本文へスキップ
古谷動物病院古谷動物病院FURUYA ANIMAL CLINICご予約

ANAL SAC DISEASE

犬と猫の肛門嚢疾患(肛門腺のトラブル)

お尻を床にこすりつける、しきりに舐める。その仕草は肛門腺からのサインかもしれません。

「お尻を床にこすりつけて歩く」「肛門のあたりをしきりに舐める・気にする」「お尻から生臭いにおいがする」——それは、肛門のわきにある小さな袋「肛門嚢(肛門腺)」のトラブルかもしれません。よくある身近な病気ですが、詰まったまま放っておくと炎症や膿瘍(破裂)に進み、強い痛みを起こすことがあります。多くはしぼって出すことで解決し、こまめなケアで再発も防げます。

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

01

病気の概要

肛門嚢(こうもんのう)は、肛門の左右(時計でいう4時と8時の位置)にある小さな袋状の器官で、においの強い分泌物をためています。「肛門腺」とも呼ばれます。本来は排便のときに便と一緒に自然に押し出されますが、うまく出せずに分泌物がたまってしまうと、さまざまなトラブルが起こります。

肛門嚢疾患は犬でとても多い身近な病気で、猫にも起こります。多くはしぼって出す(用手排出)ことで解決しますが、放っておくと炎症・膿瘍へと進み、強い痛みを伴うことがあります。

4時・8時

肛門の左右にある肛門嚢の位置。ここに分泌物がたまる

お尻歩き

床にこすりつける仕草が代表的なサイン

小型犬

うまく出せず詰まりやすい傾向。肥満・軟便も要因

02

詰まりから膿瘍へ ― 進み方を知る

肛門嚢のトラブルは、放っておくと段階的に進みます。どの段階かによって、対応も変わります。

STEP 1

肛門嚢の詰まり(貯留)

お尻歩き舐める違和感

分泌物がうまく出せずにたまり、むずがゆさや違和感が出ます。この段階でしぼって出せば、多くは解決します。

STEP 2

肛門嚢炎(炎症・感染)

腫れ痛み赤み

たまった分泌物に細菌が増えて炎症を起こします。腫れて痛がり、洗浄や抗菌薬・消炎剤による治療が必要になります。

STEP 3

肛門嚢膿瘍・破裂

出血強い痛み

膿がたまって皮膚を破り、肛門のわきに穴があいて血や膿が出ます。強い痛みを伴い、切開・洗浄などの処置が必要です。

03

こんなサインに気づいたら

04

なぜ詰まりやすくなるのか

肛門嚢が詰まりやすくなる背景には、いくつかの要因があります。再発を防ぐには、ここに目を向けることが大切です。

  • 体格・犬種:小型犬は詰まりやすい傾向があります
  • 肥満:お尻まわりの筋肉のしまりが落ち、うまく押し出せなくなります
  • 便の状態:慢性的な軟便・下痢では、便による自然な圧迫がかかりにくくなります
  • 皮膚の状態:アレルギーや脂漏など、皮膚・分泌腺の状態が関わることがあります

05

治療 ― 多くは「出して」解決します

  1. ステップ1用手排出(肛門腺しぼり)

    たまった分泌物を、指でやさしく押し出します。詰まりの段階なら、これで多くは解決します。奥に押し込まないよう、コツと加減が必要です。

  2. ステップ2肛門嚢炎の治療(洗浄・薬)

    炎症・感染を起こしている場合は、肛門嚢を洗浄し、抗菌薬や消炎剤で炎症を抑えます。痛みが強いときは鎮痛も行います。

  3. ステップ3膿瘍の処置(切開・排膿)

    膿がたまっている・破裂している場合は、切開して膿を出し、洗浄します。痛みを取り除くことを最優先にします。

  4. ステップ4繰り返す場合:肛門嚢摘出術

    炎症や膿瘍を何度も繰り返し、生活に支障が出る場合は、肛門嚢そのものを摘出する手術を検討します。軟部外科として対応します。

06

再発を防ぐために

  • 体重管理:適正体重を保ち、お尻まわりの筋肉のはたらきを保ちます
  • 便の状態を整える:食物繊維を含む食事など、便の質を整えることが詰まりの予防につながります
  • 基礎疾患の管理:皮膚のアレルギーなどがあれば、そちらの管理も並行します
  • 定期的なケア:詰まりやすい子は、こまめな用手排出で膿瘍への進行を防ぎます

07

見逃してはいけない ― 肛門嚢の腫瘍

肛門嚢には、まれに悪性の腫瘍(肛門嚢アポクリン腺癌)ができることがあります。

08

さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

はじめてご来院される方へ

ご予約から診察・治療方針のご提案までの流れを、わかりやすくまとめています。

はじめての方はこちら

Q&A

よくあるご質問

お尻を床にこすりつけて歩きます。病気ですか。
お尻を床にこすりつける「お尻歩き(スクーティング)」は、肛門嚢(肛門腺)に分泌物が詰まって、むずがゆさや違和感を感じているサインであることが多いです。ほかにも、肛門を気にして舐める・噛む、座るのを嫌がる、お尻から生臭いにおいがする、といった様子がみられます。詰まりの段階でしぼって出してあげれば多くは解決しますが、放っておくと炎症や膿瘍に進むことがあるため、繰り返す場合は一度ご相談ください。なお、寄生虫などお尻歩きの別の原因のこともあるため、続くときは受診をおすすめします。
肛門腺しぼりは自分でやった方がいいですか。頻度はどのくらい?
すべての子に肛門腺しぼりが必要なわけではありません。排便のときに自然に出せている子は、無理にしぼる必要はありません。一方、うまく出せずに詰まりやすい子(とくに小型犬)は、定期的なケアが役立ちます。頻度はその子によって異なり、数週間〜1〜2か月に一度が目安になることが多いです。自宅でのしぼり方は、コツをつかまないと奥に押し込んでしまったり、炎症のある肛門嚢を痛めてしまうことがあります。まずは動物病院やトリミングで方法を教わり、難しければ無理をせずお任せください。
肛門のわきが赤く腫れて、穴があいて血や膿が出てきました。
それは肛門嚢が細菌感染を起こして膿がたまり、皮膚を破って膿瘍が破裂した状態(肛門嚢膿瘍)の可能性が高く、強い痛みを伴います。できるだけ早く受診してください。治療では、膿を出して洗浄し、抗菌薬や消炎剤で炎症を抑えます。破裂前でも、腫れて痛がっている場合は切開して膿を出す処置が必要になることがあります。早めに対応するほど、その子の痛みを早く楽にしてあげられます。
何度も繰り返します。予防はできますか。
再発を防ぐには、詰まりやすくなっている背景に目を向けることが大切です。肥満(お尻まわりの筋肉のしまりが落ちる)、慢性的な軟便や下痢、皮膚のアレルギーや脂漏などが、詰まりやすさに関わります。体重管理、便の状態を整える食事(食物繊維を含む療法食など)、基礎にあるアレルギーの管理、そして必要な子には定期的な肛門腺ケアを組み合わせます。繰り返しがひどく生活に支障が出る場合は、肛門嚢そのものを摘出する手術を検討することもあります。
肛門のあたりにしこりがあります。肛門腺のがんもあると聞いて心配です。
肛門嚢には、まれに悪性の腫瘍(肛門嚢アポクリン腺癌)ができることがあります。この腫瘍は血液中のカルシウムを高くすること(高カルシウム血症)があり、その場合は多飲多尿や食欲低下などの全身症状を伴うことがあります。肛門のわきに硬いしこりを触れる、高齢で肛門まわりの異常が続く、といった場合は、単なる炎症と決めつけず、細胞の検査や画像検査で腫瘍でないかを確認することが大切です。気になるしこりがあれば、早めにご相談ください。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。