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古谷動物病院古谷動物病院FURUYA ANIMAL CLINICご予約

PULMONARY EDEMA & PNEUMONIA

肺水腫・肺炎

「呼吸が速い・苦しそう」は、一刻を争うサインのことがあります。

肺は、酸素を取り込み全身へ届ける大切な臓器です。その肺に水がたまる「肺水腫」や、炎症が起きる「肺炎」は、いずれも呼吸を妨げ、ときに命にかかわる緊急の病気です。原因によって対応がまったく変わるため、当院はまず「何が起きているのか」を見極め、酸素・お薬・吸入治療を組み合わせて、その子が一日でも早く楽に呼吸できることを目指します。

  • 呼吸器科
  • 緊急

この記事は 院長/獣医師 大塚 元貴 が監修しています(最終監修日:)。

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病気の概要

肺は、吸い込んだ空気から酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出す「ガス交換」の場です。この働きを担うのが、肺の奥にある無数の小さな袋(肺胞、はいほう)です。肺水腫(はいすいしゅ、Pulmonary Edema)は、この肺胞やそのまわりに液体がしみ出してたまり、酸素の取り込みが妨げられる状態をいいます。

一方、肺炎(はいえん、Pneumonia)は、細菌などの感染や誤嚥(ごえん)によって肺に炎症が起きる病気です。どちらも呼吸を妨げ、進行すると呼吸困難におちいる、緊急性の高い病気という点で共通しています。

肺水腫と肺炎は原因も治療もまったく異なりますが、「呼吸が速い・苦しそう」という同じサインで気づかれることがよくあります。だからこそ、まず「何が起きているのか」を正しく見極めることが、適切な治療への第一歩になります。当院は、その見極めと初期対応を大切にしています。

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肺水腫と肺炎の違い

同じ「呼吸が苦しい」でも、肺の中で起きていることは異なります。おおまかな違いを整理すると、次のようになります。

肺水腫肺炎
中身肺胞にしみ出した「水(血液の液体成分)」感染や誤嚥による「炎症」と分泌物
主な原因心臓病の進行(心原性)/誤嚥・気道閉塞・敗血症など(非心原性)細菌・誤嚥・ウイルス・真菌・寄生虫など
発熱通常はない細菌性ではみられることが多い
咳の性質泡沫状(ピンク色のことも)の分泌をともなうことがある湿った咳・痰がらみのことが多い
治療の柱原因の治療+(心原性は)利尿薬・酸素抗菌薬+吸入(ネブライザー)・支持療法

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何が起きているのか(肺水腫の場合)

肺胞は、ごく薄い膜をはさんで毛細血管と接しています。ここで酸素と二酸化炭素がやりとりされます。この繊細なしくみのどこかが破綻すると、血管から液体がしみ出して肺胞にたまり、酸素が取り込めなくなります。

STEP 1

肺の血管に負荷がかかる

心臓病で左心房の圧が高まる(心原性)、あるいは気道閉塞・誤嚥・感電・敗血症などで肺の血管の壁が傷む(非心原性)。

STEP 2

血管から液体がしみ出す

血管内の圧の上昇や壁の透過性の亢進によって、血液の液体成分が肺胞のまわり(間質)へ、さらに肺胞の中へと漏れ出す。

STEP 3

ガス交換が妨げられる

液体で満たされた肺胞では酸素を取り込めず、血液中の酸素が不足する。呼吸が速く・浅くなり、努力性の呼吸が始まる。

STEP 4

呼吸困難・低酸素

進行すると口を開けた呼吸やチアノーゼ(舌・歯ぐきが紫色)が現れ、一刻を争う状態になる。

04

原因 ― 心原性か、非心原性か

肺水腫は、心臓が原因の「心原性」か、それ以外の「非心原性」かで、治療方針が大きく変わります。この区別が、初期対応でもっとも大切なポイントです。

心原性肺水腫(心臓病による)

左心系の心臓病が進行し、左心房の圧が高まって肺の血管から水がしみ出すタイプです。犬では僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)の進行が代表的で、心不全(ACVIMステージC)に至った段階で肺水腫として現れます。猫では肥大型心筋症(HCM)などが背景になります。利尿薬と心臓の治療が対応の中心です。

非心原性肺水腫(心臓以外による)

心臓は正常なのに、肺の血管の壁が傷んで水がしみ出すタイプです。原因はさまざまで、次のようなものがあります。

  • 上気道の閉塞:窒息・喉頭の異常・気道閉塞のあと(閉塞が解除された直後に生じることがある)
  • 感電:電気コードをかじった事故など
  • 神経原性:頭部外傷・てんかん発作のあと
  • 敗血症・ARDS(急性呼吸窮迫症候群):全身の重い炎症にともなうもの
  • 溺水低アルブミン血症(血液の水分を保つ力の低下)など

原因そのものを取り除くことが治療の中心で、心原性のように利尿薬が主役になるとは限りません。同じ「肺水腫」でも対応が異なるため、区別が重要です。

肺炎の分類

肺炎は、原因によって次のように分けられます。

  • 細菌性肺炎:細菌感染による。単独のことも、ウイルス感染などに続いて起こることもある
  • 誤嚥性肺炎:胃の内容物・食べ物・薬などが気道に入って起こる。巨大食道症(きょだいしょくどうしょう)・麻酔からの回復時・くり返す嘔吐などが誘因
  • ウイルス性・真菌性:ジステンパーなどのウイルスや、真菌による
  • 寄生虫性:肺虫などの寄生虫による

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症状・サイン

肺水腫・肺炎に共通するのは、呼吸に関するサインです。とくに安静時・睡眠時の呼吸数の増加は、目に見える症状より早く現れる大切な手がかりです。

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診断・検査

「呼吸が苦しい原因が、肺水腫なのか肺炎なのか」「肺水腫なら心原性か非心原性か」を見極めることが診断の目的です。ただし、呼吸状態が非常に悪い子では、まず酸素を投与して落ち着かせてから、負担の少ない順に検査を進めます。

胸部レントゲン検査

診断の中心です。肺にたまった水や炎症の広がり方(分布パターン)から、心原性の肺水腫・非心原性の肺水腫・肺炎を推定します。心臓の大きさの評価もできます。

心臓超音波検査(心エコー)

心原性かどうかの「裏取り」に用います。心臓の拡大や弁・心筋の状態を確認し、肺水腫の原因が心臓にあるかを判断します。

酸素化・全身状態の評価

血中の酸素の状態(パルスオキシメーターなど)や体温、全身のようすを評価します。重症度と、酸素投与の必要性を判断します。

血液検査・培養検査

炎症や感染の程度、全身への影響を調べます。細菌性肺炎では、可能であれば気道からの検体で培養検査を行い、原因菌に合った抗菌薬を選びます。

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治療

治療は、原因に応じて組み立てます。共通するのは、まず酸素で呼吸を助けながら、原因に応じた治療を並行して進めることです。

酸素の投与

酸素室(ケージ)やマスクなどで、不足した酸素を補います。呼吸が苦しい子を落ち着かせ、他の治療の効果が出るまでの時間を稼ぐ、いちばん基本の対応です。

利尿薬(心原性の肺水腫)

心臓病による肺水腫では、肺にたまった水を体の外へ出す利尿薬(フロセミドなど)が治療の柱になります。あわせて心臓そのものの治療を行います。

抗菌薬(細菌性・誤嚥性肺炎)

細菌性の肺炎では抗菌薬が中心です。できれば培養検査の結果にもとづいて選び、必要な期間しっかり続けます。自己判断での中止は再発のもとになります。

ネブライザー(吸入)+クパージュ

生理食塩水などを霧状にして気道に届け、粘った分泌物を出しやすくするネブライザーと、胸を優しくたたいて排出を促すクパージュを組み合わせます。肺炎の管理にとても有効です。

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ご家庭での注意・予防

肺水腫・肺炎は、ご家庭での気づきと予防が、発症や重症化を防ぐ大きな力になります。

安静時呼吸数を記録する

心臓病をお持ちの子はもちろん、健康な子でも、安静時(睡眠時)の呼吸数を知っておくと、肺水腫や肺炎の悪化を早く捉えられます。眠っているときに、胸やお腹が「上がって下がる」動きを1回と数え、30秒間の回数を2倍にします(または1分間数えます)。

動物正常値(安静・睡眠時)受診の目安
30回/分 以下40回/分 以上が続く・急に増えた
40回/分 以下50回/分 以上が続く・急に増えた

誤嚥(ごえん)を防ぐ

誤嚥性肺炎は、予防が可能な肺炎です。次のような点に気をつけてください。

  • くり返す嘔吐がある子は、放置せず原因を調べる(背景に食道や消化器の病気が隠れていることがあります)
  • 巨大食道症など飲み込みに問題がある子は、食事の姿勢や与え方について担当獣医師にご相談ください
  • 薬や食べ物を無理に流し込まない
  • 麻酔からの回復時は、獣医師の管理のもとで慎重に見守ります

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予後

予後は、原因・重症度・治療を始めるまでの早さによって大きく変わります。早く気づいて、早く対応できるほど、良い経過が期待できます。

  • 心原性の肺水腫は、背景にある心臓病を管理しながら、お薬でコントロールできることが多くあります。ただし進行に応じた調整が欠かせません。
  • 誤嚥性・細菌性の肺炎は、適切な治療を行えば回復が見込めるものが多い一方、重症例では入院・集中的な管理が必要になることもあります。
  • 非心原性の肺水腫は、原因を取り除ければ回復に向かうことが多いですが、原因そのものの重さに左右されます。

いずれの場合も、「呼吸がいつもと違う」と感じたら、様子を見すぎずに早めにご相談いただくことが、その子を守る何よりの近道です。その子とご家族が安心して過ごせることを目標に、私たちも一緒に向き合います。

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さらに詳しく知りたい方へ(参考リンク)

より深く知りたい方のために、当院が診療の拠りどころとしている信頼できる情報源をご紹介します。外部サイトへ移動し、専門的な内容や英語のページを含みます。気になる点は、遠慮なく担当獣医師におたずねください。

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Q&A

よくあるご質問

呼吸が速いだけで、すぐに受診したほうがいいですか?
はい、安静時・睡眠時の呼吸が速い、または苦しそうなときは、できるだけ早く受診してください。肺水腫や肺炎では、目に見える症状が出る前に呼吸数の増加が最初のサインとして現れます。とくに「口を開けて呼吸している」「舌や歯ぐきが紫色」「横になれずうずくまる」「ぐったりしている」といったときは一刻を争う状態です。夜間でもためらわずにご連絡ください。呼吸の様子はスマホの動画に撮っておいていただくと、診断の大きな助けになります。
肺炎は、自宅でのケアだけで治せますか?
肺炎は自己判断でのケアだけで治すことは難しく、原因に合った治療が必要です。細菌性の肺炎では適切な抗菌薬が治療の柱になり、できれば培養検査で原因菌を確かめて選びます。あわせて、霧状のお薬を吸い込むネブライザー(吸入)や、胸を優しくたたいて分泌物の排出を促すクパージュが有効で、これらはご家庭でも続けていただけます。ただし始めるかどうか・やり方は必ず担当獣医師にご相談ください。悪化すると入院や酸素管理が必要になることもあります。
一度肺水腫になったら、また繰り返しますか?
原因によります。心臓病(心原性)による肺水腫は、背景にある心臓の状態を管理し続けることで再発のリスクを下げられますが、進行に応じてお薬の調整が必要になります。一方、誤嚥や気道の閉塞などによる非心原性の肺水腫は、原因を取り除ければ一度きりで済むことも少なくありません。いずれの場合も、ご家庭での安静時呼吸数の記録が、再発の早期発見にとても役立ちます。

このページは一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療方針は その子の状態によって異なります。個別の症状や薬の使い方については、 自己判断せず担当獣医師にご相談ください。