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病気の概要
アジソン病(Addison's Disease、副腎皮質機能低下症 / Hypoadrenocorticism)は、クッシング症候群とはちょうど逆に、副腎から出るホルモンが不足してしまう病気です。不足するのは、ストレスに対応する「コルチゾール」と、体内のナトリウム・カリウムのバランスや血圧を保つ「アルドステロン」です。
この病気の最大の特徴は、症状がはっきりせず、良くなったり悪くなったりを繰り返すことです。「元気がない」「吐く・下す」「食欲にムラがある」といった、ありふれた不調として現れるため、ほかの病気と間違われやすく、いわゆる偽装の名手(グレート・プリテンダー)とも呼ばれます。
見つけにくい病気ですが、正しく診断できれば、不足したホルモンを補うことで予後はとても良好です。多くの犬が、普通に近い暮らしを取り戻せます。当院は、ありふれた症状の奥に隠れたこの病気を見逃さないことを大切にしています。
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何が起きているのか
副腎皮質から出る2種類のホルモンが不足することで、全身に影響が出ます。
コルチゾール(糖質コルチコイド)の不足
ストレスへの対応・血糖の維持・消化管の保護などができなくなります。元気消失・食欲不振・嘔吐・下痢・低血糖として現れ、ストレスがかかると一気に悪化します。
アルドステロン(鉱質コルチコイド)の不足
ナトリウムを保てず、カリウムを排出できなくなります。低ナトリウム血症・高カリウム血症が起こり、脱水・低血圧・不整脈(危険な徐脈)につながります。
多くは、免疫の異常により副腎皮質が壊されていく原発性のタイプです。ほかに、脳の下垂体からの指令不足による二次性や、クッシング症候群の治療薬の効きすぎ・ステロイドの急な中止による医原性のものもあります。
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好発・年齢
- 若〜中年齢での発症が多く(診断時の中央値は4歳前後)、幅広い年齢で起こります。
- 雌にやや多い傾向があります。
- 遺伝的な素因が知られる犬種として、スタンダード・プードル、ポルトガル・ウォーター・ドッグ、ノヴァ・スコシア・ダック・トーリング・レトリバー、ビアデッド・コリーなどがあります。ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアやグレート・デーンなどでもリスクが指摘されています。
- ただし、実際にはどの犬種でも起こり得ます。
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症状・サイン
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診断・検査
診断では、「アジソン病かもしれない」を除外する検査と、確定する検査を段階的に使います。
基礎コルチゾール(スクリーニング/除外)
安静時の血中コルチゾールを測ります。“否定する”のに非常に優れた検査で、値が十分に高ければアジソン病はほぼ除外できます。ただし、低い場合は「疑い」にとどまり、これだけでは確定できません。
ACTH刺激試験(確定診断)
副腎を刺激するホルモンを注射し、コルチゾールが反応して上がるかをみます。反応がなければアジソン病と確定できる、診断の決め手となる検査です。
電解質(ナトリウム・カリウム)
古典的なタイプでは低ナトリウム・高カリウムを認めます。ただし、非定型タイプでは正常なため、これだけで判断はできません。
原発性か二次性かの鑑別
必要に応じて、下垂体からの指令ホルモン(内因性ACTH)を測り、副腎自体の問題(原発性)か、脳からの指令不足(二次性)かを見分けます。
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治療
急性期(アジソンクリーゼ)
クリーゼは救急事態です。輸液で循環・脱水・電解質・血圧を立て直すことを最優先に、不足しているホルモン(グルココルチコイド)の補充や、危険な高カリウム血症への対応を行います。多くは適切な処置で速やかに安定します。
維持療法(生涯のホルモン補充)
状態が落ち着いたら、不足したホルモンを補いながら暮らしていきます。多くの原発性では、2種類の補充を組み合わせます。
鉱質コルチコイドの補充
ナトリウム・カリウムのバランスを保つホルモンを補います。月に1回程度の注射(デソキシコルチコステロン)や、毎日の飲み薬(フルドロコルチゾン)があります。電解質をみながら量・間隔を調整します。
糖質コルチコイド(少量のステロイド)の補充
不足したコルチゾールを、少量のステロイド(プレドニゾロンなど)で補います。ふだんはごく少量で、症状をみて調整します。
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予後・ご家庭でのケア
見つけるのは難しい病気ですが、いったん診断がつき、適切に補充・管理できれば、予後はとても良好です。多くの犬が、普通に近い元気な生活を取り戻します。この「診断は難しいが、管理はできる」というのが、アジソン病のいちばん大切なメッセージです。
「なんとなく調子が悪い日が、ときどきある」——そんな小さな違和感が、この病気を見つける入り口になることがあります。はっきりしない不調が続くときは、遠慮なくご相談ください。ありふれた症状の奥にあるものまで見据えて、その子とご家族が幸せに過ごせることを目標に、選択肢を一緒に考えます。
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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)
より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。
- アジソン病(副腎皮質機能低下症)/MSD獣医マニュアル・獣医師向け(英語) — 確定診断(ACTH刺激試験)・クリーゼの救急対応・生涯の補充療法まで解説。
- 犬の副腎の病気/MSD獣医マニュアル・飼い主向け(英語) — アジソンとクッシングの両方を、飼い主向けにやさしく解説。

