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病気の概要
肛門嚢(こうもんのう)は、肛門の左右(時計でいう4時と8時の位置)にある小さな袋状の器官で、においの強い分泌物をためています。「肛門腺」とも呼ばれます。本来は排便のときに便と一緒に自然に押し出されますが、うまく出せずに分泌物がたまってしまうと、さまざまなトラブルが起こります。
肛門嚢疾患は犬でとても多い身近な病気で、猫にも起こります。多くはしぼって出す(用手排出)ことで解決しますが、放っておくと炎症・膿瘍へと進み、強い痛みを伴うことがあります。
4時・8時
肛門の左右にある肛門嚢の位置。ここに分泌物がたまる
お尻歩き
床にこすりつける仕草が代表的なサイン
小型犬
うまく出せず詰まりやすい傾向。肥満・軟便も要因
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詰まりから膿瘍へ ― 進み方を知る
肛門嚢のトラブルは、放っておくと段階的に進みます。どの段階かによって、対応も変わります。
STEP 1
肛門嚢の詰まり(貯留)
分泌物がうまく出せずにたまり、むずがゆさや違和感が出ます。この段階でしぼって出せば、多くは解決します。
STEP 2
肛門嚢炎(炎症・感染)
たまった分泌物に細菌が増えて炎症を起こします。腫れて痛がり、洗浄や抗菌薬・消炎剤による治療が必要になります。
STEP 3
肛門嚢膿瘍・破裂
膿がたまって皮膚を破り、肛門のわきに穴があいて血や膿が出ます。強い痛みを伴い、切開・洗浄などの処置が必要です。
03
こんなサインに気づいたら
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なぜ詰まりやすくなるのか
肛門嚢が詰まりやすくなる背景には、いくつかの要因があります。再発を防ぐには、ここに目を向けることが大切です。
- 体格・犬種:小型犬は詰まりやすい傾向があります
- 肥満:お尻まわりの筋肉のしまりが落ち、うまく押し出せなくなります
- 便の状態:慢性的な軟便・下痢では、便による自然な圧迫がかかりにくくなります
- 皮膚の状態:アレルギーや脂漏など、皮膚・分泌腺の状態が関わることがあります
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治療 ― 多くは「出して」解決します
ステップ1:用手排出(肛門腺しぼり)
たまった分泌物を、指でやさしく押し出します。詰まりの段階なら、これで多くは解決します。奥に押し込まないよう、コツと加減が必要です。
ステップ2:肛門嚢炎の治療(洗浄・薬)
炎症・感染を起こしている場合は、肛門嚢を洗浄し、抗菌薬や消炎剤で炎症を抑えます。痛みが強いときは鎮痛も行います。
ステップ3:膿瘍の処置(切開・排膿)
膿がたまっている・破裂している場合は、切開して膿を出し、洗浄します。痛みを取り除くことを最優先にします。
ステップ4:繰り返す場合:肛門嚢摘出術
炎症や膿瘍を何度も繰り返し、生活に支障が出る場合は、肛門嚢そのものを摘出する手術を検討します。軟部外科として対応します。
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再発を防ぐために
- 体重管理:適正体重を保ち、お尻まわりの筋肉のはたらきを保ちます
- 便の状態を整える:食物繊維を含む食事など、便の質を整えることが詰まりの予防につながります
- 基礎疾患の管理:皮膚のアレルギーなどがあれば、そちらの管理も並行します
- 定期的なケア:詰まりやすい子は、こまめな用手排出で膿瘍への進行を防ぎます
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見逃してはいけない ― 肛門嚢の腫瘍
肛門嚢には、まれに悪性の腫瘍(肛門嚢アポクリン腺癌)ができることがあります。
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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)
より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。
- 犬と猫の肛門嚢疾患/MSD(Merck)獣医マニュアル(英語) — 詰まり・炎症・膿瘍の病態と治療を専門家向けに整理。
- 肛門嚢の病気/コーネル大学 獣医学部(英語) — 症状・素因・ケアを飼い主向けにわかりやすく解説。
- 犬の肛門嚢炎の総説/Today's Veterinary Practice(英語) — 肛門嚢炎に関する近年の知見をまとめた専門記事。

