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AGGRESSION

犬と猫の攻撃行動

唸る・噛む。それは「強気」ではなく、多くの場合「怖い」か「痛い」のサインです。

「うちの子が咬むようになってしまった」——それは、ご家族にとって本当につらい出来事です。しかし攻撃行動の多くは、その子が強気だからでも、順位を争っているからでもありません。恐怖や痛みから「これ以上近づかないで」と伝えようとした結果であることが、最も多いとされています。だからこそ、叱って抑え込むことは解決になりません。何がその子を怖がらせ、どこが痛むのかを確かめることが、安全への第一歩です。

  • 行動

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

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病気の概要

攻撃行動とは、唸る・歯をあてる・咬みつくなど、相手に危害を加えうる、あるいはその意思を示す行動のことです。犬でも猫でも起こり、ご家族にとってはもっともつらく、そして口に出しにくい悩みのひとつです。

大切な前提があります。攻撃行動でもっとも多い動機は恐怖だとされています。その多くは、相手を支配しようとしているのではなく、怖い状況から距離をとりたいという気持ちの表れです。そしてもうひとつ見落とされやすいのが痛みです。「急に怒りっぽくなった」という変化の裏に、関節や背骨、歯の痛みが隠れていることは珍しくありません。

恐怖

犬の攻撃行動でもっとも多い動機とされる

痛み

急に始まった攻撃行動でまず疑うべき原因

早めに

事故を繰り返すほど対応は難しくなる

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攻撃行動にはいくつかの種類があります

「咬む」とひとことで言っても、その背景はさまざまです。原因が違えば対応も変わるため、まずどのタイプかを見きわめます。

  • 恐怖・防御によるもの:怖い相手や状況から離れたくて出る、もっとも多いタイプ。逃げ場がないときに起こりやすい
  • 痛みによるもの:触られると痛むため、触られること自体を避けようとする。急な変化として現れやすい
  • 資源を守ろうとするもの:食べ物・おもちゃ・寝床・特定の人など、大切なものを守ろうとして出る
  • 縄張りに関するもの:来客や配達など、自分のテリトリーへの侵入者に反応する
  • 転嫁によるもの:別のことで強く興奮した状態のまま、たまたま近くにいた相手に向かってしまう。猫で比較的よく見られます
  • 同居動物とのあいだのもの:多頭飼育で、資源や生活空間をめぐって起こる
  • 葛藤によるもの:どうしてよいかわからない、予測がつかない状況での不安から出る

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「順位争い」という説明は、現在は否定されています

長いあいだ「飼い主に咬むのは、自分のほうが上だと思っているから」「上下関係をはっきりさせるべきだ」と説明されてきました。この考え方は今も広く知られていますが、現在の獣医行動学では支持されていません。

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唸りを叱らないでください

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まず「痛み」と体の病気を確かめます

とくにこれまで平気だったのに、急に唸る・咬むようになった場合、行動の問題として扱う前に体を確かめる必要があります。

  1. ステップ1痛みの評価

    関節・背骨・歯・耳の痛みは、「触られるのを嫌がる」「抱き上げると怒る」「特定の場所だけ触らせない」という形で現れます。当院は整形外科・神経科を専門としており、歩き方や関節・脊椎の評価を日常的に行っています。行動の相談から痛みが見つかることは、実際に少なくありません。

  2. ステップ2ホルモン・内臓の検査

    甲状腺の異常や肝臓の病気などが、いらだちや攻撃性として現れることがあります。血液検査で確かめられるものも多くあります。

  3. ステップ3脳・神経の評価

    まれに、脳の病気や発作の一種が、突発的で説明のつかない攻撃行動として現れることがあります。前後の様子や意識の状態から見分けていきます。

  4. ステップ4感覚の衰えの確認

    目や耳が悪くなると、近づかれても気づかず、突然触られて驚いて咬む、ということが起こります。高齢の子ではとくに大切な視点です。

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咬傷事故が起きてしまったときの手続き

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治療・対応 ― 安全を守りながら、少しずつ

攻撃行動への対応は、まず安全の確保から始まります。そのうえで、その子が「怖くない」と学べる状況を、時間をかけてつくっていきます。

引き金を避ける(管理)

どんな状況で出るのかがわかったら、まずはその状況を避けます。逃げ道をふさがない、食事中や寝ているときに触らない、来客時は別の部屋で過ごしてもらうなど。遠回りに見えますが、事故を防ぎながら次の段階に進むための土台です。

気持ちを変えていく(行動修正)

怖い対象を「怖くないもの」「良いことが起こる合図」に変えていく取り組みです。その子が平気でいられる距離から始め、少しずつ近づけていきます。焦って距離を詰めることが、いちばんの失敗のもとです。

必要に応じてお薬も

不安や恐怖がとても強い子では、その子が学べる状態まで気持ちを落ち着けることが必要です。お薬は「性格を変える」ものではなく、学ぶための土台を整えるものです。使用の可否は、その子の状態をみて担当獣医師が判断します。

攻撃行動のご相談は、ご家族が「こんなことを言ったら、うちの子が悪く思われるのでは」とためらいがちなテーマです。どうか一人で抱えないでください。早くご相談いただくほど、打てる手は多くなります。私たちは、その子とご家族が安心して過ごせることを目標に、一緒に道を探します。

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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

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Q&A

よくあるご質問

咬むのは、うちの子が「わがまま」だからでしょうか。
いいえ、その可能性は高くありません。犬の攻撃行動でもっとも多い動機は恐怖であるとされています。多くの場合、その子は相手を支配しようとしているのではなく、怖い状況から距離をとりたくて「これ以上近づかないで」と伝えようとしています。また、体のどこかが痛むために、触られることを避けようとして唸る・咬むということも珍しくありません。とくに、これまで平気だったのに急に咬むようになった場合は、痛みや病気を強く疑います。「性格が悪くなった」のではなく、「何かが変わった」と考えて、まず体を確かめることが大切です。
「飼い主が下に見られている」と言われました。上下関係をはっきりさせるべきですか。
いいえ、その考え方は現在の獣医行動学では否定されています。犬とヒトのあいだに優位性の階級が存在するという証拠はなく、家族に向けられる攻撃行動の多くは、恐怖・大切なものを守ろうとする気持ち(資源の防衛)・別の対象への興奮が向け替えられること(転嫁)・どうしてよいかわからない葛藤によって説明されます。押さえつける、仰向けにする、睨みつけるといった対立的な方法は、恐怖を強めて攻撃行動を悪化させ、咬傷事故のリスクを高めることが指摘されています。上下関係を作ることではなく、その子が「怖くない」と学べる状況をつくることが解決につながります。
唸ったら叱ってやめさせたほうがよいですか。
いいえ、唸りを叱ることはおすすめできません。唸りは、その子が咬む前に出してくれている大切な警告です。「もう限界です」と言葉のかわりに伝えてくれているのですから、これはむしろありがたいサインです。叱って唸りを止めさせると、その子は「唸ると怒られる」と学習し、警告を出さないまま、いきなり咬むようになってしまうことがあります。これは、ご家族にとってはるかに危険な状態です。唸られたら、叱るのではなく、そのときその子が何を嫌がっていたのかを記録して、同じ状況を避けながらご相談ください。
咬んでしまいました。何をすればよいですか。
まず、咬まれた方の手当てを最優先にしてください。傷が深い場合や出血が続く場合は、医療機関を受診していただいてください。そのうえで、飼い犬が人を咬んだ場合、東京都動物の愛護及び管理に関する条例により、飼い主には義務が生じます。事故発生から24時間以内に保健所へ届け出ること(品川区の場合は品川区保健所)、そして48時間以内に、その犬に狂犬病の疑いがないかについて獣医師の検診を受けさせることです。あわせて、応急処置と再発防止の措置をとることも定められています。当院はこの検診に対応していますので、まずはお電話ください。
咬む子は、治らないのでしょうか。手放すしかないのですか。
そう決めつける必要はありません。攻撃行動は「完全になくなる」ことを保証できる性質のものではありませんが、多くの場合、引き金を減らし、環境を整え、ご家族が対応を知ることで、安全に一緒に暮らせる状態を目指せます。とくに、背景に痛みがあった場合は、その痛みを管理することで大きく改善することがあります。大切なのは、早い段階でご相談いただくことです。事故を繰り返すほど対応は難しくなります。当院はまず体の原因を確かめ、必要に応じて行動学に精通した獣医師のオンライン診療と連携しながら、その子とご家族が安心して過ごせる方法を一緒に探します。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。