本文へスキップ
古谷動物病院古谷動物病院FURUYA ANIMAL CLINICご予約

CONSTIPATION / MEGACOLON

猫の便秘・巨大結腸症

「トイレで気張るのに出ない」——早めの管理が、結腸を守ります

便秘は、放っておくと便が固まって出せなくなり(宿便)、やがて結腸が伸びきって動かなくなる「巨大結腸症」へと進むことがあります。とくに猫に多い病気です。早い段階なら水分や食事の管理で戻せますが、進むと元に戻りにくくなります。「気張るのに出ない」時こそ、早めにご相談ください。

  • 消化器科
  • 便秘

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

01

病気の概要

便秘は、便が乾いて硬くなり、うまく出せなくなった状態です。犬猫のどちらにも起こりますが、とくに猫に多いお悩みです。一時的な便秘はよくあることですが、くり返したり長引いたりすると、少しずつ深刻な段階へ進んでいきます。

便秘が重くなって便を出せなくなった状態を宿便(しゅくべん)、さらに進んで結腸(大腸)が伸びきり、動かなくなってしまった状態を巨大結腸症(きょだいけっちょうしょう)と呼びます。これらは別々の病気ではなく、ひとつながりの段階としてとらえることが大切です。

便秘 → 宿便 → 巨大結腸症

放置すると進む、ひとつながりの段階

約6割

猫の巨大結腸症のうち、原因が特定できない特発性

02

何が起きているのか

結腸(大腸)は、便を送り出すために伸び縮みする筋肉の管です。便秘で便が長くたまると、結腸はその便に押し広げられて伸びます。伸びた状態が続くと、結腸の筋肉が縮む力を少しずつ失っていきます。すると便を送り出せず、さらに便がたまって結腸が伸びる——という悪循環に陥ります。

STEP 1

便秘(可逆的)

便が乾いて硬くなり、出しにくくなる。この段階なら、水分や食事の管理で戻せる。

STEP 2

宿便(obstipation)

硬い便塊がたまり、自力で出せなくなる。摘便や浣腸などの処置が必要になる。

STEP 3

結腸が伸びて動きが低下

便に押し広げられた結腸が伸び、筋肉の縮む力が落ちる。便を送り出せず、さらに便がたまる悪循環に。

STEP 4

巨大結腸症(不可逆的)

結腸が伸びきって動かなくなった状態。内科治療に反応しにくく、重度では手術(結腸亜全摘術)が必要になる。

03

原因・かかりやすい条件

猫の巨大結腸症は、原因がはっきりしない「特発性」がもっとも多く、全体のおよそ6割を占めるとされます。そのほか、次のような背景があります。

原因具体例
特発性原因不明の結腸の運動低下(猫で最多)
骨盤の狭さ骨盤骨折が治ったあとの変形で、便の通り道が狭くなる
神経の問題骨盤・尾の付け根の神経の障害、マンクス猫の仙骨の形成異常
脱水・食事飲水不足、水分の少ない食事、毛玉や異物
環境・トイレ不潔なトイレ、落ち着けない場所で排便を我慢する
基礎疾患・薬慢性腎臓病(脱水)、甲状腺・電解質の異常、一部の薬

高齢・肥満で結腸の動きが落ちている猫や、慢性腎臓病で脱水しやすい猫は、とくに便秘になりやすい傾向があります。

04

症状・サイン

  • トイレで何度も気張るのに、少ししか出ない・出ない
  • 硬く乾いた便、コロコロした少量の便
  • トイレの外での排便、トイレに長くこもる
  • 食欲がない・元気がない・嘔吐(進行すると)
  • お腹を触ると硬い便のかたまりを感じる
  • 巨大結腸症では、慢性的な脱水・体重減少・毛づやの悪化

05

診断・検査

便秘そのものの確認に加えて、「なぜ便秘になっているのか」という背景を探ることが大切です。

問診・触診・直腸検査

排便の様子・食事・飲水・トイレ環境を伺い、お腹を触って便のたまり具合を確認します。骨盤の狭さや腫瘤の有無もみます。

レントゲン検査

便のたまり具合、骨盤の変形や異物・腫瘤を確認します。結腸の太さを背骨(腰椎)と比べて、巨大結腸症の程度を客観的に評価します。

血液検査・尿検査

脱水・電解質の乱れ(カリウム・カルシウム)、慢性腎臓病や甲状腺など、便秘の背景にある病気を調べます。

必要に応じた追加検査

慢性・再発するケースでは、神経の検査や超音波・内視鏡で、通り道をふさぐ病変がないかを詳しく調べます。

06

治療

治療は重症度に応じて段階的に選びます。軽ければ家庭での管理から、進んでいれば処置や手術まで対応します。

軽症:脱水補正と生活・食事の管理

点滴で脱水を補い、飲水を増やす工夫、水分や繊維を意識した食事に整えます。獣医師の指示のもとで便軟化剤を使うこともあります。

中等症:摘便・浣腸(病院で安全に)

たまった便を、病院で安全に取り除きます。硬い便塊は、必要に応じて麻酔をかけて摘便することもあります。人用の浣腸は使いません(下記の注意参照)。

結腸を動かす薬(プロカイネティクス)

結腸の動きを助ける薬を用いることがあります。ただし、伸びきった巨大結腸症では効きにくくなります。薬の種類・量は担当獣医師が判断します。

重度・不可逆例:結腸亜全摘術(手術)

内科治療に反応しない巨大結腸症では、伸びて動かなくなった結腸の大部分を切除する手術を行います。多くの子が、術後に快適な排便を取り戻せます。

07

ご家庭でできること・予防

  • 水分をしっかりとる……脱水は便秘の大きな原因です。ウェットフードの活用、新鮮な水を複数箇所に置く、流れる給水器を使うなどの工夫が有効です。
  • トイレ環境を整える……清潔で、静かに落ち着ける場所に、十分な数と大きさのトイレを。こまめに掃除して、排便を我慢させないことが大切です。
  • 適正体重を保つ……肥満は結腸の動きを鈍らせます。体重管理が予防につながります。
  • 食事の管理……獣医師の指示のもと、水分や繊維に配慮した食事を選びます。
  • 早めに受診する……便秘は「進む前に手を打つ」ことが何より大切です。気張って出ない・便が少ない・食欲が落ちたときは、早めにご相談ください。
療法食とは何か・なぜ獣医師の指導が要るのかを見る

08

予後

早い段階で管理を始めれば、多くの子が水分・食事・便軟化剤などの組み合わせで、長く快適に過ごせます。巨大結腸症まで進んで内科治療に反応しなくなった場合でも、結腸亜全摘術という手術で、多くの子が排便を取り戻せます。術後しばらくは軟便が続くことがありますが、次第に落ち着いていきます。

大切なのは、「たかが便秘」と見過ごさず、進行させないうちに管理を始めることです。当院は、目の前の便秘を解消するだけでなく、その背景にある原因まで見きわめ、その子が快適に排便できる毎日を長く保つことを目指します。気になるサインがあれば、どうぞ早めにご相談ください。

09

さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

消化器科のページへ戻る

はじめてご来院される方へ

ご予約から診察・治療方針のご提案までの流れを、わかりやすくまとめています。

はじめての方はこちら

Q&A

よくあるご質問

猫が何度もトイレで気張っています。便秘でしょうか?
便秘の可能性がありますが、油断は禁物です。「気張るのに出ない」様子は、実は「便」ではなく「おしっこ」が出ていない尿道閉塞のことがあり、とくにオス猫では数時間で命に関わる緊急事態です。見た目だけでは区別が難しいため、気張って出ない状態が続くときは、便秘と決めつけず、できるだけ早く受診してください。当院で、便か尿かを含めて確かめます。
人用の浣腸を使ってもいいですか?
使わないでください。人用の浣腸薬(リン酸塩を含むもの)は、猫では重い電解質異常を起こし、命に関わることがあります。市販の下剤や浣腸を自己判断で使うのは危険です。便が出せずに苦しそうなときは、家庭で無理をせず、動物病院で安全に処置を受けてください。便秘の管理には、獣医師の指示のもとで使う便軟化剤や食事療法があります。
巨大結腸症になったら、もう治らないのですか?
早い段階の便秘であれば、水分・食事・便軟化剤などの管理で十分にコントロールできます。ただし、便秘を繰り返して結腸が伸びきり、動かなくなった「巨大結腸症」まで進むと、内科の治療だけでは戻りにくくなります。そうした重度で内科治療に反応しない場合は、傷んだ結腸を切除する手術(結腸亜全摘術)で、多くの子が快適に排便できるようになります。進行させないよう早めに管理を始めることが大切です。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。