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IMHA

犬と猫の免疫介在性溶血性貧血(IMHA)

自分の赤血球を、自分の免疫が壊してしまう。急速に進む、命に関わる貧血です。

「急にぐったりして動かない」「歯ぐきや白目が白い、あるいは黄色い」「おしっこが濃いオレンジ色や紅茶色になった」——それは、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)のサインかもしれません。本来は体を守るはずの免疫が、誤って自分の赤血球を壊してしまう病気です。貧血が急速に進み、血栓などの合併症も起こりうる、命に関わる緊急疾患です。早く気づき、早く治療を始めることが、その子の命を守るうえでなにより大切です。

  • 救急
  • 血液・免疫

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

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病気の概要

免疫介在性溶血性貧血(Immune-Mediated Hemolytic Anemia:IMHA)は、体を守るはずの免疫が、誤って自分自身の赤血球を攻撃して壊してしまう病気です。赤血球が壊されること(溶血)で酸素を運ぶ力が急速に失われ、重い貧血に陥ります。

貧血が急速に進むうえ、血の塊(血栓)が肺などに詰まる合併症を起こしやすく、命に関わる緊急疾患です。早く気づき、早く治療を始めることが、その子の命を守る鍵になります。

溶血

自分の赤血球が壊される。黄疸や濃い尿の色として現れる

急速

貧血が数日で急激に進むことがある緊急疾患

血栓

血栓塞栓症が命に関わる主要な合併症。予防も治療の柱

02

なぜ起こるのか ― 原発性と続発性

IMHAは、原因によって大きく2つに分けられます。この違いは、検査と治療の方向を決める大切なポイントです。

タイプ原因特徴
原発性(一次性)はっきりした引き金がなく、免疫の異常そのものが原因犬ではこちらが多い
続発性(二次性)感染・腫瘍・薬・毒物などが引き金になり、免疫が誤作動する猫では続発性が多い(赤血球に寄生するマイコプラズマ、猫白血病ウイルスなど)

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主な症状

赤血球が壊れて貧血が進むこと、そして壊れた赤血球から出る色素(ビリルビン)によって、次のような症状が現れます。

  • 貧血のサイン:ぐったりする、元気・食欲がない、粘膜(歯ぐき・舌・まぶたの内側)が白い、呼吸が速い、運動をいやがる、失神
  • 溶血のサイン:黄疸(歯ぐき・白目・皮膚が黄色い)、濃いオレンジ色〜紅茶色の尿
  • そのほか:発熱、脾臓が腫れる、食欲不振

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診断

IMHAは、いくつかの検査を組み合わせて総合的に診断します。緊急性が高いため、診断と並行して治療を始めることも少なくありません。

  1. ステップ1血液検査で貧血と溶血を確認

    貧血の程度、赤血球が新しく作られているか(再生の有無)、赤血球が壊れている証拠(ビリルビンの上昇など)を調べます。

  2. ステップ2免疫による破壊を示す所見を確認

    国際的な指針(ACVIM)では、次のうち複数がそろうことを診断の目安とします——顕微鏡で見える球状赤血球、生理食塩水で赤血球が塊になる自己凝集クームス試験(DAT)の陽性。自己凝集は、洗浄しても残るかを確認して精度を高めます。

  3. ステップ3続発性の原因を探す

    レントゲン・超音波・感染症の検査などで、引き金となる別の病気(腫瘍・感染など)がないかを調べます。

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治療 ― 免疫を抑え、血栓を防ぎ、支える

免疫を抑える薬は、数か月かけて、再発しないよう慎重に少しずつ減らしていきます。血液の値が安定してからも、定期的な血液検査で経過を見ながら調整することが大切です。自己判断で急にやめると再発するため、必ず獣医師と相談しながら進めてください。

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免疫介在性血小板減少症(ITP)について

IMHAとよく似た仕組みで、免疫が血小板(血を止める細胞)を壊してしまう病気が「免疫介在性血小板減少症(ITP)」です。血小板が減ると血が止まりにくくなり、次のような出血のサインが現れます。

  • 皮膚や歯ぐきの点状出血(小さな赤い点)・あざ
  • 鼻血、血尿、血便・黒い便(消化管出血)
  • 白目の出血

IMHAと同じく、原発性と続発性があり、治療も免疫を抑えることが中心になります。IMHAとITPが同時に起こることもあり、その状態は「エバンス症候群」と呼ばれます。点状出血やあざ、原因のわからない出血に気づいたら、早めにご相談ください。

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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

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Q&A

よくあるご質問

どんなサインに気づいたら受診すべきですか。
次のような様子があれば、様子を見ずにすぐ受診してください。「急にぐったりして元気・食欲がない」「歯ぐきや舌、まぶたの内側が白い(貧血)」「歯ぐきや白目、皮膚が黄色い(黄疸)」「呼吸が速い・苦しそう」「おしっこが濃いオレンジ色や紅茶色になった」「ふらつく・倒れる」。IMHAは貧血が急速に進むことがあり、発見が遅れると命に関わります。とくに黄疸や尿の色の変化は溶血(赤血球が壊れている)のサインで、緊急性が高い状態です。
なぜ自分の赤血球を壊してしまうのですか。
IMHAは、体を守るはずの免疫が、誤って自分自身の赤血球を「異物」とみなして攻撃・破壊してしまう病気です。原因がはっきりしない『原発性(一次性)』と、別の病気が引き金になる『続発性(二次性)』があります。犬では原発性が多く、猫では感染(赤血球に寄生するマイコプラズマや猫白血病ウイルスなど)や腫瘍などが背景にある続発性が多いとされます。そのため、治療と並行して「引き金になっている病気がないか」を調べることが重要になります。
命に関わる病気と聞きました。どのくらい危険ですか。
IMHAは、急速に進む重い貧血に加えて、血の塊(血栓)が肺などに詰まる合併症(血栓塞栓症)を起こしやすく、これが命に関わる大きな要因になります。誠実にお伝えすると、適切に治療しても救えないことがある、油断できない病気です。一方で、早く診断して免疫を抑える治療と血栓の予防、必要なら輸血を組み合わせることで、乗り越えて回復する子も多くいます。だからこそ、早期の診断と集中的な初期治療が何より大切です。
どんな検査で診断するのですか。
まず血液検査で貧血の程度と、赤血球が壊れている証拠(溶血)を確認します。診断では、免疫による破壊を示すいくつかの所見——顕微鏡で見える球状の赤血球(球状赤血球)、生理食塩水を混ぜると赤血球が塊になる反応(自己凝集)、クームス試験(DAT)——を組み合わせて判断します。あわせて、レントゲンや超音波、感染の検査などで、引き金になる別の病気(続発性の原因)がないかを調べます。総合的に見て診断する病気です。
治療はどのように進めますか。すぐ治りますか。
治療の柱は、暴走した免疫を抑える薬(ステロイドを中心とした免疫抑制療法)です。あわせて、命に関わる血栓を防ぐ薬を使い、貧血が重い場合は輸血で赤血球を補います。続発性であれば、引き金となっている病気の治療も行います。すぐに治る病気ではなく、免疫を抑える薬は数か月かけて、再発しないよう慎重に少しずつ減らしていきます。自己判断で急にやめると再発するため、必ず定期的な血液検査で経過を見ながら調整します。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。