本文へスキップ
古谷動物病院古谷動物病院FURUYA ANIMAL CLINICご予約

GLAUCOMA

犬と猫の緑内障

眼圧の上昇が視神経を傷つける、時間との勝負の眼科疾患

「片目が赤く充血して、なんだか痛そう」「目が大きく飛び出してきた」——それは緑内障のサインかもしれません。緑内障は眼の中の圧(眼圧)が上がって視神経を傷つける病気で、急性の発作では数時間から数日で視力を失うこともあります。だからこそ、早く気づき、早く受診することがなにより大切です。

  • 眼科

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

とくに気をつけたい犬種・猫種

好発(かかりやすい傾向)が知られている犬種・猫種です。必ずかかるわけではありません。

01

病気の概要

緑内障(りょくないしょう:Glaucoma)は、眼の中の圧力=**眼圧(がんあつ)**が高くなり、その圧によって視神経と網膜が傷つけられて、視力が失われていく病気です。眼の中では「房水(ぼうすい)」という透明な液体がつねに産生され、同じだけ排出されることで、一定の眼圧が保たれています。この排出がうまくいかなくなると房水が眼の中にたまり、眼圧が上がっていきます。

10–25mmHg

犬の正常な眼圧の目安(これを大きく超えると緑内障を疑う)

数時間

急性発作で視神経の不可逆的な障害が始まりうる時間

2

原発性(素因)と続発性(他疾患に続発)の大きな2分類

02

病気のメカニズム ― 原発と続発

緑内障は、その成り立ちによって大きく2つに分けられます。どちらのタイプかによって、治療の考え方も、反対側の眼への対応も変わってきます。

原発緑内障

Primary Glaucoma

眼の中の房水の排出路(隅角:ぐうかく)に生まれ持った異常があり、他に眼の病気がないのに眼圧が上がるタイプです。遺伝的な素因が背景にあり、好発犬種で多くみられます。片眼が発症すると、反対の眼も将来的に発症する危険が高いのが特徴です。

続発緑内障

Secondary Glaucoma

別の眼の病気が原因となって、二次的に房水の流れがさまたげられ眼圧が上がるタイプです。ぶどう膜炎・水晶体脱臼・白内障(とくに進行した過熟期)・眼内の腫瘍・外傷・眼内出血などが引き金になります。もとの病気の管理が重要になります。

眼圧が高い状態が続くと、慢性期には眼球そのものが大きく膨らむ「牛眼(ぎゅうがん)」と呼ばれる状態になることもあります。ここまで進むと視力の回復は難しく、痛みの管理が治療の中心になります。

03

好発犬種と遺伝的背景

原発緑内障には遺伝的な素因が関わり、特定の犬種で発生率が高いことが知られています。とくに柴犬は、原発緑内障の発生率が犬種のなかで最上位とする報告があり、日本ではこの病気を語るうえで欠かせない犬種です。

犬種傾向
柴犬原発緑内障の発生率が犬種で最上位との報告。感受性遺伝子SRBD1との関連が指摘される。
シー・ズー柴犬に次いで原発緑内障の報告が多い犬種のひとつ。
アメリカン・コッカー・スパニエル ほか眼の構造的な素因から原発緑内障を起こしやすい犬種として知られる。

猫の緑内障は、犬に比べると原発性はまれで、多くはぶどう膜炎や眼内リンパ腫などに続発します。猫では慢性に経過することが多く、気づかれにくいため、目の色や大きさの変化に注意が必要です。

04

症状・気づき方

緑内障のサインは、痛みと充血、そして見え方の変化として現れます。急性か慢性かで見た目も変わります。

サイン内容
白目の強い充血白目の血管が太く浮き出て、目全体が赤く見えます(強膜の充血)。
角膜の濁り黒目(角膜)がうっすら青白く曇って見えます(角膜浮腫)。
瞳孔が開いたまま明るくしても瞳孔が縮まりにくく、開き気味になります。
痛みのサイン目をショボショボさせる・こする・涙が増える・元気食欲が落ちる。
見え方の変化ものにぶつかる・段差や暗い場所を嫌がる・呼んでも反応が鈍い。
眼球の腫大(牛眼)慢性化すると眼そのものが大きく膨らんで見えます。

05

診断・検査

緑内障の診断でもっとも重要なのは、眼圧の測定です。専用の器械(トノメーター)で、痛みの少ない方法で眼圧を測ります。

STEP 1

問診・見え方の評価

いつから・どちらの目に・どんな変化があったかを丁寧に伺います。

STEP 2

眼圧測定(トノメトリー)

トノメーターで眼圧を測定します。犬の正常はおおむね10〜25mmHgが目安で、これを大きく超えると緑内障を疑います。必ず左右を比較します。

STEP 3

眼の総合的な検査

角膜・前房・瞳孔・水晶体・眼底などを観察し、原発か続発かを見極めます。続発なら、その原因(ぶどう膜炎・水晶体脱臼・腫瘍など)を探します。

STEP 4

反対側の眼の評価

原発緑内障が疑われる場合、まだ発症していない反対の眼も評価し、予防的な管理の必要性を判断します。

06

治療・管理

緑内障の治療は、「視力が残っているか」「痛みがどの程度か」「原発か続発か」によって方針が変わります。共通するゴールは、眼圧を下げて視神経を守ることと、痛みを取り除くことです。

  1. ステップ1急性発作への緊急対応

    急性緑内障では、まず眼圧をできるだけ速やかに下げることを最優先にします。房水の産生を抑える・排出を促す・眼内の水分を引く、といった作用の薬剤を組み合わせて用います(薬剤の種類・量はその子の状態に応じて個別に判断します。具体的な内容は担当獣医師にご確認ください)。

  2. ステップ2点眼薬による眼圧管理

    視力が残っている眼では、眼圧を下げる点眼薬で長期的にコントロールを図ります。継続的な点眼と、定期的な眼圧測定によるモニタリングが大切です。

  3. ステップ3反対側の眼の予防

    原発緑内障では、まだ発症していない反対の眼に予防的な点眼を行い、発症を遅らせる・早期にとらえることを目指します。

  4. ステップ4続発緑内障では原因の治療

    ぶどう膜炎・水晶体脱臼・腫瘍など、眼圧上昇の引き金になっている病気があれば、その治療を並行して行います。

  5. ステップ5外科的な選択肢

    点眼で管理が難しい場合や、すでに失明して痛みが強い眼では、レーザー治療・房水を逃がすための手術・義眼挿入・眼球摘出などを検討します。すでに見えていない眼でも、痛みから解放してあげることは、その子が穏やかに暮らすための前向きな選択です。

07

ご家庭での早期発見・予防

原発緑内障そのものを完全に予防することは難しいですが、早く気づくことは、飼い主だからこそできる大切な役割です。

心がけたいこと

  • ふだんから左右の目を見比べ、色・大きさ・充血の違いに気づけるようにする
  • 好発犬種(柴犬など)は、健診時に一度眼圧を測っておく
  • 片目の急な充血・濁り・痛がるそぶりは、その日のうちに相談する
  • ものにぶつかる・暗い場所を嫌がるなど、見え方の変化にも注意する
  • ぶどう膜炎や白内障など、緑内障の引き金になる眼の病気を放置しない

避けたいこと

  • 「そのうち治るかも」と、赤い目・痛がる目を数日様子見する
  • 自己判断で市販の目薬(人用など)を使う
  • すでに片目が緑内障なのに、反対の眼のチェックを受けない

「片目が赤いだけ」という段階でのご相談も歓迎です。緑内障は早く動けるほど、残せるものが多い病気です。その子とご家族が幸せに過ごせることを目標に、選択肢を一緒に考えます。

08

さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

関連:犬と猫の白内障について(続発緑内障の原因にもなります) 眼科診療のご案内を見る

はじめてご来院される方へ

ご予約から診察・治療方針のご提案までの流れを、わかりやすくまとめています。

はじめての方はこちら

Q&A

よくあるご質問

急に目が赤くなって痛がっています。緊急ですか?
はい、緊急の可能性が高い症状です。急に片目が強く充血する・角膜が青白く濁る・瞳孔が開いたまま・目をショボショボさせて痛がる——これらは急性緑内障の典型的なサインです。急性緑内障では眼圧の急上昇によって視神経が短時間で傷つき、数時間から数日で不可逆的に失明することがあります。「様子を見よう」とせず、できるだけ早くご連絡・ご来院ください。早く眼圧を下げられるほど、視力を残せる可能性が高まります。
緑内障は治りますか?一度失った視力は戻りますか?
緑内障は「完治」させるより「眼圧を管理してつき合っていく」病気です。視神経は一度大きく傷つくと回復せず、失われた視力が戻ることは基本的にありません。だからこそ、視力が残っているうちに眼圧を下げて視神経を守ること(=進行を止めること)が治療の目標になります。すでに失明し痛みが強い眼では、痛みを取り除いてその子が楽に過ごせるようにすることを最優先に考えます。
片目が緑内障でした。もう片方の目も心配ですか?
原発緑内障(生まれ持った素因による緑内障)の場合、片眼が発症すると、反対の眼も高い確率で将来的に緑内障を起こすことが知られています。そのため、発症していない側の眼にも予防的な点眼を行い、定期的に眼圧を測って早期発見に努めることがよくあります。続発緑内障(他の眼の病気に続いて起こるもの)では、その原因となっている病気の管理が重要になります。どちらのタイプかによって対応が変わります。
柴犬は必ず緑内障になりますか?
いいえ、必ずなるわけではありません。柴犬は原発緑内障の発生率が犬種のなかで高いことが報告されており、感受性に関わる遺伝子(SRBD1)も指摘されていますが、あくまで「かかりやすい傾向」であって「必ずかかる」ものではありません。大切なのは、好発犬種であることを知ったうえで、目の充血・見え方の変化などのサインに早く気づけるようにしておくことです。心配な場合は、健診時に眼圧を測っておくと安心です。
目薬だけで管理できますか?
初期や慢性の緑内障では、眼圧を下げる点眼薬で管理できることがあります。ただし点眼だけでは眼圧のコントロールが難しくなる場合も多く、その際はレーザー治療や手術など他の選択肢を組み合わせます。すでに視力がなく痛みを伴う眼では、痛みからの解放を目的とした外科的な処置(義眼挿入や眼球摘出など)が、その子のQOLを守る前向きな選択肢になることもあります。使用する薬剤や術式は状態に応じて個別に判断します。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。