
BLADDER VOLUME & URINE OUTPUT
膀胱尿量・尿量(UOP)計算ツール
超音波の3径から、膀胱内の尿量と時間あたり尿量を推定する
獣医療関係者向けのツールです。犬・猫の膀胱を超音波で線形計測し、膀胱内の尿量(mL)と時間あたり尿量(mL/kg/h)を推定します。当院は計測体位を仰臥位に統一しているため、既定の式は L×W×H×0.52 です。推定には無視できない誤差があるため、点推定と同じ大きさで95%区間も表示します。
- 犬
- 猫
- 獣医療関係者向け
CALCULATOR
計算する
体重と超音波で測った3径(cm)を入れると、膀胱内の尿量を推定します。一定時間後にもう一度測ると、その間の時間あたり尿量(mL/kg/h)と判定域まで出ます。
尿量(mL/kg/h)の計算に使います
計測体位:仰臥位
計算式:L × W × H × 0.52 (cm で入力すると mL が出ます)
出典:楕円体の標準式。仰臥位での比較で最良(Cooper ら 2020)
誤差の出典:Cooper ら 2020(犬・仰臥位・既知注入量との比較)
入力した値はこのブラウザの中だけで計算しており、送信も保存もしていません。
POSITION
体位と式は、セットで選ぶ
当院は仰臥位を基本とします。犬では仰臥位のほうが実容積に近いという報告が一貫しているためです。Atalan ら(1999)は仰臥位で過小評価・右側臥位で過大評価の傾向を示し、生体犬では仰臥位のほうが正確だとしています。Cooper ら(2020)も「2D超音波では仰臥位のほうが精度が高いため」として全頭を仰臥位でスキャンしました。
そのうえで、式は体位に合わせて選ぶ必要があります。次は Cooper ら(2020)が仰臥位で3式を直接比較した結果です(ビーグル10頭・注入量 5/7.5/10 mL/kg・各3回・測定者は獣医放射線科の専門認定医1名)。
| 式 | 既知注入量との平均差 ± SD | 位置づけ |
|---|---|---|
| L × W × H × 0.52 | +4.2 ± 13.1 mL | 当院の基本。仰臥位で最も乖離が小さい |
| L × W × ((DL+DT)/2) × 0.625 | +20.2 ± 15.9 mL | 深さを縦断・横断の平均で取る式(Atalan ら 1998) |
| L × W × H × 0.2π | +20.3 ± 17.1 mL | 右側臥位(AFAST cysto-colic view)で導出された式。仰臥位では過大評価 |
仰臥位では 0.52 が明確に優れます。0.2π は右側臥位(AFAST の cysto-colic view)で導出・検証された式で、仰臥位で使うと20 mL前後の系統的な過大評価になります。右側臥位で測る施設であれば 0.2π が適切です。
ERROR
誤差の見積もり方
推定値の区間を知らずに使うと判断を誤ります。このツールは次の考え方で95%区間を出しています。
- 1回の測定:仰臥位・既知注入量との比較で得られた式ごとの標準偏差(0.52 式で 13.1 mL)を使い、±1.96SD を区間とする
- 2時点の差:2回の測定誤差を二乗和平方根で合成する(13.1 × √2 ≒ 18.5 mL)。両端の最悪の組み合わせを取ると約2倍に膨らみ、明らかな正常域でも警告が出てしまう
- 間に排出された尿量:実測値なので誤差を乗せない
- 系統誤差(式のバイアス):推定値の自動補正には使わない。ただし2時点の差分では両測定に同じ向きで乗るため大きく相殺し、容積そのものより尿量への影響は小さい
猫には仰臥位での検証データが存在しません。そのため猫では、右側臥位・0.2π 式で得られた95%一致限界(−31.9〜+19.2%)から相対標準偏差 約13%を換算して流用しています。ツールの画面にも流用である旨を表示します。
なお犬の誤差データも、対象はビーグル10頭・容量おおむね30〜100 mL・測定者は専門認定医1名です。大型犬や大容量ではこれより誤差が大きくなります(複数の研究が一貫して「容量が増えるほど精度が落ちる」ことを示しています)。
RELIABILITY
もっと信頼できる方法
線形計測は「既存の機器だけで、非侵襲に、繰り返せる」という点で優れますが、精度そのものは上があります。
| 方法 | 報告されている誤差 | 備考 |
|---|---|---|
| 導尿による実測 | 基準 | 閉鎖式カテーテル。尿路感染・尿道損傷のリスクを持ち込む |
| 3D膀胱スキャナ | −9.8 ± 9.8 mL(犬) | 測定者は未訓練の研修医で この精度。所要80秒。ただし猫は +13.6% と過大評価で、精度範囲内は47% |
| 断面積法(プラニメトリ) | 屍体では線形計測より優位 | 生体犬で導出した式は線形計測より精度が低かった。手間ほどの見返りは無い可能性 |
| 線形3径 × 0.52(本ツール) | +4.2 ± 13.1 mL(犬・仰臥位) | 所要165秒。既存の機器だけでできる |
実務としては「仰臥位 × 0.52 式 × 各径を3回測って中央値」が費用対効果の最良点だと考えています。3Dスキャナの導入は、犬中心で入院管理の頻度が高い施設なら検討に値します。
測り方のルール
- 体位を固定する。同じ患者は毎回同じ条件で測る。式も揃える
- プローブ圧をかけない。膀胱が変形すると3径がまとめて狂う
- 断面を決める。L と H は縦断(矢状断)の最大像、W はプローブを90°回した横断像の最大幅
- 楕円体近似が崩れる状況では使わない。膀胱壁の著しい肥厚、腫瘤、血餅、憩室があるときは前提が成り立たない
- 自院で較正する。「超音波での推定値」と「導尿による全量吸引」を同一個体で10例ほど並べて記録すると、自院の機器・術者でのバイアスが分かる
UOP
尿量(UOP)の求め方と、乏尿の判定
膀胱の容積そのものは尿量ではありません。時間あたり尿量は次のように求めます。
尿量(mL/kg/h)= ( 2回目の推定容積 − 1回目の推定容積 + その間に排出された尿量 ) ÷ 体重(kg) ÷ 経過時間(h)
「その間に排出された尿量」には、自排尿・導尿・カテーテルからの回収をすべて含めます。ここを取りこぼすと産生量を過小評価し、正常な症例が乏尿に見えます。
判定のしきい値
| 尿量 | 域 | 読み方 |
|---|---|---|
| 2 mL/kg/h 超 | 多尿域 | 輸液量・利尿薬・AKIの多尿期・腎性/中枢性の多尿など |
| 1〜2 mL/kg/h | 正常域 | 十分に補液された犬・猫の目安 |
| 1 mL/kg/h 未満が6時間以上 | 乏尿域 | IRIS AKI grading のサブグレード O に相当(輸液が足りている状態で) |
| 0.3 mL/kg/h 未満が6時間以上 | 無尿域 | まず尿路閉塞・膀胱破裂などの尿の漏出を否定する |
出典:正常尿量 1〜2 mL/kg/h、IRIS の AKI grading(サブグレード O=乏尿 1 mL/kg/h 未満が6時間以上、または無尿)、輸液反応性=6時間以内に 1 mL/kg/h を超えて増加。無尿寄りの目安 0.3 mL/kg/h 未満が6時間以上。
使いどころ
尿量を厳密に管理したい症例では、閉鎖式の尿カテーテルによる実測が基準です。超音波での推定が現実的に効くのは次の場面です。
- 導尿の要否を決める。膀胱が空に近ければ、無理にカテーテルを入れる必要はない
- 残尿を測る。排尿直後の残量は、排尿障害・下部尿路閉塞・膀胱アトニーの評価に直結する
- カテーテルを置きたくない症例の推移を追う。尿道カテーテルは尿路感染と尿道損傷のリスクを持ち込む
- スタッフの曝露を減らす。尿の取り扱いは薬剤代謝物・感染症への曝露を伴う
SOURCES
出典
- Cooper ES, ら. Three-dimensional bladder ultrasound for estimation of urine volume in dogs compared with traditional 2-dimensional ultrasound methods. J Vet Intern Med 2020;34(6):2460-2467.(仰臥位での3式比較・誤差モデルの出典)
- Lisciandro GR, Fosgate GT. Use of urinary bladder measurements from a point-of-care cysto-colic ultrasonographic view to estimate urinary bladder volume in dogs and cats. J Vet Emerg Crit Care 2017;27(6):713-717.(右側臥位・0.2π式・猫の誤差の出典)
- Atalan G, Barr FJ, Holt PE. Assessment of urinary bladder volume in dogs by use of linear ultrasonographic measurements. Am J Vet Res 1998;59(1):10-15.(0.625 式)
- Atalan G, Barr FJ, Holt PE. Effect of body position on ultrasonographic estimations of bladder volume. J Small Anim Pract 1999;40(4):177-179.(体位の影響)
- Atalan G, Barr FJ, Holt PE. Estimation of bladder volume using ultrasonographic determination of cross-sectional areas and linear measurements. Vet Radiol Ultrasound 1998;39(5):446-450.(断面積法)
- Use of a three-dimensional ultrasound device for noninvasive urine bladder volume measurement in dogs and cats(3D機器の犬猫での評価)
- Rodrigues ら. Estimation of urinary volume through ultrasonography in dog cadavers and experimental models. Vet Radiol Ultrasound 2024.(容量による精度の変化)
- IRIS(International Renal Interest Society)ガイドライン(AKI grading・尿量のサブグレード)
Q&A
よくあるご質問
- なぜ既定が 0.52 式なのですか。0.2π ではないのですか。
- 当院が計測体位を仰臥位に統一しているためです。仰臥位で3式を直接比較した研究(Cooper ら 2020・ビーグル10頭・既知注入量)では、0.52 式の平均差が +4.2 mL だったのに対し、0.625 式は +20.2 mL、0.2π 式は +20.3 mL でした。0.2π は右側臥位の AFAST cysto-colic view で導出・検証された式であり、仰臥位で使うと系統的に過大評価します。右側臥位で測る施設であれば 0.2π が適切です。式と体位はセットで選んでください。
- なぜ仰臥位を基本にするのですか。
- 犬では仰臥位のほうが正確だという報告が一貫しているためです。Atalan ら(1999)は、仰臥位では過小評価・右側臥位では過大評価の傾向があり、生体犬では仰臥位のほうが実容積に近いと報告しています。Cooper ら(2020)も「2D超音波では仰臥位のほうが精度が高いため」として全頭を仰臥位でスキャンしています。
- 誤差の95%区間はどう計算していますか。
- 犬では、仰臥位・既知注入量との比較で得られた式ごとの標準偏差(0.52 式で 13.1 mL)を1回の測定の誤差とし、±1.96SD を区間としています。2時点を比べるときは、2回の測定誤差を二乗和平方根で合成します(13.1 × √2 ≒ 18.5 mL)。両端の最悪の組み合わせを取ると約2倍に膨らみ、明らかな正常域でも警告が出てしまうため、この方式に改めました。間に排出された尿量は実測値なので誤差を乗せません。
- 猫の誤差はどう見積もっていますか。
- 猫には仰臥位での検証データが存在しません。そのため、右側臥位・0.2π 式で得られた95%一致限界(−31.9〜+19.2%)から相対標準偏差 約13% を換算して流用しています。ツールの画面でも、猫を選んだときは流用である旨を表示します。区間は目安として読んでください。
- 小型犬で、正常そうなのに毎回「またいでいる」と出ます。
- 測定の分解能の限界です。5kg の犬が6時間で作る尿は30〜60 mL程度で、1回の測定の標準偏差(13.1 mL)と同じ桁になります。この条件では超音波で正常と乏尿を区別できません。観察間隔を延ばして産生量そのものを大きくするか、導尿で実測してください。区間が判定域をまたぐという表示は、誤りではなく「この測り方では答えが出ない」という正しい結果です。
- 3D の膀胱スキャナを導入する価値はありますか。
- 犬中心で入院管理の頻度が高ければ検討に値します。Cooper ら(2020)では 3D機器が −9.8 ± 9.8 mL と2Dの線形計測より良好で、しかも測定者はほぼ未訓練の研修医2名、所要時間も80秒(2Dは165秒)でした。ただし猫では別の検証で +13.6% と過大評価し、メーカーの精度範囲(±15%)に収まったのは47%にとどまります。機器のアルゴリズムがヒトのモデルにもとづくためで、猫では2Dの線形計測のほうが確実です。
- 断面積法(プラニメトリ)のほうが正確ではないのですか。
- 屍体では明らかに優れていました。Atalan ら(1998・Vet Radiol Ultrasound)は、矢状断の断面積を1cm間隔で足し上げる方法が線形計測より大幅に良い予測因子だったと報告しています。ただし同じ研究で、生体犬から導出した断面積の式は線形計測のみの従来式より精度が低いという結果も出ています。生体では呼吸性移動や体位変化があり、手間に見合う見返りが得られない可能性があります。
INFORMATION
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病院前に1台分駐車できます。使用中の場合は近隣の提携パーキングをご利用ください(1時間分のサービス券をお渡ししています)。
ご予約優先制です。
| 診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 9:00〜11:30 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | − |
| 16:00〜18:30 | ● | ● | ● | ● | ● | 16:00〜18:00 | − |
休診日:日曜日・祝日
- 土曜日の午後は18:00までとなります。
- 初診は随時受け付けております。
- 往診・トリミング・麻酔処置は事前のご予約が必要です。
このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。
