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古谷動物病院古谷動物病院FURUYA ANIMAL CLINICご予約

HYPOTHYROIDISM

犬の甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンが不足する、中〜高齢の犬に多い病気

「元気がない」「食べていないのに太る」「左右対称に毛が薄くなる」——それは甲状腺ホルモンの不足かもしれません。補充で大きく改善する一方、実は“もっとも診断を間違えやすい”病気のひとつでもあります。当院は、思い込みで決めつけず、正しく見極めることを大切にしています。

  • 一般内科
  • シニアに多い
  • ホルモンの病気

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

とくに気をつけたい犬種・猫種

好発(かかりやすい傾向)が知られている犬種・猫種です。必ずかかるわけではありません。

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病気の概要

甲状腺機能低下症(Hypothyroidism)は、のどにある甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが不足する病気です。甲状腺ホルモンは全身の代謝(エネルギーの燃やし方)を調節するアクセルの役割を持ち、不足すると体じゅうの働きがゆっくりになります。

中〜高齢の犬に多く、猫ではまれです。適切に診断できれば、ホルモンの補充で症状の多くが大きく改善する、管理しやすい病気です。

一方でこの病気には、もうひとつ知っておいていただきたい重要な側面があります。それは、犬でもっとも“診断を間違えやすい(過剰に診断されやすい)”病気のひとつだということです。だからこそ当院は、「数値がひとつ低いから」で決めつけず、症状と複数の検査を突き合わせて、正しく見極めることを大切にしています。

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何が起きているのか

甲状腺ホルモンの量は、脳(下垂体)からの指令(TSH)でちょうどよく保たれています。この病気の大半(95%以上)は、甲状腺そのものが壊れていく原発性とよばれるタイプです。原因は主に2つあります。

リンパ球性甲状腺炎

Lymphocytic thyroiditis

免疫の異常により、甲状腺がゆっくりと壊されていくタイプ。自己免疫が関わると考えられ、遺伝的な素因のある犬種もあります。

特発性萎縮

Idiopathic atrophy

甲状腺の組織が失われ、脂肪に置き換わっていくタイプ。甲状腺炎の“なれの果て”である可能性も議論されていますが、原因ははっきりしていません。

甲状腺ホルモンはほぼ全身の臓器に作用するため、不足すると症状も全身に、そして多彩に現れます。これが「なんとなく元気がない」といった漠然とした形で気づかれる理由です。

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好発・年齢

  • 発症の多くは中年期(およそ4〜10歳)です。
  • 中〜大型犬に多い傾向があります。
  • 好発犬種として、ゴールデン・レトリバー、ドーベルマン、アイリッシュ・セッター、ミニチュア・シュナウザー、コッカー・スパニエル、ビーグルなどが知られています。
  • 性別による明確な差は確立していません。

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症状・サイン

代謝が落ちることで、次のようなサインが現れます。ゆっくり進むため、気づかれにくいのが特徴です。

まれですが、末梢神経の障害・顔面神経麻痺・ふらつき(前庭障害)・巨大食道などの神経筋症状を伴うこともあります。また、血液検査で高コレステロール血症(約8割)や軽い貧血がみられることも、診断の手がかりになります。

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診断・検査 ― “過剰診断”を避けるために

この病気の診断で、当院がもっとも慎重になる理由があります。それは、甲状腺ホルモン(T4)が、この病気でなくても下がってしまうことがとても多いからです。

当院では、症状を大前提に、次の検査を組み合わせて判断します。

総サイロキシン(総T4)

スクリーニングの中心。“否定する”のに強い検査で、十分に高ければ低下症はほぼ考えにくくなります。逆に、低いだけでは確定できません(上記の理由で下がるため)。

遊離T4(平衡透析法)

ほかの病気の影響を受けにくく、総T4より確実性が高い測定法。総T4と組み合わせて解釈します。

甲状腺刺激ホルモン(TSH)

低下症では上がるはずの指標。ただし本当に低下症でもTSHが正常な犬が2〜4割いるため、「TSHが正常だから違う」とは言い切れません。単独では使いません。

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治療

治療は、不足している甲状腺ホルモンを合成のお薬(レボチロキシン)で補うことです。飲み薬を続けることで、症状の多くが改善していきます。

効き始め

元気・活力は約2週間で

まず元気・活動性・気持ちの面が改善してきます。

ゆっくり

皮膚・被毛・体重は最大3か月

毛が生えそろい、体型が整うまでには、数か月かかります。あせらず続けることが大切です。

確認

血液検査で量を調整

開始から数週間後、投与後の決まった時間に採血してホルモン値を確認し、量を調整します。安定後も定期的に確認します。

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予後・ご家庭でのケア

正しく診断され、適切に補充できれば、予後は良好です。多くの症状は数週間〜数か月で改善し、その子らしい元気な暮らしを取り戻せます。生涯にわたる投薬が前提となりますが、続けやすいお薬です。

「年のせいかな」と思っていた元気のなさや体型の変化が、治療で見違えるように戻ることもあります。一方で、あわてて治療を始める前に、正しく見極めることも同じくらい大切です。気になるサインがあれば、まずはご相談ください。その子とご家族が幸せに過ごせることを目標に、選択肢を一緒に考えます。

08

さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

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Q&A

よくあるご質問

健康診断で「T4が低い」と言われました。甲状腺の病気ですか?
一度の「T4が低い」だけでは、甲状腺機能低下症とは判断できません。甲状腺ホルモン(T4)は、実はこの病気でなくても下がることがよくあります。ほかの病気があるとき、一部のお薬(ステロイドなど)を使っているとき、犬種によっては健康でも低めなことがあります。当院では、症状があるかどうかを大前提に、遊離T4やTSHなど複数の検査と合わせて総合的に判断します。「低い数値ひとつ」で治療を始めないことが、この病気ではとても大切です。
サイトハウンド(グレイハウンドなど)は数値が低く出ると聞きました。本当ですか?
はい。グレイハウンド、ウィペット、サルーキなどのサイトハウンド系の犬は、健康であっても甲状腺ホルモンの値が一般的な基準より低く出ることが知られています。これを知らずに一般的な基準だけで判断すると、健康な子を「低下症」と誤ってしまいます。犬種の特性をふまえて解釈することが必要です。当院はこうした犬種差も考慮して診断します。
一度飲み始めたら、一生続ける必要がありますか?
多くの場合、甲状腺ホルモンの補充は生涯継続します。不足した分を補う治療のため、やめると症状が戻ってしまうからです。ただし、そもそも診断が正確であることが大前提です。当院では、治療を始めたあとも、投与後の時間を決めた血液検査と症状の両面から「本当に効いているか・量は適切か」を確認し、必要に応じて見直します。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。