷やすと効率的です。濡れタオルや保冷剤はタオルで包んで当て、直接長時間当て続けないようにします。

  4. ステップ4下がってきたら冷却をゆるめる

    体温が下がり始めたら冷却を弱め、下げすぎ(低体温)を防ぎます。目安が分からないときは、冷やしながら病院へ向かい、車内でも冷却を続けます。

  5. ステップ5水は無理に飲ませない・すぐ受診

    意識がはっきりして自分から飲めるなら少量ずつ。ぐったり・けいれん時は無理に飲ませないでください(誤嚥の危険)。応急処置と並行して、必ず動物病院を受診します。

05

診断・治療

来院後は、体温を安全な範囲まで下げながら、全身の状態と臓器へのダメージを評価します。熱中症は「体温を下げて終わり」ではなく、そのあとの全身管理が予後を左右します。

  1. ステップ1体温管理と全身の評価

    核心温を測りながら、安全な範囲まで計画的に冷却します。同時に、意識・呼吸・循環・脱水の程度を評価し、緊急度を判断します。

  2. ステップ2点滴による循環・脱水の補正

    点滴で脱水と血圧を立て直し、腎臓など臓器への血流を確保します。ショックの状態に応じて、集中的な輸液管理を行います。

  3. ステップ3臓器障害・凝固のチェック

    血液検査で腎臓・肝臓の値、血球、血液の固まりやすさ(凝固)などを確認します。DICや急性腎障害などの合併を早くつかみ、対応します。

  4. ステップ4合併症への対応と入院管理

    けいれん・不整脈・消化管の出血・凝固異常など、現れた合併症にそれぞれ対応します。体温が下がった後の遅発性の障害に備え、入院でモニタリングを続けます。

06

予防 ― 起こさないことが最善の治療

熱中症は、環境と習慣で大きく防げる病気です。当院は「起きてからの選択肢」と同じくらい、起こさない工夫を大切にしています。

  • 室内の温度・湿度管理……夏場はエアコンで室温を管理し、湿度にも注意します。留守番中も切らさないようにしましょう。
  • 水はいつでも・複数箇所に……新鮮な水を、いくつかの場所に用意します。夏場は飲水量にも気を配りましょう。
  • 散歩は涼しい時間に……日中〜夕方の暑い時間・熱いアスファルトを避け、朝晩の涼しい時間に。地面に手の甲を当てて熱さを確かめる習慣を。
  • 車内・締め切った場所に残さない……短時間でも厳禁です。
  • 高リスクの子はとくに慎重に……短頭種・肥満・高齢・持病のある子は、無理をさせず、少しの異変でも早めに相談を。

07

さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

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Q&A

よくあるご質問

涼しくして少し休ませたら元気になりました。もう受診しなくて大丈夫ですか?
見た目が回復しても、必ず受診してください。熱中症の怖さは、体温が下がったあとから、腎臓・肝臓の障害や血液が固まりにくくなる状態(DIC)などが遅れて現れる点にあります。半日〜数日たってから急変することもあります。「元気そうだから」と自己判断せず、一度診せていただくことで、隠れたダメージを血液検査などで確認できます。応急処置で体を冷やしながら、すぐにご連絡ください。
応急処置で氷水に浸けたり、氷を当てたりしてもいいですか?
氷水に全身を浸けるのは避けてください。急激に冷やしすぎると、体の表面の血管が縮んで熱がこもり、かえって体温が下がりにくくなったり、震えを招いたりします。おすすめは、常温〜やや冷たい水で全身を濡らし、扇風機やうちわで風を当てる方法です。脇の下・内もも・首・足先を重点的に冷やすと効率的です。体温が下がってきたら冷却をゆるめ、下げすぎないことも大切です。冷やしながら、すぐに動物病院へ向かってください。
短頭種(フレンチブルドッグ・パグなど)はやはり危険ですか?
はい、とくに注意が必要です。鼻先の短い短頭種は、口を開けてハアハアする(パンティング)による放熱が苦手で、気道も狭いため、軽い暑さや興奮・運動だけでも熱中症を起こしやすい体質です。ほかにも、肥満・高齢・心臓や呼吸器に持病のある子、厚い被毛の子、子犬・子猫も高リスクです。これらの子では、真夏でなくても、湿度の高い日や車内・締め切った室内で危険が高まります。予防を徹底し、少しでも様子がおかしければ早めにご相談ください。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。